龍虎共闘
風雲急を告げる、屋久島の地。
そこでは3体のGが生死を掛けた闘争を展開していた。
1体は、宇宙に飛ばされたG細胞が結晶生物と融合し、異常進化を遂げたスペースG。
対する1体は、G細胞の主であり、地球を守る決意を秘めた怪獣王の老いし眷属セイリュウ。
そして、さらなる1体。スペースGの体内結晶に囚われながらも、今なお抗い続ける怪獣王の息子リトル。
3体のGの思い乱れる戦場に、白き乱入者あり。
かつてはリトルシーサーと呼ばれ、父の仇を討つべく忍びの鍛錬を受けし幼き乙女シロ。
しかし、屋久島に眠る大地の力で急成長した彼女は、女であることを捨て、荒ぶる野獣の皇子プリンスシーサーとして覚醒した。
父の仇と信じたセイリュウの真意を知り、私怨よりも大義に目覚めて、宇宙からの侵略者に立ち向かうシロ、いや白虎の戦いが始まる。
スペースG「野獣の皇子(プリンス・ビースト)と言ったか。貴様の怨念、確かに感じるぞ。貴様の父親キングシーサーは、かつて、そこなるセイリュウに殺されたそうだな。ならば、我とそなたの目的は同じはず。我がそなたに力を与えよう。今こそ積年の仇討ち、果たすがいい」
白虎「見損なうなよ、スペースG。確かに、心身ともに未熟な頃のオレサマだったら、お前の誘惑に乗っていたかも知れねえ。だが、今のオレサマはガイア様の使徒、昔話はガイア様から聞いた。宇宙からの侵略者に操られ、裏切ることとなったのは親父の方だってな。セイリュウは地球を守るため、やむなく親父を倒したんだ。それなら、親父の仇はセイリュウじゃない。宇宙からの侵略者の方なんだ。そして、スペースG。お前はセイリュウの分身にして、宇宙怪獣。オレサマの仇討ちの的として、ちょうどいい。ガイア様から授かった力を試させてもらう」
スペースG「面白い。大地の力は、Gの力と同様、我が狙いしもの。そなたを倒して、その力を吸い尽くしてくれるわ!」
セイリュウ「気を付けよ、シーサーの子。スペースGは、超能力戦士サイキック・ソルジャー。念力を操り、周囲の物体を操作することができる」
スペースG「くらえ、クリスタル・テンタクル!」
白虎「うおっ(回避)。フッ、当たらなければ、どうということはねえ……と言いたいが、触手状の結晶がああもうねうねしてたんじゃ、迂闊に近づくこともできねえな。師匠、何か手はねえのか」
セイリュウ「奴の弱点は、肩から突き出した結晶体。それを破壊すれば弱体化させられるが、飛び道具にはバリアを張られ、格闘戦に持ち込もうにも接近を許さない。おまけに奴の体内には、息子のリトルが捕らわれているため、強力すぎる攻撃を放てない」
白虎「すると、オレサマの超スピードでかく乱しながら、隙を作って、その隙にあんたが接近。力でねじ伏せるってのはどうだ?」
セイリュウ「いいや。わしが盾になって、奴の攻撃を全て受け止める。その隙を突いて、お前がリトルを奴の体内から救出してくれ。リトルさえ助け出せれば、とどめはわしが刺す!」
白虎「分かった。リトル救出は任せてくれ。それに、師匠一人を盾にはさせねえ。まずはオレサマがかく乱してからだ」
セイリュウ「良かろう。サイキック・ソルジャーを倒すには、忍びの極意・風林火山が有効と聞く。一人では困難だが、我ら二人なら奥義を発動することもできよう」
白虎「分かった。風林火山だな。行くぞ。疾きこと風の如く!」
スペースG「愚かな。いかに速くとも、真っ直ぐ突っ込んで来るとは! 結晶触手の餌食にしてくれるわ!」
白虎「長年の修行で身につけられなかった技。しかし、今なら使えるはず。忍びの奥義・影分身!」
スペースG「何? 触手がすり抜けて行く? 残像だと? もしや、バルタンやガッツと同じ技を使う奴が地球にいようとは」
白虎「今だ。奴のサイドから回り込んで……」
スペースG「ムッ、本体はそこか! うまく背中に回り込もうとしたようだが、尻尾で粉砕してくれる!」
PON!
