花粉症ガール・翔花伝&コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女主役の物語」&「その仲間たちの雑談話」など。TRPG話や特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。

ロードスより先の古代魔術の話1.5(フォーセリア→ラクシア)

ちょっとした昔話

 

NOVA「今回はラクシアの話をするぞ。ところで、晶華。ラクシアって何だ?」

晶華「NOVAちゃんは私のことをバカにしているの? そんなのソード・ワールド2.0および2.5の背景世界に決まっているじゃない。今を生きるソード・ワールドファンの常識よ」

NOVA「ああ、念のため確認してみた。世の中には、ラクシアのつもりでラグシアと書いて質問してくる人間がいるからな。ベッドをベットと書いちゃう人はたまにいるが、わざわざ付けなくてもいい濁点を付けちゃうミスは珍しいな、と思って」

ヒノキ「まあ、そういう些細なミスはよくある話じゃろう。わざわざネタにしてツッコむほどのこともあるまい」

NOVA「ああ。ミスと言えば、俺も昔、ルナル関係の原稿を書いた際、鳥型種族のミュルーンをミョルーンと勘違いしていたことがあって、友野さんにご迷惑を掛けたことがあるんだ」

ヒノキ「新兄さんにそのような過去が?」

NOVA「今さらながら言い訳すれば、雷神トールのミョルニール(今だとマイティー・ソーのムジョルニアという表記が一般的)というイメージが頭にあって、小説のルナルを読んでいた時も、そう空目をしていたんだな。で、ゲーム自体はプレイ経験がなかったから、耳でミュルーンという発音を聞いたことがなくて、それがこの本の原稿記事を手伝っていたときに発覚した、と」

晶華「ところでルナルって何?」

NOVA「ポスト・ロードスを期待されたTRPG背景世界だよ。そして、今もSNEの重鎮である友野詳さんの代表作の一つと言っていい。俺が見習いをしていた時に、一番お世話になった先輩ということになる。

「90年代半ばだと、水野さんや山本さんといった初期SNEの重鎮さんは本職の小説執筆活動が忙しく、SNE本社に顔を出す機会が比較的少なくて、本社に割と常駐して若手新入りを取り仕切ることが多かったのは清松さんと友野さんだったと記憶。そして、若手代表が北沢慶さんで同期の出世頭がモンコレの加藤ヒロノリ君、そして最近SWなどのサポート役からロードスおよびゴブスレのデザイナーとして俺がプッシュしているのが川人忠明君ということになる」

ヒノキ「ほう。新兄さんの過去話ということか」

NOVA「まあ、3年ほど見習いであれこれ手伝って学ばせてもらったことがある程度だし、今も個人として付き合っている関係じゃない(ツイッターでフォローはしているけど)。ただ、まあ、その時期にあれこれ学ばせてもらった経験は、今も俺のネット活動で重要な土台になっていると思うんだよ。とりわけ友野さんの特撮ヒーロー魂に触れていなかったら、特撮ヒーロー関係のサイト『ホビー館』を立ち上げて、あれこれ記事書きしていなかったと思う。隠れオタクとして自己アピールするのを避けていたろうな」

ヒノキ「つまり、友野氏が新兄さんの直接の師匠ってことになるのかの?」

NOVA「俺としては学生時代から、TRPGの師匠が安田社長で、小説の師匠の一人が水野さんで、友野さんの場合は特撮を初めとするマニア道の師匠って感じがする。人生全体で考えるなら、見習い時代は決して長くはない薫陶期間だったとは思うし、向こうはその後もいろいろな後輩クリエイターにいろんなことを指示したり、注意したり、説教したりしているから、俺のことなんてとっくに忘れていても不思議じゃないだろうが、こっちは今もファンとして友野さんの記事を『おお、面白いし、参考になるや』と思いながら読んだりしているし、こういうクリエイターに憧れる気持ちはいつまでも大事にしたいと考えている」

