ザバーラの最後のクエスト
太郎(ゲンブ)「前回は、トロールのゾンネンフェレスを倒し、その廃屋で見つけた書物をサンドリーヌに解読してもらったら、とんでもない事実が分かったでござる」
ヒノキ「霧の街を統べる翠将ヤーハッカゼッシュの持つ魔剣クルルガランが、名誉蛮族の命を犠牲にして発動する代物だということじゃな」
太郎「荷物輸送ミッションのかたわら、その重要な情報を主人のザバーラのところに持ち帰るでござる」
ザバーラ『なるほど。翠将陛下は、この街の全ての名誉蛮族に対して背信行為を働いていたというわけだ』
太郎「幸い、腕輪を外していれば、問題ないわけでござるが」
ザバーラ『貴重な情報をありがとうね。少なくとも、これで翠将があたしたちをいつでも捨て駒にする気があると分かった。この落とし前をどう付けたらいいんだろうねえ』
太郎「名誉蛮族みんなにこれを知らせて、反乱を扇動するというのは?」
ザバーラ『本気で言っているのかい? そのために動こうとすれば、気配を察知した翠将が先に行動して、事情を知らない多くの名誉蛮族がたちどころに命を奪われ、決起する前に反乱の芽を摘まれてしまうのがオチさ。あたしたちにできるのは、せいぜい少人数の知り合いに腕輪の脅威を知らせて、警告するのが席の山だ。街の中だけの反乱が上手く行くはずがない』
太郎「では、街の外に脱出して、応援を募ると言うのは?」
ザバーラ『レジスタンスがそう考えているらしいね。しかし、街の外に逃げ延びたとしても、外の国を動かすだけの伝手はあるのかい? 連中の計画のネックはそこにある。外との連絡を上手く取らなければ、革命など実行できるものか』
太郎「ザバーラ様なら、そういう伝手の心当たりがあるのでは?」
ザバーラ『ないわけではないが、かなりの危険を伴う仕事だ。それでも、やる気はあるかい?』
太郎「話だけでも聞かせてもらいたい」
ザバーラ『やれやれ。そこまでして、街に破壊と混乱を招きたいのかい? だったら、教えてやろう。街の東にある牢獄に、エルラーン・ドゥルマイユ卿という人物が囚われている。ダーレスブルグ公国の貴族さまだ。もしも卿を牢獄から脱出させることに成功して、街の外まで逃げ出すことができたなら、有力な伝手となってくれることは間違いないだろう。だけど、仮に卿を助けたとしても、どこで匿えばいいか、事前に考えておかないといけないだろうね』
太郎「そういうことなら、サンドリーヌが協力してくれるかもしれないでござる。彼女は街から脱出したがっているし、その前に牧場から一人の少女の救出を依頼してきたからな」
ザバーラ『へえ。あの女がそこまで大それたことを考えるとはね。それが翠将に対する反逆行為だとは百も承知だろうに』
太郎「できれば、サンドリーヌを助けたいでござるが、ザバーラ様の許可を頂きたい」
ザバーラ『分かったよ。では、君とこういう契約を交わそう。君が助けたいと思う人物を助け、街の外に脱出しな。そして、外の世界を見聞した後で、もう一度、霧の街に戻っておいで。外の世界で魔神研究ができる拠点を見つけるか、君自身が構築できたなら、あたしも君に従い、霧の街の革命に協力してもいい。別に翠将に従う義理もないんだし、あたしはどこでも魔神の研究ができれば、それでいいんだから。君が外で、翠将を越える男に成長することを期待して、にこやかに送り出してやるよ。その時が来ればね』
太郎「では、街の脱出に全力を尽くすが、それまでは密やかに行動するでござる」
ザバーラ『ああ。先の展望も大切だけど、今できることを一手一手確実に成し遂げる。それが堅実な商売人の道さ。ドゥルマイユ卿の救出は、レベル7になってから行う推奨クエストだ、とも言っておく。ストーリーの都合で、少々前倒ししてしまったけどね』
太郎「思いきり、メタ発言でござるな」
鮮血城への潜入
太郎「GMの方からゴールへの布石を打ってきた形でござるが、牧場と牢獄のクエストは後に回すとして、先に鮮血城へ向かうでござるよ。まず、拠点から施療院に寄って、ウルスラに挨拶ついでにクエストを正式に受注しておいて、 それから昼に鮮血城の区画に入った」
