花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女主役の物語」&「その仲間たちの雑談話」など。TRPG話や特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。

ゴブリンスレイヤー13巻の話・完結編

日常に還りて

 

ヒノキ「さて、20周年イベントを終えたが、コンパーニュ自体は特に変わり映えはしないのじゃ」

ゲンブ「新星どののクリスタルタワーや、屋久島、アステロイド観測所などは一部メンバーが異動して、フレッシュな人間関係が見られたりするようでござるな」

ヒノキ「自営業や引きこもりニートには分かりにくいことじゃが、人の社会の役所や企業などだと春先に人事異動などで肩書きが付いたり、転属になったり、新人が入って来たり、いろいろと人間関係に変化が生じたりするものじゃのう」

シロ「うちでは、リトルが新人だったわけですが」

リトル「1年間、みっちり鍛えられたですぅ」

ヒノキ「うむ、これからもリブット君みたいに鍛えてやるから、しっかり強くなるのじゃぞ」

シロ「リブットは東南アジア出身だから、小乗仏教の感覚で新鮮な覚醒描写をしたようでした」

ヒノキ「確かにの。ウルトラ族は、どちらかと言うと外にある光を与えられたり、自らつかみ取る形の覚醒成長が多いようじゃが、リブットの場合は東洋的というか、自己の中にある力に目覚めたような描写じゃったのう。どこかカンフー的というか」

ゲンブ「グレートの声の人が、流派・東方不敗で修行した明鏡止水の御仁でござるからな。魔王になったり、宇宙海賊になったり、メギドになったり、坂本監督に負けず劣らず動き回っているでござる」

ヒノキ「かつては弟子だった者が師匠として、新たな後進を育てる姿に、いろいろと感じ入る想いがあるのう」

シロ「一応、今のギャラクシーファイト1部は、リブットがまだ若い時代の過去話なんですよね。去年に登場したときは、ルーブの兄弟を助けるベテランのレスキュー隊員みたいな風格でしたが」

ヒノキ「去年は顔見せ助っ人みたいな感じだったのが、今年はまず彼を成長する主人公格において、その魅力を掘り下げる趣向のようじゃのう。第1部で新人として成長した彼が、第3部でゼロさんと肩を並べて戦うようになると、盛り上がるのではなかろうか」

ゲンブ「いつの世も、真っ当な大人は成長する若者に未来を感じ、応援したくなるものでござるからな」

ヒノキ「じゃがしかし、若者を育成する立場の大人が、熱さを持たずして鉄を鍛えることはできんからのう。老いてもなお輝きを保つことこそ、我らの生きる道よ」

ゲンブ「もちろんでござる。ガメラも55周年を経たばかりで、これからますます熱気を高める所存」


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ゴブリンスレイヤーな話

 

ヒノキ「それでは、前置き特撮話を終えて、ゴブリンスレイヤーの話に移るのじゃ」

ゴブリンスレイヤー13 (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー13 (GA文庫)

 

ゲンブ「確か、先月に話したはずでは?」

ヒノキ「よく見ろ。先月は、新兄さんが新刊を紹介しただけで、わらわが未読じゃったので、踏み込んだところまでは話せなんだ。しっかり読み込んだ今だからこそ、語れる話もあるというものじゃよ」

シロ「でも、結局、ゴブリンスレイヤーさんがゴブリンを退治する話なんですよね」

ヒノキ「何か問題でも? 仮面ライダーセイバーにもゴブリンメギドが登場して、ゴブリンどもを皆殺しにして、二つの世界をつなげるワクワク展開になり掛けたのを、カリバーが邪魔をして、事もあろうに雷の剣士を殺害? 瀕死の重傷? とにかくゴブリンが一体、生き残っているために儀式が不成立のまま、次週に持ち越しじゃ。ゴブリンどもは皆殺しにしないといけないのに、それを邪魔するカリバー許すまじ。あの乱暴者のズオスでさえ、きちんと空気を読んで、水の剣士の邪魔はしなかったと言うのに」