ヒノキ「前回、コクーンワールドに迷いかけたのも、そういう想いを書き記したかったからじゃな」

NOVA「いや、逆。最初はフォーセリアに専念しようと思ったんだけど、うっかりガープスのことを書いてしまって、そこからコクーンとかルナルとかつながってしまうと、ああ、そう言えば、昔、友野さんにはいろいろお世話になったなあ、という想いが抑えきれなくなって、だだ漏れているのが現状」

晶華「だったら、もしもこの記事を友野さんが読んでいて、万が一コメントを書いてくれるようなことがあったら?」

NOVA「うおー、と叫んで、感謝感激感涙雨あられになるだろうけど、実は最近ツイッターでちょっとしたコメントレスに返信をいただいて、それで十分だって気持ちなんだ。別に俺は向こうに自分の相手をして欲しいと執着しているわけでもないし、本気で会いに行こうと思えば、TRPGイベントなんかに顔を出すこともできる。

「じゃあ、どうしてそれをしないかと言えば、昔の思い出は思い出で大事にしたいし、直接会わなくても、記事のファンとか作品のファンというだけで十分いろいろ話を楽しめている。作家という特定個人に執着しなくても、ネット上でいろいろな人と定例的に付き合ったり、話を聞いたりするのも楽しいし、仕事で面倒を見ている教え子や話すべき保護者もいろいろいるし、リアルフレンドも多数とは言えないが必要十分程度にはいるわけで(さすがにTRPG仲間4〜5人を一度に集めることは困難だけど、2〜3人のボードゲーム仲間なら何とか)、人への関心もいろいろと分散してしまうんだ。

「要は自分も忙しいし、相手も忙しいだろうと考えると、じゃあ、この人とはどういう付き合い方をすれば、お互いにWinWinで楽しく、互いに負担にならない付き合いができるかって考える。逆に、そういう配慮のできない、どこまでもベッタリ絡みつくような人間にはなりたくないし、絡みつかれたくもない。趣味にはベッタリ執着しても、人間関係は淡白に、趣味を通じて気が合う友人と程よくボールを交換する程度でいいかな、って考える」

 

晶華「確かに、NOVAちゃんはベッタリ付きまとわれる関係を、気持ち悪いと考える人だし、付き合う相手は『自分と同じ物を見て、楽しんでくれる相手。自分の好きな物をやたらと攻撃して来ない相手』と明言しているし、『見てもいないものに対して、愚にもつかない偏見だらけの批判をするような手合いは嫌うし、相手するだけムダ』ととことん見下すところがあるものね。私もそうならないようにしようっと」

 

フォーセリアの三つの舞台誕生の裏話

 

晶華「ところで、私はNOVAちゃんに謝らないといけないの」

NOVA「何だ?」

晶華「ロードスのことは勉強したんだけど、実はソード・ワールドのことがよく分かっていないのよ。よく分かっていないのに、下手なことを言ったら、NOVAちゃんの気持ちを害するかもしれないから、先に自白しておくわ。粉杉晶華は、ソード・ワールドのことがあまり分かっていません」

NOVA「何でだよ? ここでも『剣の世界の花粉症ガール』などの記事はいっぱい書いたし、お前もプレイに参加……あっ、してないなあ」

晶華「そうなの。以前にバトル遊戯をしたのは、お姉ちゃんであって、私はNOVAちゃんといっしょにフェローの魔術師『新華リオン』を作っただけ。それにマッスル太郎は当然、私は参加していないし。粉杉晶華はロードスファンだけど、ソード・ワールドとかクリスタニアとか言われても、よく分かっていないのよ、実は」

NOVA「そいつは盲点だったな。ラクシアはこれから解説できるが、フォーセリアのことを、ロードス以外が分かっていないとは、思いもしなかったぜ」

晶華「一応、自分でも調べてみたのよ。ロードス島の北にアレクラスト大陸があって、そこが昔のソード・ワールドの主舞台。一方で、ロードスの南にあるのが神獣たちのいる大陸クリスタニア。ロードスと、アレクラストクリスタニアの3つの地域をまとめた世界がフォーセリアだって」

