花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

マッスル太郎、北東踏破(SWミストキャッスル5ー3)

ディスプレイサー・ガジェットの話

 

ヒノキ「YouTube仮面ライダーウィザードが配信記念のマッスル太郎5部リプレイじゃ」

ゲンブ「戦隊ではファンタジー系の作品も数多いが、ライダーでファンタジー系は珍しいでござるな」

ヒノキ「昭和時代だと、敵組織が呪術系だったり、GODの神話怪人だったりするが、ライダーはどちらかと言えば、科学の象徴である改造人間が基本じゃった」

ゲンブ「アマゾンは除く」

ヒノキ「まあ、例外の異質な存在じゃろうな。ただし、原点どおりの怪奇色、そして大自然の使者だったり肉体アクションの強調じゃったり、ロンリーヒーローっぽさを受け継いでおる。

「そして、ファンタジー系ライダーと言えば、精霊パワーで巨大化するJや、神々や天使が人間の進化に干渉するアギト、異世界のモンスターと契約する龍騎、西洋モンスターをモチーフとしたキバ、中世ヨーロッパの錬金術に由来するオーズ、ヘルヘイムの森の果実に象徴される鎧武、異世界と幽霊モチーフのゴーストなども設定要素的にファンタジーと言えなくはない」

ゲンブ「エグゼイドはどうでござろうか?」

ヒノキ「ゲーム世界モチーフをファンタジーと言えるかどうかじゃのう。まあ、違う意味で神は登場するが。仮面ライダーブレイブはファンタジーRPGをモチーフにしておるが、他はアクションゲーム、シューティングゲーム、レースゲームなどで、ファンタジーだけにこだわっておるわけではないし、ゲーム=科学・機械の要素の方が強いと思われ」

 

ゲンブ「ところで、ディスプレイサー・ガジェットでござるが」

ヒノキ「また唐突な話題転換じゃのう」

ゲンブ「これは単にアイテムの装着部位を変えるだけの装置と思い込んでいたが、説明をよく読むと『緑色の人形』なのでござるな」

ヒノキ「2.5版のエピックトレジャリーではな。2.0時代のルミエルレガシィでは『銀色の人形』となっておる」

ゲンブ「マッスル太郎は頭にディスプレイサー・ガジェットを装着しているが、これは頭の上に人形をチョコンと載せておるのでござろうか?」

ヒノキ「それは、ちと間抜けな絵面じゃのう。まあ、花粉症ガールのコナっちゃんは以前、頭にドゴラ帽子を乗せておったが。ライダーで言うなら、歩く仏壇と呼ばれたグランドジオウも頭にフィギュアを戴いていたのう」


グランドジオウ初変身シーン

 

ゲンブ「というか、頭だけでなく、全身にフィギュアを張り付けておったでござるな。ならば、マッスル太郎も人形の一つぐらい額に張り付けておくのも一興……なのか?」

ヒノキ「それが不服なら、人形がもっとファッショナブルな装飾品に変形するという風にアレンジしてもよいがのう。少なくとも、ルミエルレガシィの記述を読むかぎり、人形はコマンドワードで等身大から縮小するとあり、サイズ差が変わるなら、変形ロボみたいに可変することも容易であろう」

ゲンブ「なるほど。人型形態の人形が、ヘルメット型やヘッドギア型に変形するということか」

ヒノキ「頭パーツに変形する小型人型ロボって何があったかのう?」

ゲンブ「これでござるか?」


Jeeg transform


鋼鉄ジーグ[opening】鋼鉄ジーグのうた & 鋼鉄ジーグ[ending] ひろしのテーマ 映像編集

 

ヒノキ「何だか意味合いが違うようにも思えるがのう」

ゲンブ「しかし、鋼鉄ジーグを見ていて思い付いたことがある。彼がサイボーグであるのと同様、マッスル太郎は人造人間のルーンフォーク。頭部には元々、金属パーツが付いていたでござる。そのパーツに収納するようにガジェットを装着すれば、デザイン的にあまり違和感を伴わないかもしれん」