リトル「アリナ様、だけど、敵側の儀式は成立しない方がいいのではぁ?」

ヒノキ「そんなことは分かっておる。しかし、物語を楽しむには、主人公側に感情移入するとともに、敵側の作戦成功によって、どんなスペクタクルな展開になるだろうか、とワクワクする心も大切なのじゃよ。基本的にヒーロー物は、アクティブな敵の作戦によって崩れた日常を取り戻すために、主人公陣営が受け身となって対処する守り手の物語が多い。しかし、守り手ばかりでは刺激的で面白い物語にはならん。日常雑談を楽しむ作風ならともかく、戦いをテーマに描く場合は、攻め手がいかに野心を示すか、その野心にいかに対処するかの攻防のせめぎ合いが楽しい」

シロ「つまり、アリナ様は敵の作戦によって、まずは日常が崩れて話が進行することをワクワクしているのですね」

ヒノキ「GM視点とは、そういうものじゃろう? まずはプレイヤーキャラが解決する問題ありき。その上で、どのようにすれば解決できるか、という解法パターンをいくつか想定してから、プレイヤーがそこに到達するための道筋やモチベーションをシナリオに仕込む。後はプレイヤーに任せながら、必要に応じてゲームがうまく進行するよう、アドリブでバランス調整したり、物語を誘導したりする。

「セイバーでは、飛羽真が小説家としてGM視点に立つかと思いきや、記憶喪失という縛りをかけて、いまいち自分の物語を見失ったキャラになっておった。そして、現在のGM役はレジエル(正しくはストリウス)に該当するが、カリバーがGMと連携しない独自行動のサブマスターとなって、何だかGMのシナリオ進行を邪魔するような動きをしておるようじゃ」

シロ「どうやら、最後のゴブリンは、カリバーが自分の闇の剣で倒すことで、封印を解くみたいですね」

ヒノキ「おお、そういうことか。だったら、ライダーが一人消えても、儀式は敢行できる、と。ならば、二つの世界がつながる=もう一つの世界に飛ばされたっぽい少女ルナとの再会が期待できそうじゃ」

リトル「賢人さんはどうなるのでしょうかぁ?」

ヒノキ「役者のクランクアップ情報は聞いておらんから、死んでいなかったか、死んでも何らかの手段で復活して、劇場映画には無事に出演を果たすのじゃろう」

ゲンブ「あるいは、人としては死んだけど、ランプの精として魔神復活する可能性もあるのでは?」

ヒノキ「まあ、平成以降のライダー世界の死は、さらなる力を得るためのフラグという見方もあろうし、死んで幽霊になったり神さまになったりしたケースもあるからのう。それより気になるのは、不死鳥の剣士じゃ」

 

シロ「いや、アリナ様、今はゴブリンスレイヤーの話では? それ以上の寄り道をすると、新星さまの脱線癖を笑えないと思いますが?」

ヒノキ「ムッ、確かに。持つべきものは、脱線しかけた時に軌道修正をしてくれるアシスタントの存在じゃな。では、話を戻して、ゴブリンスレイヤー13巻のテーマは『迷宮探検競技を題材に、後進や新人を育成するための苦労話と、イベント運営のための主催者側の陰の努力』といった感じじゃのう」

リトル「つまり、アリナ様や時空魔術師さまの立ち位置を主体にした裏方話で、冒険話じゃなかったわけですねぇ」

ヒノキ「そうなるか。そもそもゴブリンスレイヤーの物語は、新人冒険者の女神官視点を中心に、ゴブスレという変わり者のベテラン冒険者の姿を描いた物語として始まったからのう。ゴブスレ自身は、自分はゴブリン退治の専門家であって、冒険者であるという自覚は持っていなかったのじゃが、仲間との交流を経て、真っ当な冒険者らしく矯正されていく面もあったり、仲間をゴブリン退治志向に染めていく面もあったり、とにかく孤独な男と純粋な女の子を中心とした冒険活劇交流譚という位置づけじゃ」

シロ「普通の冒険者の話ではないんですね」

ヒノキ「ゴブスレは、ソロでゴブリン退治の仕事ばかりしていたから、基本的にコミュ障じゃ。兜で顔を隠し、薄汚れた革鎧でキャリアの割に見すぼらしい出立ち。小説ではそこまで描写されていないが、ゴブリンの血に塗れて臭いも漂わせていると思われる。要は、女の子にモテるタイプではないのじゃが、寡黙で真面目で一途の陰キャラで、本人は自覚していないが相当の知恵者。剣術は中の上ぐらいの腕前だが、対ゴブリン特化戦術と、道具やマジックアイテムの活用法、トラップの仕掛け方に関しては群を抜いている。正面から対決するのは不得手でも、まともには勝てない相手に対する奇策で、劇的な逆転劇を見せるキャラと言えよう」