NOVA「それだけ知っていれば、大体十分じゃないか? 世界が同じだから、神さまとか生息しているモンスターなんかは共通していたりする。もちろん、国名や地域名、地域特有の文化的な違いはいろいろあるが、基本的に世界設定の構築者が水野良さんであることは間違いない」

晶華「だけど、どうして三つの地域に分かれたりしたの?」

NOVA「それは、角川書店富士見書房メディアワークスと3つの出版社に分かれた影響だよ。今では全部同じKADOKAWAだけどな」

晶華「現実で、三国志みたいに三つの会社が分かれていたから、フォーセリアも三つに分かれたわけ?」

NOVA「この辺は、企業内の部署組み替えや分裂統合の歴史などと絡み合ってややこしいし、80年代から90年代のSNEは自社出版できる体制を取っていなかったから、ゲーム業界の発展とバブル崩壊を背景にした大手出版社の経営方針の変遷に巻き込まれて、いろいろ翻弄されたんだよ。この辺の歴史は、この本なんかが詳しいんだけどな」

NOVA「まず、表に出たところでは、86年に角川書店パソコンゲーム誌『コンプティーク』で、D&Dリプレイの『ロードス島戦記』が連載開始される。これは安田社長曰く、角川がD&Dの書籍部門の版権をゲットできたおかげで『ドラゴンランス戦記』やAD&Dゲームブックの出版が可能になったことと関係してくる。D&Dのゲーム部門は、先に新和が版権をとっていたため、 ゲームと書籍関係のサポート元が違うという軋轢は生じたけど、当時は日本のRPG市場が生まれて間もなく、RPG文化を盛り上げるべく、みんなで協力してパイを大きくしようって空気が日本の業界内にあったようだ」

ヒノキ「新和と角川は互いの商品に広告を入れ合って、しっかり協力体制を取っていたようじゃの」

NOVA「ただし、当時の角川はゲーム関係のサポートをするブランドを持っていなかったので、子会社の富士見書房がリスクを負う形で、AD&Dその他のゲーム書籍をサポートするブランドとして『富士見ドラゴンブック』とか『富士見ドラゴンノベル』を次々と立ち上げ、SNEもそこを主舞台にして行ったわけだ。ガイドブックの『モンスター・コレクション』や小説の『ドラゴンランス』などが角川ではなく、富士見書房から出たのもそういう理由」

ヒノキ「ゲームに方針転換する前の富士見書房は、角川本社が禁じている官能小説などの色物を代わりに多く扱う部署だったそうじゃな」

NOVA「大手の本社がブランドイメージ的にできないことを代わりにするのが子会社の仕事ということなんだろうな。だけど、トップの先見の明が当たって、ゲーム分野で花開くわけだ。その後、富士見書房はゲームと小説、コミックを融合した総合誌ドラゴンマガジン』を88年に刊行し、そこから『ソード・ワールド』と『富士見ファンタジア文庫』などのラノベレーベルが生まれたりもする」

晶華「その間、角川さんはロードスをどうしたの?」

NOVA「80年代は、ゲーム関連のサポートをあまりして来なかった(ここでのゲームとは、ファミコンやパソコン関連ではなく、その背景にあったアナログゲームのこと)。アニメのノベライズには積極的だったけど、ゲームには理解が薄かったらしく、しかも当時D&Dを出版していたアメリカのTSR社が、日本独自のD&D背景世界としてロードスを扱うことにクレームを付けた。そういうクレームからロードスを守ることは困難だったようで、ロードスとD&Dを切り離すことで、かろうじて延命を図ったけど、ロードスは結局、ゲームよりも小説そしてアニメの素材として、扱う流れになったわけだ」

ヒノキ「じゃが、最初のロードスRPGロードス島戦記コンパニオン』は89年に出おったぞ」

 