ヒノキ「他には、戦闘機が人型になって、頭部パーツにもなるダンクーガのイーグルファイターなんかがイメージしやすいじゃろうか」


【超獣機神ダンクーガ】放送当時を思い出しながら解説 / DANCOUGA metamor-force EAGLE FIGHTER

 

ヒノキ「ともあれ、当リプレイにおける装備品ディスプレイサー・ガジェットは可変フィギュアという設定が急遽こじ付けられたということで、前置き終了なのじゃ」

 

 北東区画、踏破を目指して

 

太郎(ゲンブ)「現在、マッスル太郎は霧の街の最北東の偵察ミッションのために、長屋を拠点に未開示区画を次々とオープンしている最中でござる」

ヒノキ「目的地を含めて、残すところ3ブロックじゃな」

太郎「北東部に宿泊施設が出現すれば探索しやすいのでござるが」

ヒノキ「東中央部の長屋を拠点に、次はどう進めるつもりじゃ」

太郎「ランダムイベントが頻繁に起こると攻略の手間が掛かるので、そこを避けるように進めるなら、まずは長屋の北西の橋でござるな」

蛮族A『マッスル太郎さん、チーす』

太郎「お前たち、まだ、ここにたむろしておったのか」

蛮族A『この橋の上が、居心地いいんですよ』

太郎「通らせてもらうぞ」

蛮族A『どうぞどうぞ。名誉バルバロスさまの邪魔はしませんて』

太郎「では、北の鮮血城から、さらに北をオープンするでござる」

ヒノキ「黒の丘の東じゃな。(コロコロ)おお、ここはヤムールの酒場じゃ」

太郎「ヤプールの酒場?」

ヒノキ「どこの異次元酒場じゃ、それは?」

 

ヤムールの酒場(昼)

 

ヒノキ「ここは名誉蛮族のドワーフ、ヤムールが経営する人族のための酒場兼宿泊施設じゃ」

太郎「ほう。これは当たりを引いた気がするでござる」

ヤムール『おや、誰かと思えば、マッスル太郎じゃないか。うちの酒場に顔を見せてくれるとは光栄だな』

太郎「……って、何で名前を知っているでござるか?」

ヤムール『酒場の主人といえば情報通。世間の常識だろうが。それに闘技場での活躍や、お笑い芸人と称して、あちこちの危険に顔を突っ込んでいることとか、その動向を気にしている者もそれなりにいる。おまけに最近、ザバーラの奴隷の立場から名誉蛮族の地位を買いとったとも聞く。言わば、運と実力に恵まれたソロの冒険者の話。噂にならぬ方がおかしい。違うかい?』

太郎「ええと、そんなに噂になっているでござるか?」

ヤムール『安心しな。あんたの裏の顔や、レジスタンスとの交流関係までは知れ渡っていないさ。仮面レンジャーさんよ』

太郎「知られているではござらんか」

ヤムール『言っただろう? 酒場の主人は情報通だって。他には、あまり知られていないということは保証する』

太郎「それにしても、たかが酒場の主人ってだけで、そこまで知られているとは……」

ヤムール『スエラの炎の元締めとは、同じドワーフ同士の縁がある。これで説明になっていないか? 俺はあんたの味方と思ってくれていい』

太郎「ほう、そうか。ウルスラさんの知り合いでござったとは。だったら、前もってそうと教えてくれれば良かったのに」

ヤムール『ウルスラは、あんたがこっち方面に来るということを知っていたのか?』

太郎「いや、それは知らせていなかったでござるな」

ヤムール『だったら、わざわざ気を利かせて、俺のことを教える理由はないな。情報はただじゃないんだし、だからと言って聞かれもしないことをベラベラ喋るような奴は信用できん。それで、あんたはこっち方面に何の用があるんだ?』

太郎「特に隠す理由もなさそうなので、北東区画での偵察ミッションのことを話すでござる。情報が欲しければ、相応の対価となる情報を渡すことも社会的交流の原則ゆえに」

ヤムール『ザバーラがお前にあの区画を調べるように言ったのか? 何を考えているんだ、あのメスウサギは? お前に何をさせようとしてる?』

太郎「ええと、何か問題でも?」

ヤムール『お前は知らんのか? あそこは『血染めの壁』と呼ばれ、蛮族どもが人族の罪人を見せしめに殺すような場所だぞ。そんなところを偵察させるということは、何かの意図があってのことだろうが……読めん。ザバーラは蛮族の味方なのか、それともこっそり敵対しようというのか。何のために、お前みたいなトラブルメーカーに自由行動を許してきたのか?』