ヒノキ「正面に両開きの扉がある。入り口は他になさそうじゃな」
太郎「ノックをしてみるでござる」
ヒノキ「いきなり落とし穴のトラップが発動した。罠感知の目標値は20じゃ」
太郎「何と。そんな高い数字が出るはずもない。15で失敗」
ヒノキ「マッスル太郎は10メートルの穴に落下した。落下ダメージは30点じゃが、受け身をとって減らすことができる」
太郎「当然、減らすでござる。受け身の達成値は19。それに防護点4点を加えて、23点減らした。結局、7点ダメージで抑えたが、いきなりトラップとは、何て殺意の高い城でござるか」
ヒノキ「実のところ、この城では、あらゆる扉に罠が仕掛けられておる。そのような殺意がゴゴゴゴゴと押し寄せる空気を、マッスル太郎は感じた」
太郎「本気でござるか?」
ヒノキ「本気じゃとも。罠についてはシナリオに書いてある通り。別にわらわがイジメているわけではないぞ。むしろ、先に警告してやっているのじゃから、親切心を褒めてもらいたいものじゃ」
太郎「はいはい、アリナ様は親切で良いGMでござるな。ひどいのは殺意あるシナリオを書いたライター氏ということで。ええと、こんな殺意を示されたとあっては、こちらとしても覚悟を決めて臨まねばなるまい。今からザバーラの天幕に戻って、4000ガメルを支払って、〈ひらめき眼鏡〉を購入してくるとしよう。これがあれば、罠の探索と見識判定に+1のボーナスが得られるゆえに」
そういうわけで、一度引き返して、罠対策のために〈ひらめき眼鏡〉を購入したマッスル太郎であった。
〈赤の眼鏡〉の方は1000ガメルで売り払い、買い物後の所持金は2892ガメル、ザバーラポイントは4313点になる。
探索の基準値が9から10に向上して、HPも一晩休んで全快し、改めて冒険を再開することに。
ヒノキ「正面扉の落とし穴を切り抜けて、鮮血城に入った太郎には★1つを進呈じゃ。この城は地上5階、地下2階から成っており、各階は一つの部屋と階段で構成され、部屋の内容はランダムに決まる。部屋と階段を仕切る扉に罠が仕掛けられており、それを突破することで、各階を移動できる方式じゃ。では、まず1階の部屋から決めるとしよう。2Dを振れ」
太郎「8でござる」
ヒノキ「そこは温室じゃ。温かく、植物が生い茂っている。天井が発光していて、人工の陽光となって部屋全体を照らしているようじゃの。部屋の木々には果実が実っている。食べてみるなら、★1つを進呈するが?」
太郎「そう言われると、食べたくなってきたでござる」
ヒノキ「1Dを振れ」
太郎「1」
ヒノキ「ヒヒヒ、毒に当たりおったわい。5点ダメージを受けるがいい。果実は全部で5個あるので、残り4個は自由に持っていくといいぞ。1〜2で毒果実、3〜5でつまらない普通の果実、6がHP回復の果実じゃ」
太郎「そんなギャンブルにHPを賭けたくないでござるよ。明らかに不利ではござらんか」
ヒノキ「それでも勇気を出して毒見をしたので、★1つ進呈じゃ」
太郎「地上を先に探索するか、それとも地下からか……よし、ここは数の少ない地下を先に探索するとしよう」
ヒノキ「地下に降りるなら、その前に扉があるので、罠を探索せよ。今回の目標値は14じゃ」
太郎「おや、ずいぶん易しくなったでござるな」
ヒノキ「罠があると予想しているのと、入り口の正面扉が難易度高めだったのじゃよ」
太郎「では、探索……出目3なので13」
ヒノキ「結局、罠に気付かなかったとは。〈ひらめき眼鏡〉がシクシク泣いておるぞ。扉がポンと爆発した。4点ダメージ」
太郎「これで、合計9点ダメージで、残りHPは35でござるよ」
地下1階
太郎「気を取り直して地下に降りた、でござる」
ヒノキ「地下1階の部屋の前に扉が一つ」
太郎「罠を調べて、ダイス目4。達成値は14でござる」
ヒノキ「見つかった。〈ひらめき眼鏡〉のおかげじゃな」
太郎「解除するでござる。今度は達成値20」
ヒノキ「問題なくクリアじゃ。部屋の構造は2Dで決まる」