NOVA「あくまでゲームのルールではなく、ファンサービスのムック形式という形でな。とにかく、当時の角川上層部としては、まだゲーム方面に舵を切ることにリスクを感じていたことは間違いない。そこでロードスの展開は小説を中心にし、仕切り直しとして新企画の『漂流伝説クリスタニア』がロードス・リプレイ三部作の後継作として始まったが、その後、92年に角川お家騒動(経営方針の違いで、春樹社長の弟・副社長の歴彦氏が退職させられる出来事)を経て角川からメディアワークス社が分裂。クリスタニアのリプレイも、角川の『コンプティーク』誌からメディアワークスの『電撃王』誌に移籍。こうして、角川のロードス、富士見のソード・ワールドメディアワークスクリスタニアという三地域が並立して展開する形になったわけだ」

ヒノキ「しかし、その前の91年に『コンプRPG』誌が角川から出版されておる。この辺りから腰の重い角川もゲーム方面に舵を切ったと考えられぬだろうか?」

NOVA「少しずつ富士見の後追いをするようにはなっているんだろうな。そこでプッシュしたのがガープスなんだけど、92年に歴彦副社長が退職した件で混乱。その後、93年に春樹社長の方が麻薬関係の事件で逮捕され、歴彦氏が改めて角川の社長に就任。そこから『コンプRPG』誌がそれまでの季刊誌から隔月刊誌になったり、ゲーム関係の『スニーカーG文庫』が創設され、文庫版ロードスやらハイパーT&Tなどのゲーム書籍が次々と出版されるなど、ゲーム方面のフットワークが非常に軽くなる。そのまま順長に進めば良かったんだがな」

晶華「NOVAちゃんがそういう時期にSNEの見習い契約社員になったわけね」

NOVA「ああ。素人目には角川お家騒動なんてよく分からなかったし、当時はまだインターネットという情報源も活用できる段階ではなかったからな。ファンの目としては、次から次へとTRPG雑誌が刊行されて、盛り上がっているようにしか見えなかった。だから、その後すぐにバブル崩壊→冬の時代の訪れになるとは思えず、無邪気に未来を夢見ていられたわけだな」

晶華「NOVAちゃんがSNEにお世話になった翌年に阪神・淡路大震災があって、その後、D&D版権元のTSRの倒産とか、日本のTRPG雑誌の相次ぐ休刊とか起こって、何だかNOVAちゃんが厄病神みたいな形じゃない」

NOVA「シクシク。そんなことを言うなよ。後から振り返ると、いろいろ間が悪い時期に入ってしまったな、と思うわけだが、そんなことはSNE社長にしても予想できないわけだからな。社長の思惑としては、角川お家騒動が収束してゲームに理解のある(ロードスやソード・ワールドのプロデュースの経営面での立役者でもある)角川歴彦氏が帰り咲いて天下をとった93年から94年の流れで、これからますます仕事が増えると判断して、新入社員募集に踏み切ったんだろうからな」

ヒノキ「で、その時期にきちんと育った人材が、北沢慶氏であり、加藤ヒロノリ氏であり、川人忠明氏である反面、負け組になって在野に下ったのがお主だったわけか」

NOVA「シクシク。まあ、川人君に負けたのは分かる。当時、マジック・ザ・ギャザリングを何度かやって一勝もできなかったからな。これでも友人との間では、それなりに強いデッキを組んでいたのに、そういう戦術は全部通用しないんだ。まあ、ここで俺が川人戦術に対抗する戦術を生み出すぐらい執着していれば、また違う結果になったかも知れんが、どうも俺はゲーム好きだけど、勝ち負けにはあまりこだわらない。負けても楽しめたからいいや、ぐらいに思ってしまう奴だった。勝つために戦術を研究するというよりも、『へえ、こんな戦術があるんだ。面白いな』と多様性に面白さを見出して、勝ち負けは二の次。どちらかと言えば、趣味デッキをあれこれ構築するタイプ」

ヒノキ「その辺は、今も変わっておらんようじゃの。真っ向からぶつかって勝つよりも、いかに場をかき回して相手の混乱を招くか、という戦術を仕込んでくるトリックスター風味というか」