太郎「トラブルメーカーとは、酷い言いようでござるな」

ヤムール『いや、俺の立場では褒め言葉さ。蛮族の支配する街でトラブルを起こすということは、人族の味方ということだろう? まあ、こっちにまで火の粉が飛んで来たら閉口するがね。しかし、ザバーラの真意がどうあれ、あんたがここに来たということはピンチがチャンスに変わるかもしれん』

太郎「どういうことでござるか?」

ヤムール『せっかくだから、あんたの腕を見込んで、一仕事頼まれてくれないか』

太郎「何と。ミッションでござるか?」

ヤムール『ああ、固定ミッション「エドガーを救出せよ」を発動したい。奴は風の旅団のメンバーだが、血染めの壁でもうすぐ処刑されようとしている。別組織の俺がどうこうしてやる義理はないんだが、それでもただ見捨てるというのも寝覚めが悪いわな。風の旅団が動くかと思っていたが、連中は南が拠点だから、こっち方面にはなかなか手が出せねえようだ。つまり、バラバラの組織が二つあって、連携も取れない状況じゃ、エドガーを助けることは困難ということさ。しかし、どっちにも顔の利くあんたが動いてくれるなら……って期待をかけるのは間違っているかい?』

太郎「う〜ん、エドガーという名前、どこかで聞いたことがあるような気がする」

ヒノキ「それについては、この記事を見よ」

太郎「ミランダ婆さんの養い子の一人でござったか。ならば、長屋で寝泊りさせてもらってる恩義のためにも、必ず救わねば」

ヤムール『ほう、動いてくれるかい。意外と仁義に篤い男じゃねえか。ルーンフォークだから、てっきりご主人さまの命令がなければ動いてくれない、融通が利かねえ奴かもって思ってたぜ。だけど、気に入った。必要なら、ここで無料で泊めてやる。それと、こいつは前報酬だ。信頼の証に★2つを進呈するぜ。仕事はエドガーを助けて、この酒場に連れて来ること』

太郎「心得たでござる」

ヒノキ「なお、このヤムールからの依頼は、シナリオの記述を当リプレイの物語に合わせて、アレンジしておる。本来は、ヤムールはスエラの炎ではなく、風の旅団の外部協力者じゃし、固定ミッション『エドガーを救出せよ』ではなく『風の旅団と接触せよ』を発注することになっているが、そのままじゃと、ここまでのストーリーと矛盾が発生するから急遽、辻褄合わせができる形に変更した次第」

太郎「確かに、情報通のヤムールが風の旅団の関係者なら、北のレジスタンスのことを彼らがよく知らないという話と矛盾する。そして、『風の旅団と接触せよ』についても、すでに接触済みでござるからな」

ヒノキ「固定ミッション『エドガーを救出せよ』は本来、ミランダ婆さんが依頼してくる序盤のミッションでの。ただ、この場面で流用可能だとGM判断したために、急遽差し挟んだことを明言しておこう」

 

奴隷市場(夕方)

 

太郎「宿泊場所も確保した上、夜までは間があるので、隣の区画も開示しておくでござる」

ヒノキ「そこは奴隷市場じゃ」

太郎「奴隷市場! すると、私もここでザバーラに売られたでござるか?」

ヒノキ「その記憶は、太郎にはないんじゃがの」

太郎「記憶にない? しかし、私はザバーラに奴隷として買われたはず。奴隷市場で買われたのでなければ、どこで?」

ヒノキ「ザバーラは大商人じゃから、自分独自の伝手を持っているのじゃろう。いずれにせよ、太郎にはこの場所の記憶がない」

太郎「う〜ん、記憶がないと言われると、何だか自分がアギトか、ディケイドか、ビルドか、不破さんになったような気分でござるが」

ヒノキ「不破さんは記憶喪失ではなく、記憶を改竄されていたのじゃがな。まあ、後から意外な過去が発覚することもよくある話じゃが」

太郎「そう言えば、マッスル太郎の過去はあまり気にしていなかったでござるな。どうして、お笑い芸人になろうと思ったのか?」

ヒノキ「キャラ作りの時に、いろいろ考えたネタ話はあるがの」

太郎「経歴表か。奴隷というスタートがインパクトありすぎて、あまり気にして来なかったでござるが、今後のキャラの人生を考える上で改めて確認しておくと……『奇妙な予言をされたことがある』『異種族の友人がいる』『罪を犯したことがある』の三点。そして冒険に出た理由は『人々を守るため』でござるな」