ゲンブ「確かに、戦士であるとともに斥候あるいは野伏の訓練を積んでおるな。最近は、師匠(圃人の老爺。モデルはホビットのビルボを悪徳爺いにしたイメージ)の裏の稼業つながりで、仕掛人のギルドにも伝手ができて、市中の情報収集能力も示してみせた」

ヒノキ「姉や故郷の村人をゴブリンに殺され、トラウマを負った少年が過酷な運命の中で、自分を慕う少女に会ったり、幼馴染みの牧場娘や冒険者ギルドの受付嬢に弟分のように心配されて世話をされたり、同じゴブリンへのトラウマを持つ女大司教や令嬢剣士(冒険者を辞めてからは女商人)に救世主のように尊敬されたり、本人は素朴な朴念仁でゴブリン退治に専念しているだけなのに、何故かハーレムにも似た状況になっている。読者の立場から見れば、ひたすらゲームをしていれば、女の子にモテるようになっているようで、羨ましいとも取れよう」

シロ「その辺は、ラノベというジャンルの基本構造ですね。何故かモテる主人公。あとは主人公がその状況に気付いていないか、気付いていても迷惑がるか、悪徳主人公だと自分に好意を持ってくれる女の子を利用して成り上がるか、などなどのパターンが多いでしょうか」

ヒノキ「昨今の多くのラノベでは、男よりも女の方がアクティブで、シャイな男をめぐって恋の鞘当てを行う陰キャ男の理想郷と思しき様子が描かれていることが多い。さもなくば、男の方が策士で、他人の心理を利用して自己の目的を達する魔王系、あるいは軍師系ポジションである作品が多いであろうか。これとは別に女魔王や悪役令嬢のような、この10年ほどで男女の立場、キャラ性を逆転させた新ジャンルもあるが、ゴブスレはそれらの流行ジャンルとは一線を画しているようにも思える」

シロ「どういうことですか?」

ヒノキ「ゴブスレ自身は、古き良きハードボイルドなキャラなのじゃよ。黙々と自分の使命に邁進する70年代の大人キャラで、80年代のラブコメブームの洗礼を受けておらん。時代錯誤と見なす向きもあるが、おしゃれとかファッションとかモテたいとか軟派路線とは異なる、真面目少年がそのまま大人になったキャラ。ルパン3世における銭形刑事がひたすらルパンを追うように、あるいはストイックな五右衛門のように、職務に忠実な、不器用にも見えるキャラなのじゃ。少なくとも、女性相手に欲望や打算を考えるようなことは一切ない。朴念仁の鑑とも言えよう」

リトル「そんなキャラがどうしてウケるのですかぁ?」

ヒノキ「ゴブスレという男の魅力は、ゴブリン退治という宿命かつ使命に関しては、徹底して一途に研究し、非常に博識かつ実践的、敵がゴブリンである限り、これ以上に頼り甲斐のある男はいないという首尾一貫の貫徹ぶりが第一に挙げられよう。

「ゴブリンは確かに一体一体は弱小だが、群れを作ると悪辣で狡猾、そして王に率いられた軍勢ともなると決して侮れず、魔王軍の尖兵として悪虐の限りを尽くす。しかしゴブリンの巣窟は狭く、汚く、冒険者として華がなく実入りが少ないので初心者しか相手にしない。中級以上の冒険者はゴブリン以外の敵を求めるので、ゴブリン退治の専門家を目指す者などまずいない。そんなメジャーな割に熟練者にはニッチなジャンルが、ゴブリン退治の仕事。金のためではない汚れ仕事に、ひたすら地道に寡黙に使命をかける。これを格好いいと思う者もいるのじゃよ」

シロ「他にいないオリジナリティーってことですか?」

ヒノキ「華やかな特殊能力ではない、ひたすらゴブリン退治に邁進する寡黙な職人魂。そこに徹する姿を真摯に描き、その鬼気迫る生き様こそハードボイルドと言えようか。そして、そんな彼に命を救われ、自らも地母神の巫女として人助けの想いでゴブスレさんに随行することを決めた少女、女神官が、これまた健気というか、最初の冒険でゴブリンに仲間を虐殺されて自身もトラウマ持ちになったが故に、ゴブスレの理解者として共に冒険しながら成長する話じゃな。ゴブスレ原作小説は、彼の周りの女の子たちの悩みごとやら心理が丁寧に描かれ、可愛い女の子目当てに読む読者も満足する構成となっている。そう、主人公はゴブスレじゃが、視点キャラは女の子キャラであることが多く、逆にゴブスレから彼女たちに寄せる想いというのは、これでもかというぐらいに描かれていない」