NOVA「いや、それはあくまで文章書きのスタイルであって、ゲームだったら正面突破の王道スタイルが好きなんだよ。それで勝てないと判断して初めて、いろいろ仕込もうとするタイプ。基本は内向的でクソ真面目なキャラだったから、加藤ヒロノリのような豪快かつ下品なタイプとは噛み合わないと思ったりもしたけど、俺と似たタイプだと当時感じていた杉浦武夫君が加藤君の相方としてモンコレのサポートを続けているし、今ではロードスでも川人君のサポートを続けているのを見ると、頑張れとエールを送りたくなる次第だ」

晶華「NOVAちゃんと同じタイプの人が活躍していると、自分の代わりに頑張ってもらえていると思えてくるってこと?」

NOVA「まあ、俺よりも杉浦君の方がサポーター向きというか、緻密な軍師って感じだけどな。俺じゃ加藤君の相方は絶対に務まらなかっただろうし。大雑把すぎる加藤君のアイデアをきちんと検証し、機能するようにまとめるのが杉浦君の役割で、これで豪快かつ緻密なシステムが生まれる。そこで経験値を積んでいるのだから、今の杉浦君は今の俺とは違う成長を果たしているはずだろうし」

晶華「今のNOVAちゃんはどんな役割が果たせるの?」

NOVA「そりゃ、好きなものを楽しく語るファンとしての役割だろう? ゲームはプレイしたいけど、作りたいとは思わないし。ともあれ、話が違う方向に展開したけど、90年代後半に若手と言われた人たちや、その後に入社した田中公侍さんなどの作り出した世界がラクシアということになる。ソード・ワールド誕生20周年というタイミングでな」

 

ラクシア誕生

 

晶華「ラクシア誕生は、ソード・ワールドの20周年ということね。そして、今の2.5は30周年という形。だったら10周年の時は何かやったの?」

NOVA「当時は、1999年でTRPGの冬の時代とも言われていたが、その辺りで記念作品があるとしたら、やはりこれじゃないかな」

ソード・ワールドRPG 完全版

ソード・ワールドRPG 完全版

 

ヒノキ「ロードスは角川版権だったはずじゃが」

NOVA「そう、90年代半ばには角川が ロードスのゲーム展開も主導していたが、冬の時代でまた撤退し、やはりゲーム関連は富士見に一任する形になって、その隙間の時期にソード・ワールドとロードスをしっかり絡み合わせることができたわけだ。

「流れとしては、ロードスおよびD&Dのゲーム展開をSNEができなかった時期に、そこから生まれて、どんどん発展したのがソード・ワールド。そして90年代半ば辺りに、ロードスのゲーム展開を角川が行ったりもしたけど、90年代後半のサポート雑誌休刊であっさり撤退。それがあったからこそ、ソード・ワールドとロードスを一つにまとめるサプリメントが出せたということになる」

晶華「ある意味、これが原点回帰とも言えるわね」

NOVA「ソード・ワールドでロードスがプレイできるということは、角川がロードスRPGを切り捨てたという背景事情がなければ実現できないからな。まあ、俺としては、この作品は『やったね』の一言なんだが。と言うのも、俺がSNE入社試験で提出した作品の一つが『ソード・ワールドinロードス』という名のリプレイだし、公式で俺がやりたい、あるいは見たい物を作ってくれたのは嬉しいじゃないか。

「他に『ユニコーンの探索』の私的リプレイ小説とか、友人たちと作っていた『Light Feathers』というタイトルの同人雑誌とかを提出して、後から友野さんに下手くそだったとからかわれたのもいい思い出だった。厳密には、友野さんから直接言われたのではなく、社長から『友野がそう言っていたから、まだまだ精進しないとな』と間接的に聞かされたかもしれないが、まあ、俺にとっては発奮させるいい刺激になった。何よりも、お二人が俺の下手くそな素人作品をきちんと読んでいたことが伝わったわけで」

 