ヒノキ「奇妙な予言……最低最悪の魔王になるのか?」

太郎「いや、救世主の方でござる。少なくとも風の旅団のトホテルは、ル=ロウド神のお告げと称して、そんなことを言っていた気がする」

ヒノキ「異種族の友人……は、いろいろ冒険中でもできた感じじゃの。グラスランナーのニルスとか、ドワーフウルスラとか、人間のマリリンとか……」

太郎「NPCをどこまで友人認定するかはなかなか微妙でござるが、知人と友人の違いは何でござろうか?」

ヒノキ「自分のために何かをしてくれて、相手のために何かをしてやれる間柄じゃと、わらわは思うがの。お互い様じゃと言い合える対等な関係が友人であって、これが一方的だと友好関係に支障が出る。友人同士だと借りや貸しのやり取りもあるじゃろうが、『この借りはいつか返す』とか『あいつに借りは作ったままにしておきたくない』とか、そういう間柄じゃろうかの? まあ、ゲンブはわらわの従者の位置づけにおるが、同時に友人であるとも考えておる。わらわはゲンブの世話もしておるし、ゲンブもわらわの世話をしてくれる。お互い様の付き合いができておるじゃろう」

太郎「アリナ様にそう言っていただくと、光栄でござりますな。ところで、マッスル太郎の罪とは何でござろうか?」

ヒノキ「元ネタ的には、怪人になって暴れたことじゃが、この物語的には少々考えていることがある。ザバーラと太郎の関係性に通じるものじゃ。気に入ってくれるかどうかは分からんが、わらわなりに頑張って考えた物語の背景を用意しておる。いずれザバーラの言葉で語る予定じゃ」

太郎「おお、それは楽しみでござる。では、その関係性の物語が公開される時を目指して、今のミッションをやり遂げるとしよう」

ヒノキ「この奴隷市場では、奴隷の立場と名誉蛮族の立場で異なるイベントが発生するのじゃが、巻き込まれ型の奴隷イベントに比べると、名誉蛮族の場合は自ら積極的に奴隷売買に関わって行く必要がある」

太郎「と言っても、マッスル太郎が奴隷の売買に興味を持つとは思われん」

ヒノキ「そのようじゃな。よって、今回は特に何も起こらないとしよう。ここでのイベントを物語に取り入れるには、ちょっとしたアレンジと仕込みが必要になるゆえに」

太郎「まあ、TRPGのシナリオはそのままの形で使えるものもあれば、キャラの物語に合わせた改変が必要なものもあるからな。キャラ性を無視して、ただの経験点稼ぎに走ると、物語としては興醒めでござる」

ヒノキ「ゲーム的には、少しでも多くの経験点を稼ぐために、細かいことは気にしないという考えもあろうし、複数プレイヤーキャラがいるならば、あるキャラが興味ない事件でも別のキャラが興味を示して、結果的に付き合いという形でイベントに介入するという流れもありじゃな」

太郎「しかし、これはマッスル太郎個人の物語であるゆえ、太郎のキャラ性を無視して話は進められんでござる」

ヒノキ「その割には、マッスルウィザードとか、古代インカとか、マッスル太郎のこれまでのキャラ性とは異なるネタを好き勝手に投入しているようじゃが?」

太郎「それは、プレイヤーが演じるキャラである以上、プレイヤーのその時の関心が反映されるのは仕方ないことでござる。物語的整合性も大切でござるが、遊ぶ人間のリアルタイムなノリというのもゲームだと大切であるゆえ」