小さな閃光とともに消失す!
スペースG「消えただと?」
白虎(ヘッ、翔花譲りの技だ。花粉分解とは違うが、目くらましの閃光と忍びの遁術の組み合わせ。このまま、静かなること林の如しで、潜み続けてやるぜ)
セイリュウ「でかした、シーサーの子よ。今こそ突撃の時。侵掠すること火の如く! うおおおおおおお!」
紅のセイリュウ
スペースG「何? 小さいのにかまけている間に、接近を許しただと? だが、愚か者め。隙だらけだぞ。クリスタル・テンタクル! (グサグサグサッ)」
セイリュウ「グオオオオッ! 何のこれしき! 動かざること山の如し! 全ての触手はわしが食い止めてみせる!」
スペースG「何? まだ近づいて来るというのか? こやつ、不死身か?」
白虎(師匠の全身が紅く発光している? 何て威圧感だ。普段のセイリュウは青き龍だが、本気を出した師匠は、アリナ様のような赤い炎を身に宿すというのか? ガイア様に授かった力で、オレサマは強くなったと思ったが、こんな状態の師匠に勝てるとは思えねえ。しかし……ここまでの力を発揮して、師匠の体は大丈夫なのか?)
スペースG「ええい、放せ! 放さぬか! グッ、がっちりしがみ付かれて身動きがとれん」
セイリュウ「今だ、シーサーの子よ。リトルを頼む」
白虎(了解だ。リトル、どこにいる?)
リトル(ここです、シロさん)
白虎(背中か。ならば、肩の結晶体を壊した後に引きずり出せばいいんだな。だったら、あの技の使い時! 体内に蓄えた電磁力を全て使うことになるけれど、迷ってはいられない。行くぞ、必殺サンダークロー・スピンドリル!)
スペースG「何? 足元の地面から何かが飛び出した?」
身を潜めていた地面の穴から、白虎は電磁回転しながら飛び出した。
その勢いのままに、スペースGの両肩の結晶体を破壊し、さらに背中に封じられたリトルの幼き体を引きずり出す。
セイリュウとの修行で習得した必殺技のサンダークロー・スピンドリル。
相手の弱点を的確に貫いたのは、忍びの精確さゆえ。
体内の人質を傷つけることなく救い出せたのは、料理人の精密さゆえ。
どちらが欠けても、この偉業は達し得なかったと言えよう。
今ここに、シロの長年の修行が結実したのであった。
白虎「師匠! 御子様は救出しました!」
セイリュウ「かたじけない、シーサーの子よ。いや、新たなシーサー。最後の願いだ。リトルを運んで、この場より避難してくれ」
白虎「避難だって? どういうことですか、師匠? 今なら、スペースGの奴にとどめを刺すことぐらい、訳がないはず」
セイリュウ「……限界なんだよ、わしの体がな。メルトダウンの時が近づいている。ここにいると、爆発に巻き込まれるぞ。わしの時代は終わった。だが、嘆くでない。我が想いは、我が子と……弟子のお前に託した。新たな時代は、お前たち若者が作ってくれ。さあ、行くのだ。若きビャッコよ。リトル・セイリュウと共に!」
白虎「そんな、師匠! オレサマ、いやボクは、まだ師匠から教えてもらいたいことがたくさんあります」
セイリュウ「そんな顔をするな。わしは多くの命を奪った大罪人よ。それが子供たちと、この大地を守るために、戦うことができた。それだけでも幸せというものよ。ガイア様の御許に旅立つ時が来た。さあ、手遅れになる前に、今すぐこの場を去れ。時間がない!」
白虎「うわああああッ! 師匠ォォォォッ!」
シロは、意識を失ったリトルを抱えて、走った。
疲労はたまり、持ち前の速度も鈍ってはいたが、できるだけ遠く、哀しみの源から離れようとした。
そして……
ゴジラvsデストロイアbgn27 エンディング音楽 ゴジラテーマbgn組曲
遺された者たち
リトル(ん? ぼくはどうなったの? 父さんは……ああ、分かったよ。強く生きろってことだね。うん、ぼくは父さんの子だもん。覚悟はしてた。ぼくを助けるために戦ってくれて、ありがとう。本当は……父さんの代わりに、ぼくがって思ったけど、そんなことを言ったら、父さんの覚悟が無駄になる。だから、ぼくは泣かないよ。強く生きるから)