太郎「5」
ヒノキ「宝箱が置いてある部屋じゃ」
太郎「怪しいので、見識判定をするでござる。達成値は18」
ヒノキ「宝箱に擬態したチェストトラップビーストじゃ。レベル3の魔法生物で、HPは25」
太郎「つまりザコでござるな。19で先制をとって、2回蹴り。両方命中して、ダメージはクリティカル25点と、もう2回クリティカルで38点。63点とは過去最大ダメージを更新でござるよ」
ヒノキ「宝箱に恨みでもあるのかよ」
太郎「戦利品は、魔具(200G)でござるか。では、扉を開けて次へ向かう。当然、罠は調べるでござるよ。探索17、解除20で問題なくクリア」
地下2階
太郎「では、階段を降りて、最下階に突入でござるよ。罠もクリアして、部屋番号は9」
ヒノキ「ここは無気力になる部屋じゃ。闇の妖精シェイドが潜んでいて、気力を減らしてくるのじゃが、お主には妖精が見えないのじゃったな。一応、難易度12の危険感知を行っていいぞ」
太郎「17で成功したでござる。正体不明だが、魔法が飛んでくる気配。カウンター・マジックで対処するでござる。これで精神抵抗の基準値10ということで」
ヒノキ「では、こちらの特殊能力『心の闇』をくらうがいい。15で抵抗せよ」
太郎「17で抵抗成功。ハハハ、我が明朗快活な超絶お笑いパワーの前には、陰鬱な闇など屁のツッパリにもならんですよ。何だかよく分からないけど、闇パワーをもたらす陰気な影よ。おとなしく、この場より去るがいいでござる」
ヒノキ「そんな勝ち誇っているマッスル太郎は、難易度14で何かに気づくやも知れん。探索判定をしてもいいぞ」
太郎「メガネがキランとひらめいて、何かを探り当てる」
ヒノキ「隠し扉じゃ」
太郎「開ける……」
ヒノキ「ヒヒヒ、そこにも罠が……」
太郎「前に、もう一度、メガネがキラン。15と言って罠発見。同じく15と言って罠解除」
ヒノキ「仕掛けられておったのじゃが、無効化されたようじゃの。チッ」
太郎「危ないところでござった。アリナ様が笑った瞬間に、咄嗟に発言しなければ、罠にはまるところでござった。では、安心して扉を開ける」
鮮血城の主
ヒノキ「隠し扉を開けると、そこには青白く巨大な人影が立っておった。人影は雷のような大声で、『この不埒者! ただちに立ち去れ!』と怒鳴りつける。それと同時に、ゴロゴロピシャーンと雷鳴が鳴り響き、稲妻が閃くのじゃ⚡️」
太郎「それは何かの演出でござろうか。こちらも負けじと腹筋パワーの芸で対抗するでござるが」
ヒノキ「冒険者レベル+知力で14以上を出すように」
太郎「18でござる」
ヒノキ「太郎の腹筋パワーで飛び出した腹筋パーツが人影に命中すると、人影はたちどころに消失した」
太郎「何だかよく分からんが、腹筋パワーの勝利でござる」
ヒノキ「どうやら幻影だったようじゃな。『キャー、私の術が解けちゃった〜』と慌てふためく少女の声が聞こえてきた」
太郎「もしかして、粉杉どのでござるか?」
ヒノキ「どうして、花粉症ガールのコナっちゃんがマッスル太郎の物語に登場するんじゃ?」
太郎「いや、当ブログは『花粉症ガール・翔花伝』なのに、最近は行方不明でご無沙汰のため、そろそろ何かの形でPONと出て来ても不思議ではないと思ってな」
ヒノキ「不思議じゃろ。いくら神出鬼没のコナっちゃんでも、何の前触れもなく、リプレイ中のNPCとして登場するなど……」
太郎「しかし、『キャー』という悲鳴は、当ブログ時空では、粉杉どのとアッキー殿の専売特許では?」
ヒノキ「それぐらい、わらわとて使えるわ」
太郎「では、試しに悲鳴を上げてくだされ」
ヒノキ「ヒ、ヒ、ヒャー!」
太郎「どうやら、アリナ様の悲鳴は少女らしいキャーではなく、ヒャーのようでござる」
ヒノキ「と、とにかく、そこには童顔の少女と、金髪の女性ルーンフォークがいて、マッスル太郎を警戒の目で見つめている」
太郎「む、これは何としても警戒を晴らさねば。どうも〜、お笑い芸人のマッスル太郎で〜す、と快活に自己紹介するでござるよ」