リトル「描かれていないのですかぁ?」

ヒノキ「そう。普通のハーレムラノベじゃと、男視点で女の子キャラの魅力を外見とか、性格とか、妄想とか、いろいろ書きつらねがちなのじゃが、ゴブスレは周囲の女性を一切そういう目で見ないのじゃ」

シロ「どういう目で見ているのですか?」

ヒノキ「どんな能力を持っているかとか、仲間とどういうコミュニケーションをとっているかとか、自分にできないどんな気遣いをしてくれているかとか、疲れていないかとか、そういう面での観察力は非常に高くて、仕事チームのリーダーとしては卓越して有能に描かれているのじゃ。女性キャラに対しても、男女の区別はせずに、その能力できちんと把握する。そして、女性のファッションに対しても、『ゴブリン退治に有効かどうか』という一点のみで評価し、ゴブスレ視点では女性キャラの可愛さやエロスを感じさせる描写は一切ない。その手の描写は全て、女性キャラが他の女性キャラを見る視点、あるいは受付嬢に惹かれている軟派風味の槍使いなど一部の男性キャラが見る視点で描かれるのみ」

ゲンブ「なるほど。それが小説の書き方の技法なのでござるな。視点キャラの性格によって、見えているもの、描写できるものが変わってくる。女性キャラの可愛さ、可憐さを描くには、朴念仁キャラの視点では不可能で、それが徹底できていないと、作者の考える設定と、読者の受け止め方まで大きく変わってくる、と」

ヒノキ「うむ、作者がそのキャラをクールでストイックだと言い張っていても、そのキャラ視点のシーン文章が隣の女性キャラの胸を覗き見ていたり、太腿に目線が行っていたりする描写じゃと、ただのムッツリスケベでしかない。純粋な熱血漢の視点だと、仲間の少女の表情や大きなアクションには目が行っても、恥ずかしそうに赤面しているとか、もじもじしていることには気付かなかったりする。それを相棒のスケベ少年のセリフなんかで『何を赤くなってるんだ?』とか茶化したりすることで描写を補う必要があるのじゃ」

シロ「つまり、こういう描写を見せるには、視点キャラは誰であるのがベストとか、考えないといけないわけですね」

ヒノキ「まあ、わらわたちは会話しているだけじゃから、そういう細やかな描写とは無縁じゃがの。ここでは喋っているセリフが全てじゃよ」

 

シロ「それで、『ここまで原作小説におけるゴブスレの描写スタイル』を講義してましたが、13巻の内容感想じゃありませんよね」

ヒノキ「シロの鋭い指摘を受けた日野木アリナは困惑した。いつの間にか話が脱線していたことを今、初めて気付かされたのだ。冷静さを保ちながらも、内心狼狽し、もしかしたら赤面しているのではないか、と鏡を見て確認したい気になった。しかし、それも一瞬。老獪なアリナは表情を努めて変えることなく、ただ一言、こう言った。『ここまでは前置きじゃ。全ては計算どおり』」

シロ「何ですか、今のは?」

ヒノキ「わらわの内心を地の文で丁寧に描写すると、以上のようになる。しかし、普段の会話スタイルだと、こんな感じじゃ」

 

ヒノキ「……ここまでは前置きじゃ。全ては計算どおり」

リトル「すごいですぅ。あれだけ長い地の文をわずか2文字の『……』で縮めてみせたぁ」

ヒノキ「まあ、当ブログにおいて、わらわの内面の心理描写なぞ、どうでもいい話じゃからな。それよりも大事なのは語っている内容じゃよ。ここまでは、わらわがいかにゴブリンスレイヤーという小説を読み込んでいるかを示したもの。そして、視点キャラによって、既存の物語もいかに新鮮に描写されるか、という前置きじゃ。

「今回の13巻では、冒険者ギルドの受付嬢の視点にスポットが当たる。すなわち、冒険の裏方キャラがゴブスレ氏を始めとする知り合い冒険者をどのように見ているかが濃密に描かれる話じゃ。もちろん、短編集や一部シーンで彼女視点が描かれたことはある。しかし、今回はとにかく、受付嬢祭りと言っていい」