NOVA「ともあれ、21世紀に入る前後の一時期、SNEはTRPGから撤退し、流行物のトレーディング・カード・ゲームの『モンスター・コレクション』を主要商品に切り替えた。それでも、完全撤退したわけではなく、『ソード・ワールド』の展開は継続していたし(初心者向きに仕切り直したり、カードRPGという形に組み合わせたり)、新しい形のTRPGを模索していたりした。実際、この撤退はSNEが決めたわけじゃなくて、主要TRPG雑誌の多くが廃刊したり路線変更した状況で、サポート継続が非常に困難だった実情を踏まえての経営的判断だったんだが、TRPG好きの俺としては、相当がっかりしたわけだな」

ヒノキ「で、その時期のTRPG業界を主導したのが、FEARさんになっていくと」

NOVA「東のFEAR、西のSNEと言われた時代が、21世紀の15年ぐらいまでだな。まあ、他にもホビージャパンとか、冒険企画局とか、いろいろな組織がTRPGに限らず、アナログ業界を引っ張っていくわけだが、その中でソード・ワールド一強だった文庫RPG業界に踏み込んで行ったり、新規開拓を成し遂げたFEARさんの功績は計り知れない。俺としても、ソード・ワールド2.0登場前はFEARさんの作品や、ホビージャパンのD&D3版に浮気しまくっていたわけだし」

ヒノキ「21世紀のスタンダードRPGと自称した『アルシャード』とか、MMOの要素を取り込んだ『アリアンロッド』とかか」

NOVA「ああ。80年代から90年代にかけて『洋風ファンタジーの剣と魔法の世界』を日本に定着させたロードスおよびフォーセリアの功績は大きいが、21世紀に入る頃合いだと、当時一世風靡したファイナルファンタジーなどが剣と魔法にこだわらず、『より近未来的な銃と機械を取り込んだハイブリッド・ファンタジー』の路線を提示するようになる。既存のソード・ワールドだと、そういう要素は再現できない。だから、ソード・ワールドが時代遅れと見なされるようになったわけだ」

晶華「でも、そこですぐに2.0を始動させずに、8年もかけたのはどうして?」

NOVA「これは90年代終わりから言われていたんだけど、水野さんがソード・ワールドの歴史の針を進めることを主張していて、安田社長は現状の『針の止まった世界の維持』を主張していたことがあったんだ。つまり、水野さんは小説を書く都合から歴史を進めたいと考えていて、安田社長はゲームとしてのブランドを固定させるために大きな変化をさせたくない、という意見。結局、21世紀に入っても、しばらくは伝統的ファンタジー世界としてのソード・ワールドを大きく変えずに維持したまま、他の流行要素は『六門世界』とかアラブ風ファンタジー世界の『ゲヘナ』とか違うゲームで取り込んでいく流れになった」

ヒノキ「TRPG業界から撤退していたのではなかったのか?」

NOVA「2003年に新紀元社から『Role&Roll』誌が出版される辺りで方針が切り替わったんだよ。ソード・ワールドのサポートも富士見だけでなく、こちらでも精力的に為され、現在も継続している。安田社長曰く、『雑誌サポートがしっかり為されている業界には未来があるし、そこを出版社の思惑で翻弄されると続けられない』ということで、いろいろ足場固めに奔走していた時期だったわけだな」

Role&Roll Vol.185

Role&Roll Vol.185

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 新紀元社
  • 発売日: 2020/02/22
  • メディア: 大型本
 

NOVA「なお、90年代末期から21世紀初頭は業界再編の動きが盛んだったこともあり、水野さんは小説執筆に専念するために、ゲーム会社であるSNEとは距離を置く選択をとり、その後も社友として提携は続けるけど、ゲームにはタッチしない形。

「また、初期のソード・ワールドの立役者の一人であった山本弘さんも自身のSF作家としてのキャリアや、と学会会長としての交友を優先するためにSNEを退社して、初期メンバーで残ったのは清松みゆきさんだけとなった。