ヒノキ「きちんと完成された物語よりは、リアルタイムで移り変わっていくゲーム的なインタラクティブ性を重視する考えじゃな」

太郎「もちろん、奴隷の地位から解放されて、名誉蛮族として相応の敬意を示される立場になったため、多少は浮かれた気分になっていることも否めないでござる」

ヒノキ「何にせよ、名誉蛮族の立場で奴隷市場にどう接するかの物語は、またいずれかの機会に展開することもあろう。今回は見送りじゃな」

太郎「攻略タイミングの違いで、イベント進行の流れに差が出てくるのが、ミストキャッスルがゲーム的に面白いところでござろう」

 

ヤムールとの対話(夜)

 

太郎「夜になるので、ヤムールの酒場に引き返すでござる。いやあ、北東部で宿泊施設が見つかって良かった。宿泊施設が遠いと、移動時間が多く掛かってしまい、探索に時間が掛かるクエストやミッションが手を付けにくいでござるからな」

ヤムール『ところで太郎さんよ。隣の奴隷市場を見てきたんだったら、どういう感想を持ったか聞かせてくれないか?』

太郎「感想も何も、自分が奴隷になった時のことは、よく覚えていないでござる」

ヤムール『覚えていない……って、そんなバカな……いや、お前さんはルーンフォークだったな。ルーンフォークは死んで復活した際に、1年間の記憶を失うって聞いたことがある。何だか悪いことを聞いちまったな』

太郎「いや、私はあまり気にしていないでござるよ。過去に何があったかよりも、今、何ができるか、将来に何をしたいかが大事。そのために日々是精進あるのみでござる」

ヤムール『おお。なかなか良いことを言うじゃねえか。で、お前さんは何がしたいんだ?』

太郎「みんなの笑顔のために、芸を磨き、身体を鍛え、陽気で強い漢になりたいでござるよ。そのためには、お金も必要。最近は古代インカの秘宝を求めて、冒険者っぽくトレジャーハンティングもしてみたくなった。そう、夢とロマンを求めて、外の世界へ旅立つのも悪くない」

ヤムール『前向きなのはいいことだな。俺にできるのは美味い飯と酒を出しながら、虐げられた人々のために居場所とか、生きるための情報を提供してやるぐらいだ。そのために名誉蛮族の地位を買ったんだ。結局、浮民の誇りだとか言っても、力がなければ困っている人に手を差し伸べることもできないからよ』

太郎「名誉蛮族と言っても、ピンキリでござるな。先日、浮民の女の子を連れ去ろうとしている男に説教をしてやったが」

ヤムール『地位を得て、人の良心を捨て去った輩もいるわな。結局、人族にも蛮族にも、いい奴もいれば悪い奴もいる。性根の腐った人族よりは、誇りを持った蛮族の方が尊敬できることもある。行き着くところは個人の魂の輝きって奴かもしれんな』

太郎「魂と言われても、あまりピンと来ないでござるな。ルーンフォークは魂を持たない種族であるゆえに」

ヤムール『そうなのか? お前さんの話しぶりを見ていると、魂がないなんて思えないんだが』

太郎「心はある。考える頭もある。しかし、人工生命体ゆえ輪廻するような魂はない、というのがルーンフォークという種族なのでござる」

ヤムール『まあ、気にするな。俺だって、魂なんて話をしてもピンと来てるわけじゃないからよ。人族は魂の穢れを忌避し、蛮族どもは魂の穢れを強さの象徴として受け入れる。だが、穢れ過ぎた魂は輪廻の輪から外れ、亡者(アンデッド)と化して、人族蛮族共通の敵になったりもする。それでも、蛮族の一部は不死神メティシエなるものを崇めて、自ら亡者となろうとする者もいるそうだ』

太郎「アンデッドか。現在、私は操霊魔術師コンジャラーとしても修行中の身だが、もう少しでゴーレムやアンデッドを造る呪文を習得できる」

ヤムール『なかなか物騒な術だな。誰に習ったんだ? ザバーラか? あのメスウサギは魔神使いだという噂もあるが本当か?』

太郎「質問が多すぎるでござるよ」

ヤムール『おっと、悪い悪い。情報はただじゃなかったよな。ルーンフォークと会話を交わす経験が少なかったから、ついつい好奇心が先走っちまった。非礼は詫びる。誰だって、詮索されたくないことだってあるわな』