白虎「ぐすっ、師匠。ボクが力不足だったせいで……」
リトル「そんなことはないよ、シロ兄さん」
白虎「ん? お前、リトル、気が付いたのか?」
リトル「シロ兄さん、泣いてるの?」
白虎「え、ななな、泣いたりするもんか。オレサマはキングシーサーの子、リトル……じゃなかった、プリンスシーサーなんだからな。皇子はすぐに泣いたりしない。うん、強く生きるって誓ったんだ。父さんにも、師匠にもな」
リトル「くすっ。そうだね、シロ兄さん。ぼくも父さんに誓ったんだ。大地を守る使命を継ぐことをね。だから、これからよろしく、シロ兄さん」
白虎「あ、ああ。師匠の息子のリトルは、オレサマが守ってやる。お前は弟みたいなものだからな。それより、これからどうしようか? スペースGは倒したけど、翔花の奴は何をやってるんだろうな。結局、戦いに間に合わなかったじゃねえか」
リトル「いや、たぶんスペースGはまだ生きている。爆発で体は四散したけど、全ての結晶を焼きつくさないと、また復活してくる。G細胞はしぶといからね」
白虎「……お前、まだ小さいのに、しっかりしているな」
リトル「シロ兄さんだって、しっかりしているじゃない。ぼくみたいにリトルだったけど、厳しい修行もいっぱいして来たみたいだし」
白虎「そうじゃない。オレサマは、父さんの死を受け止められなくて、自分の中に引きこもったんだ。深い眠りについて、時間を無駄にした。だから、肉体の成長も止まってしまって、先に進むことができなかった。目覚めた後も、敵討ちのことしか考えられなくて。アリナ様やゲンブ、それに翔花がいなければ、オレサマは使命なんて考えられなかったし、今だってそうさ。自分が何をしたらいいのかさえ、よく分かっていない。導いてくれる人が必要なんだ」
リトル「ぼくは逆だよ。何をしたいかは分かっているんだけど、弱くて力がない。したくてもできないんだから、誰かに助けてもらわないといけない。だから、シロ兄さんが羨ましい」
白虎「ああ。だったら、オレサマの力は誰かを助けるためのものなんだろうな。誰かのためにスイーツを作ったり、情報を集めたり、買い物をしたり、ボディガードを引き受けたり、そう、それが忍びってものだ」
リトル「スイーツを作るのが忍び?」
白虎「そういう忍びもいるってことだよ。今の世の中には忍者カフェというものがあってな。忍者たるもの、食堂も経営できないといけないし、琉球で海の家を開いたり、歌ったり踊ったりするのもありなんだ」
NINJA Café & Bar Official Video
リトル「忍者って凄いんだね。ぼくだって頑張れば、忍者になれるかな」
白虎「ゴジラと忍者で、検索するとこんな物が出てきたんだが」
【GEMSTONE ゴジラ 応募作品】「NinjaGODZILLA」
リトル「何だかよく分からないけど、忍者怪獣ってのもいろいろいるみたいだし、ガイガン忍法・生き返りの術なんてものもあるんだから、ゴジラの眷属が忍法を使ってもいいよね、きっと。答えは聞いてない」
白虎「忍者の余談はさておき! スペースGがまだ生きているって言ったな。確かなのか?」
リトル「うん。奴の波動を感じるんだ。だいぶ弱っているけど、放っておくとまた蘇る」
白虎「……だったら、きっちりトドメを刺さないとな。今から行ってくるから、お前はここで待っているんだ」
リトル「ぼくも行く。足手まといかもしれないけど、奴の気配を感じられるのは、ぼくだけだと思うから」
白虎「仕方ないな。お前の足に合わせてやる。そこまで歩けるな」
リトル「うん。ありがと、シロ兄さん」
虚空の渦
リトル「シロ兄さん、あれを見て」
白虎「何だ? 地面から光が立ち上っている?」
リトル「たぶん、父さんの力の痕跡だ。G細胞に蓄積された残留エネルギーが渦巻いているみたい。あの力を継承すれば、ぼくも父さんみたいに……」