「実質、今のSNE副社長が清松さんで、専務が友野さん、開発部長が北沢さんみたいなものじゃないかな。まあ、そういう役職は設けていないアバウトな社風なんだろうけどね」

ヒノキ「この辺は、FEARさんの方がしっかりしている感じじゃの。あそこは、社長が鈴吹さんで、副社長が菊池さんという路線じゃったはず」

NOVA「開発部長とか、営業部長とか、しっかり役職は設けているものな。一方、SNEは個人企業の集合体といった感じで、クリエイターそれぞれが自発的にアクティブに動いている印象がある。とりわけ、ツイッターで動向を追っていると、SNEの名前でなく、自分の名前でコンベンションを企画して、そこでSNEの若手メンバーやボランティアを募っていたり、ただの執筆以外の地に足ついた営業やファンサービスにも力を注いでいるのが分かるわけで、うわあ、この人たち、頑張っているなあ、と頭が下がる思いだ。まさに好きじゃないとやってられない世界がここにあるし」

晶華「今回は、ゲームの背景世界の話じゃなくて、ゲームを作る会社や業界の背景世界の話になっているよね」

NOVA「結果的にそうなったよなあ。それで、話を戻すと、どうしてラクシア登場が2008年になったかと言えば、水野さんがフォーセリアの物語を小説で完結させるのを待っていた、というのが大きいな。それまでは、フォーセリアを切り捨てるわけにはいかない出版社側の事情を汲んでいたわけだよ。フォーセリアは水野さんのものという契約もあるし、そこに新世界ラクシアをプッシュして対立させるわけにもいかない。

「だから、『新ロードス島戦記』が2006年に完結し、アレクラスト大陸の勇者漫遊記の形となった『魔法戦士リウイ』が2009年に雑誌連載完結の見込みができた(単行本としては2012年に完結)タイミングで、ソード・ワールド新展開としての2.0が発表された形になる。つまり、水野さんがフォーセリアの物語を完結させた(クリスタニア除く)頃合いで、作家側も出版社側も、もうフォーセリアに未練を残さない段階で、ラクシアに切り替わったということになる」

ヒノキ「実際のファンとしては、新たな世界ラクシアに期待半分、不安半分の目で見ておったがの」

NOVA「俺は期待していたけどな。旧ルールや旧世界が閉じた世界やシステムだったのは明らかだし、それでよく20年も続いたなあ、と感じてもいたわけで。旧ソード・ワールドは武闘家もいないし、機械もないし、そういう昔のスタンダードでは欠けていたものをどんどん取り込む貪欲な姿勢を評価したかったわけだよ」

ヒノキ「そういう要素は『アルシャード』のパクリじゃないか、とバカにする者も多く見られたではないか」

NOVA「アイデアのパクリそのものを、俺は否定しないがな。問題は、そのアイデアをどう料理して形にして、継続させられるかであって。元ネタもアルシャードじゃなくて、ファイナルファンタジーや、D&Dのエベロンだと言い張ることもできるし、アイデアの伝播と一般化の流れをきちんと見守るなら、世間の流行に完全に無頓着な方がセンスの古さを問題視される。まあ、俺としてはパクリ云々という議論は好きじゃなくて、文化交流とか伝達の歴史を研究する方に興味があるわけだ」

晶華「『アルシャード』や『アリアンロッド』と、『ソード・ワールド2.0』の比較記事ってのも面白そうね」

NOVA「まあ、ハイブリッド・ファンタジーの先行作と、初代和製スタンダード・ファンタジーの継承者がそれぞれ何を取り込み、どこで異なった要素をプッシュしたかの比較考察は、そのうちやりたいけど、すぐにはできないよなあ。とりあえず、今回はラクシア登場までの作り手側の背景事情を、俺の知る範囲で語ってみたわけだ。だから、最初は記事名にも2と番号付けはしたけど、結局は2に至らない1.5がふさわしいかな」

晶華「じゃあ、本格的にラクシアの話をするのは、次ってことで」

 

(当記事 完)