太郎「そう言えば、操霊魔術は誰から教えてもらったわけでもござらん。必要だと思えば、いつの間にかコツをつかんでいたでござるよ」

ヤムール『ルーンフォークは出自から、魔動機術と相性がいいとは聞くが、霊魂を扱ったりもする操霊魔術を誰からも教わらずに身に付けるとは……お前さん、もしかすると天才って奴かも知れないな』

太郎「この私が天才? ありえん。私はドジで強いつもりのマッスル太郎、ただのお笑い芸人でござる。少々、格闘技と探索のための小技、体を鍛えて、ちょっとした魔術をたしなむ程度のな。買いかぶりも甚だしいでござるよ」

ヤムール『そうか? 一人で二役も、三役も、四役も、いろいろやりこなすだけで天才とは言えるんじゃないか?』

太郎「そんなこと考えたこともなかった。……そうか。私は天才でござったか」

ヤムール『……冗談だ。真に受けるな。お前さんの反応がいいんで、ちょっとからかっただけだ』

太郎「いじり芸ってことでござるな。他人をネタにすることで笑いをとる技術。しかし、いじられた本人が納得の上、楽しんでいるならともかく、やり過ぎるとイジメに発展するので、加減が必要でござるよ」

ヤムール『何の話か知らんが、お前さんが気に病むなら、これぐらいにしておこう。俺の知ってるルーンフォークは、ご主人さまにベッタリで割と無機質っぽい連中が多いから、お前さんみたいに一人で行動して、自分の意見をしっかり持ったルーンフォークというのが珍しいと思ってな。ついつい面白くなってよ』

太郎「私はルーンフォークとしては、変わり者でござるか?」

ヤムール『まあ、変わってるな。話していて楽しいって意味の褒め言葉だが』

太郎「きっと、お笑い芸に特化したルーンフォークだからであろう。話術で人を楽しませているのなら、本望でござる」

ヤムール『少なくとも、話していて、お前さんの人格が何となく分かった。今夜はもう寝な。明日の朝には『血染めの壁』に向かうんだろう?」

太郎「そのつもりでござる。では、お休み」

 

 翌朝、マッスル太郎は街の最北東区画『血染めの壁』に向かった。

 これにて、北東部の未開示エリアが全て開示され、踏破し尽くすことになる。

 一方、ヤムールとの対話から、自分自身の過去や風変わりな個性を意識するようになったマッスル太郎。

 果たして、彼は天才なのか?

 あるいはル=ロウド神の予言にあるような救世主なのか?

 マッスル太郎の運命は、どのような皮肉に彩られているのか?

 GMの日野木アリナは、 彼とザバーラの関係について、どのような背景設定を考えているのか?

 マッスル太郎のアイデンティティにまつわるドラマがこの後、展開することを予告しておいて、当記事 完。

 

PS.ここまで言っておいて「普通すぎて、つまらん過去」ってオチはなしにしたい(by 作者NOVA)

 

●霧の街のマップ(5ー3話時点、青字は宿泊可能。

      紫は今回開示区画。矢印は移動経路)

 

                                        ヤムール  奴隷 血染めの

  牧場  ー 娼婦街ー黒の丘ー  酒場市場→ 

    l            l      l      ↑         l            l

   l    l   泉の    ↑    ティダン  l

路地裏施療院ー 広場鮮血城ー神殿跡ー牢獄

    l            l      l           ↑          l      l

常夜      l      サカロス       ↑   灼熱の踊り  l

回廊ー 涸れ井戸ー 神殿跡 ー   橋  ー 子亭ー  廃屋

    l             l           l           ↑       l       l

   港ー   三色の天幕庭園ー翡翠の塔← 叫び

                 (拠点)    l                     屋 の門

                      l          l            l    l       l

              ダルクレム     l               l            l        l

      神殿 ー骨の川ー 処刑場ー市場ー?

                       l         l     l         l

       剣闘士の宿舎 ー 追い剥ぎー廃墟ー嘆きのー?

        l          小路    l         広場

                         l   I             l           l

                     闘技場麻薬窟ー帰らずー?

               の街