白虎「オレサマが言えた話じゃないが、未成熟なお前が過ぎたる力に溺れたら、身の破滅を招きかねんぞ」
リトル「うん。だけど、あの力を放置していると、屋久島の結界が破られてしまうかもしれないし、スペースGの復活を早めるかも」
白虎「どっちにしろ、放置はできないってか。だったら、お前が吸収できない分は、オレサマが助けてやる。雷電吸引の極意は学んだからな。それでも無理なら……ガイア様に何とかしてもらうことにする。さあ、少し急ぐぞ」
リトル「うん」
スペースG「グハハハハ。今ごろ、のこのこやって来おって」
白虎「何だと? スペースG、てめえは復活するのが早すぎるだろう!」
リトル「そんな。本当は、父さんの遺した力をぼくが吸収して、成長するはずだったのに」
スペースG「当てが外れたようだな。自爆したセイリュウの力は、我が全ていただいた。そして残ったそなたらの力も吸い尽くし、我が究極破壊神として君臨するのだ」
白虎「そうはさせない。師匠の力を、お前みたいな悪党に好き勝手させるものか!」
リトル「ぼくだって、Gの眷属なんだ。セイリュウ・ジュニアとして、父さんの力を返してもらう!」
スペースG「フン。そなたたちのような疲弊した小僧どもに何ができると言うんだ。喰ぅらえ、スペース・コロナ・ビームッ!」
白虎「クッ、そんなものに当たるか!」
スペースG「いいのか、避けて? お前が避けると、後ろのガキにビームが直撃するぞ」
白虎「しまった。ならば、雷電吸引!」
スペースG「何? ビームを受け止めただと?」
白虎「オレサマに光線技は通用しない!」
スペースG「ほう。だが、いつまで耐えられるかな? さらに威力を増したスパイラルゥ・コロナ・ビームッ!」
リトル「こ、これは……父さんがかつてスペースGを倒した技、バーンスパイラル熱線を応用したもの。いけない、シロ兄さん、避けて!」
白虎「いいや。約束したろう? リトルはオレサマが守ってやるって」
スペースG「グハハハ、死ねぇ」
虚空よりの声「大丈夫。シロちゃんは死なせない。私とNOVAちゃんが守るもの」
スペースG「何だ、この声は?」
白虎withブルーアイズ・ダミー「ヘッ、ようやく登場かよ、翔花。遅すぎるんだよ」
スペースG「何? 野獣の皇子の顔に、青いメガネがいつの間にか装着されているだと!?」
白虎「この魔力に満ちたメガネさえあれば、オレサマにも親父の技がきっと使える! シーサー流奥義ブルー・プリズム・フラッシュ!」
解説しよう。
キングシーサーは、敵の放った光線を右目から吸収し、威力を10倍にして発射するプリズム光線という特殊能力を持つ。
しかし、まだキングではない白虎は、その技を習得していない。
それでも、White NOVAが娘の翔花に託した青メガネ、ブルーアイズ・ダミーのサポートを受けることで、擬似的にプリズム光線を放つことができるのだ。
それこそ、青い閃光ブルー・プリズム・フラッシュ。
これによって、スペースGのスパイラル・コロナ・ビームは、10倍の威力で反射されたのだ。
スペースG「グハァァァァッ! バ、バカな。たかが一つのメガネごときに、我が熱線が反射され、これほどのダメージを受けるなど!」
虚空よりの声「たかが一つのメガネごときですって? 聞き捨てならないわね。恐れ多くも、このブログ時空の管理人にして作者の汗と涙の結晶たるメガネ……のコピーよ。その言い草は、天に唾吐く無知蒙昧な暴言と心得なさい!」
スペースG「何? 虚空の光より舞い降りる眩き影? 胡蝶の羽根をまといし天使のような少女だと? まさか、これが時空を超えし守護神獣、怪獣の女王(クイーン・オブ・ザ・モンスターズ)とも称されし永劫螺旋の不滅巨蛾、モスラの力とでも言うのか?」
「時空を翔ける精霊少女・粉杉翔花、ここに降臨!」
(当記事 完。「新・屋久島編その6 虹粉乱舞」につづく)