シロ「ここまでの冒険で、ゴブスレさんは砂漠の国でドラゴンと遭遇して生還したり、女神官さんも冒険者として中級ぐらいに成長しています」

ヒノキ「そして、新たに初心者の新キャラ登場なんじゃが、冒険者未満なので単に『少女』としか表記されておらん。大筋としては、受付嬢がゴブスレ氏をアドバイザーに、初心者冒険者チュートリアル的な冒険を経験してもらうための迷宮探検イベントを立案、開催する話。アドバイザーを依頼されたゴブスレ氏は、ゴブリンの仕掛けそうなトラップをいろいろと提示しつつ、致命的な罠が多くて、いろいろとボツになるのがコミカルと言えよう。あくまで遊びに近いイベントなのに、遊び感覚に疎くて真剣勝負なネタを披露してばかりのゴブスレ氏と、それをなだめながら程々の内容に調整し直す受付嬢のやりとりは、『まるで過激なネタ続出の作家と、アクの強さを和らげようと必死の編集さんの打ち合わせ』に見えて、笑えたとは新兄さんの感想」

ゲンブ「まあ、ゴブリン退治の大義名分があれば、誰かがブレーキを掛けないとやり過ぎてしまうのがゴブスレ氏のキャラでござるからな」

ヒノキ「いつもは、冒険仲間の女神官や妖精弓手がブレーキ役なのじゃが、今回は日常イベントなので、受付嬢がその役を担っているのが新鮮じゃな。苦笑を浮かべながら宥める女神官や、ヒステリックにツッコミを入れる妖精弓手に比べて、大人の女性っぽい振る舞いが特徴の受付嬢は、事務的に問題点を指摘しつつ、ゴブスレ案の初心者殺しトラップに内心頭痛を覚えながら、的確に代替案にアレンジしたり、ボツを言い渡したり、他のアイデアを宿題に出したり、正に名編集みたいな采配。一方で、ゴブスレ氏提案のトラップの元ネタが、いろいろなゲームブックにあった懐かしいものを想起したり、マニア受けもOKな代物」

ゲンブ「作者の豊富な古典ファンタジーネタ、ゲームブックネタ、TRPGネタが本作の魅力でもござるからなあ」

ヒノキ「第2章のサブタイトルが『迷宮支配者の手引き』と書いて、『ダンジョンマスターズガイド』とルビを打っているだけで、D&Dファンはニヤリとできるものじゃからな。内容も、いかにも初心者DMが、ベテランだけどPCキラーの異名の高いゴブスレGMの指南を受けながら、迷宮探検シナリオ作りしているような話じゃし、これを読んでいる冒険シナリオ作成経験者は、あるあるネタに苦笑すること受け合い。自分でも久々にダンジョンマップを描きたくなるほどじゃ」

ゲンブ「まさに冒険の裏方作業でござるな。GMの事前準備を模した物語とは」

ヒノキ「そういう話の一方で、冒険者志願の『少女』が新人として冒険の装備を購入したり、熟練冒険者に激励されてドキマギしたりする様子が描かれ、要するにDMも、プレイヤーももう一度、初心者として描写されるのが今回の話じゃ。熟練冒険者にとっては日常の骨休み祭りな回である一方、初心者DMやプレイヤーキャラの姿が新鮮に描かれる巻。

「そして中盤に入って、イベント用の遺跡迷宮の周りに縁日のような屋台が設けられたり、女神官を慕う『以前の冒険で助けた王妹』との再会&交流劇が描かれたり、レギュラーキャラやら懐かしキャラの顔見せ、交歓シーンが描かれ、コロナ禍で多くのイベントが取りやめになったのとは別の異世界で、擬似的に人々が集まる楽しいお祭りがお膳立てしていくのが読みどころじゃと言えるのう」

シロ「最初は机上でダンジョンの設計をどうこうする話で、そこから広がってコンベンション(ゲーム大会)みたいな規模に膨れ上がるんですね」

ヒノキ「まあ、規模は違えど、参加メンバーに楽しんでもらえるために、裏方がワクワクしながら事前準備に情熱を燃やす雰囲気はどちらも同じじゃからな。小説を書くのも、ゲームのシナリオを考えるのも、自己満足のためもあるかもしれんが、受け手の楽しさを念頭に置くことを忘れてしまえば、そのための手法をあれこれ考えねば、物にならんじゃろう。その雰囲気に、いつもはストイックなゴブスレ氏も和やかな気分になって、これがみんなの言う冒険の楽しさなのか、と考えたりするほどじゃ」