ルーンフォーク『お笑い芸人? 霧の街では聞かない職業ですね』
少女『でも、何だか悪い人じゃないみたいよ、お母さん』
ルーンフォーク『それでも油断をしてはいけませんよ、ユディトちゃん。少なくとも、ここまでいくつもの罠を乗り越えてきた御仁であることは間違いありません。交渉は私にお任せを』
太郎「ええと、お母さんがルーンフォークで、少女の種族は何でござるか?」
ヒノキ「人間じゃ。年の頃は10代半ばと言ったところか。内気そうで、何やらびくびくおずおずしておる。そして、お付きのルーンフォークの方が前に進み出て、こう言った」
ルーンフォーク『ええと、確か、お笑い芸人のマッスル太郎さんとおっしゃいましたね。このギュスタフの鮮血城に何のご用ですか? もしも、ユディトちゃんに危害を加えに来たのなら、このアデ、大恩ある我が主ギュスタフに代わって、成敗して差し上げます』
太郎「いや、ええと、この鮮血城には図書館があると聞いて、ギュスタフ殿に使用許可を頂きに伺った次第。それと、もしかしたら『水門の開閉コードの3つめ』が調べられるかなあ、と」
ユディト『水門の開閉コードね。3つめは276だよ。お父さんから聞いたんだから』
アデ『お嬢さま。その情報はむやみに教えてはいけなかったはず』
ユディト『だけど、わざわざここまで危険を冒して、調べに来たんだよ。その努力には敬意を示したいじゃない』
太郎「もしかして、ギュスタフ殿の娘御でござるか?」
ユディト『そうよ、太郎さん。お父さんは先日、亡くなったので、今では私が2代目ギュスタフとして、鮮血城の主なんだけどね』
太郎「何と。すると、先日、この近辺で魔動機が暴れていたのも……」
ユディト『ゴメンなさい。お父さんが急に亡くなったので、管理がうまくできなくて。あれから少しずつ慣れたから、もう、ああいう事故は起こらないはずだけど』
アデ『先代のギュスタフ様は偉大なマギテックでした。私も発掘されたときから長らくお仕えしていましたが、寄る年波には勝てなかったようで……。それ以来、この蛮族の街で先代の死を隠しながら、密やかに生きているのです。ユディト様が先代に負けないほどの技術を身に付け、蛮族社会でも侮られないほどの力量を示し得るまでは、私たちがお守りしようと考えております。マッスル太郎さまも、どうかこのことはご内密に』
太郎「分かり申した。隠れ潜み、暮らす者の秘密をベラベラ喋るほど、このマッスル太郎は無粋ではござらん。この私と、施療院のウルスラ殿に、図書館の使用許可さえいただけるのなら、喜んで秘密は隠し通してみせる、でござる」
ユディト『うん、分かった。それと、外の世界について、いろいろ教えてくれない? 外は危険だから、とお母さんが外出許可をくれないの。せめて、本好きのお友達でも遊びに来てくれたらいいんだけど』
太郎「10代の女の子でござるか。私の知るのは、大人の女性が多いでござるからな。道具屋のアイテラなんかは、ミステリーマニアで気が合うかもしれんが。とにかく、近い将来、ウルスラ殿がここの図書館に来るかもしれないので、外の話は彼女から聞くといいでござろう。この私よりもよほど街のことには詳しいはず」
ユディト『アイテラさんに、ウルスラさんね。覚えておくわ』
アデ『では、マッスル太郎さまには、これを渡しておきましょう。1階でこの私を呼び出すベルです。お嬢さまにお会いしたいときや、図書館を利用したいときには、これを使用すれば、私がご案内いたします。ベルは、あなた様とあと一つ、ウルスラ様の分をお渡ししておきます。それでよろしいのですね』
太郎「かたじけない。これでクエスト達成の上、『3つめのコード276』まで聞けて、幸いだったでござるよ」
ヒノキ「それでは、これにて★1つを進呈じゃ。地上階の探索は割愛ということで」
●ここまでの成果
経験点:★7つ、魔物退治分90点、ピンゾロ1回分50点
所持金:3092ガメル、4313ザバーラポイント
その他:運河通行証、サンドリーヌの情報1個、ひらめき眼鏡、3つ目の水門の開閉コード276
(当記事 完)