リトル「ゴブスレさんは、楽しさという感情を知らないのですかぁ?」

ゲンブ「知らないというか、幼少期の思い出としては記憶しているようでござるな。ゴブリンに姉たちを殺されてからは、楽しいという感情が欠落したように淡々と復讐だけに囚われるようになっている。ゴブリンを殺すためだけに生きている、人間性の欠落した、育てる機会を持たずに来た男となったのが、仲間との交流で少しずつ、それ以外の人生の目的を考えるようになっていると言ったところか」

ヒノキ「言わば、ゴブリン退治に特化したターミネーターみたいなものじゃからな。『特技:ゴブリン退治』『趣味:ゴブリン退治の工夫をあれこれ思案して準備すること』『将来の夢:ゴブリンを皆殺しにすること』といった風に徹底しておる」

リトル「それはぁ……凄まじい設定ですねぇ」

ヒノキ「もちろん、その後、話が進んで『趣味:仲間を喜ばせるために冒険に付き合うこと』『趣味:仲間を喜ばせるためにあれこれ創意工夫をすること』『将来の夢:仲間と助け合って普通の冒険者になること』などが加わった感じじゃが」

シロ「とにかく、中盤までは、楽しいお祭りムードで話が展開する、と」

ヒノキ「しかし、最後までそれだとゴブリンスレイヤーの話にならん。そう、イベント中にトラブルが発生するのは、世の物語の多くのパターン。イベントの舞台の迷宮の奥には、隠し扉があって、その奥にはゴブリンの巣食う未探索な危険エリアがあったのじゃ。そして、イベント参加者の初心者『少女』が奥に踏み込んで行方不明という状況が分かる」

リトル「イベント中に事故が起これば、大変ですぅ」

ヒノキ「イベントを中断して、『少女』の捜索に人員を割くべきか、と受付嬢が悩んでいると、我らのゴブスレ氏が『みんなが楽しんでいるイベントは中止するな。ゴブリン相手なら、この俺一人で十分だ。行方不明者を助けて戻って来るので、お前はイベントをこのまま続けろ』と言って、単身迷宮に乗り込もうとする。すると受付嬢は、『では、冒険の依頼とさせていただきます。前金はすぐに用意できませんが……』と言いつつ、自分の小物カバンを渡す。そこには香水とかリボンとか身の回り品がいろいろと入っていて、それが後の戦いに役立つアイテムとして活用されるんじゃな」

 

クライマックスはやはりゴブリン退治

 

ゲンブ「今巻のクライマックスは、ゴブスレ氏の単独ゴブリン退治の話でござるな」

ヒノキ「いや、それだけじゃない。間違ってダンジョンの未探索エリアに踏み込んでしまった『少女』の命がけの初冒険が同時並行で描かれることで、スリルを盛り上げる構成なのじゃ」

ゲンブ「確かに、ゴブスレ氏ならゴブリン相手に負ける理由がないでござろうからな」

ヒノキ「探索に出向く際の決め台詞が格好良いのじゃよ。『洞窟の中ならば、たとえ百匹が相手でも、俺が勝つ。ゴブリンどもは、皆殺しだ』」

 

 彼は甲冑の隙間から一本の組紐を抜き取った。そして小鬼の首を背後から一息に締め上げた。首に絡めた組紐をぐいと捻じり、小鬼の体を肩に担ぐようにして絞りにかかる。(215ページより一部抜粋)

 

ヒノキ「新兄さんがいかにも喜びそうな必殺シーンじゃのう」

ゲンブ「確か、京本政樹氏でござったか。組紐を殺し技に使うのは?」

ヒノキ「新兄さんなら、ここから仕事人談義に寄り道脱線するじゃろうが割愛して、この後、受付嬢の渡したポーチの中の目薬が『暗視効果』を持つマジックアイテムであることを知っていたゴブスレ氏がそれを使って、暗闇の中を暗躍するシーンとか、女物の香水を使ってゴブリンを撹乱するシーンとか、普段とは違う装備を工夫する場面が楽しい」

ゲンブ「自前の装備はどうしたでござるか?」

ヒノキ「一応、武器はいつものように使い捨てながら、ゴブリンの所持していた小剣や棍棒を使い回したりするわけじゃ。そして、わずかながら持っていた腰回りの雑嚢は、ゴブリンの撃ってきた矢がかすめて崖下に落下してしまった」

シロ「敵が飛び道具を使って来たのですか?」

ヒノキ「ここが小説としての見事なアイデアじゃな。さすがにゴブスレ氏も飛び道具は持って来ていない。頼みの綱のマジックアイテムも崖下に落下した。さあ、どうする?」

シロ「自分も崖下に飛び込みます。忍者なら上手く着地できるはず」

ヒノキ「ゴブスレ氏は忍者ではないのう」

シロ「どっちも似たようなものじゃないですか、ゴブリンスレイヤーも、ニンジャスレイヤーも」

ヒノキ「確かに、ニンジャスレイヤーはゴブスレの元ネタの一つとも言われ、一部似た要素もあるかもしれんが、さすがにゴブスレ氏は崖から身を投げるほど無謀ではなかった。ここで崖下に落ちたゴブスレ雑嚢は、その下で魔物に襲われてピンチの『少女』の元に届き、彼女はゴブスレ印のチートなマジックアイテムの数々を偶然使って、危急を脱出するのに活用したわけじゃ。そう、冒険素人の『少女』がただの競技イベントと勘違いして、本物の魔物相手に奮闘する中、天から降って来た道具の力で幸運にも救われるシーンが、ゴブスレ氏の戦闘と同時並行で描かれている。崖の上と下でそれぞれのバトルが展開される立体構造が、リンクしていて面白い展開だったわけで」

ゲンブ「映像化されると、カメラワークが楽しそうでござるな。崖の上から落下する雑嚢が、崖下の『少女』の元に到達する流れで、二つのバトルが間接的につながっていることを示唆する表現が」

ヒノキ「一方、ゴブスレ氏は崖の向こうからゴブリンどもに矢で撃たれてピンチ。試しに石を投げ返してみたが、射程距離が届かない。ここで受付嬢の飾り帯、いわゆるリボンが役に立つ。それを投石紐(スリング)の代わりにして、石の射程距離を延ばして、ゴブリンに反撃することができたのじゃ。ファンタジーTRPGをたしなむ者にとって、投石紐はお馴染みの武器。石で届かなければ、投石紐を使うというアイデア、しかも女の子のリボンをとっさに活用するという機転は、お見事と言わざるを得ない。なるほど、そう来たか、さすがはファンタジーTRPGのことをよく分かっている、と」

シロ「身の回りにある道具を活用するというのは、機転の利くキャラの描写として有効ですからね」

ヒノキ「そして、この投石紐のシーンで、新兄さんが喜んでいた『ダークタワー』のガンスリンガーのセリフが出るんじゃな。『射撃は手で撃つのではなく、心で撃つ。手で撃つ者は父祖の顔を忘れている』云々が、タイミングよく二つの小説をほぼ近い時期に読んでいて、上手くリンクしたわけで」

 

ヒノキ「……とまあ、このようなシーンを経て、ゴブスレ氏は無事に『少女』を救出することに成功し、受付嬢の迷宮探検競技イベントも大禍なく終了。割と人死にの多い苛酷な世界観のゴブスレ小説では珍しく、完全に犠牲者のいない陽性ハッピーな展開で終了したのは、コロナ禍ゆえの鬱展開を避けたためじゃろうか。ともあれ初心者冒険者の『少女』のその後の物語も気になるところじゃのう」

リトル「続きはいつ出るんですかぁ?」

 ヒノキ「来年3月予定で、後書きによれば『北海』が舞台だそうじゃ」

ゴブリンスレイヤー14 ドラマCD付き特装版 (GA文庫)

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  • 作者:蝸牛くも
  • 発売日: 2021/03/12
  • メディア: 文庫
 

 

そして、もう一つのゴブスレ話 

 

シロ「ところで、今月はゴブスレ外伝も発売されたそうですが」

ヒノキ「ちょうど20周年イベントの時期とかぶっていて、新兄さんもうっかり買うのを忘れておったらしい。まあ、今日この記事を書いている途中に思い出して、買ったらしいので、また読み終わり次第、感想記事を書くことになりそうじゃ」 

(当記事 完)