花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

令和の光(新・屋久島編その3.5)

ガイア・オブ・レイワ

 

謎の声(獣の巫女よ、目覚めなさい)

シロ「は、寝坊した?  このビャッコともあろうものが、一生の不覚。アリナ様、すぐにスイーツを作りますので、しばしお待ちを……って、アリナ様がいない?  ここはどこだ?  ボクに話しかけるこの声は誰だ?  ボクはどうなったんだ?」

謎の声(まずは落ち着いて、私の話を聞きなさい。キングシーサーの子リトルシーサーよ。我は古き大地の精にして、命を生み育む者。大地母神ガイアと呼称されております)

シロ「ガイア?  確かクロノスの母にして、ゼウスの祖母に当たる存在ですよね」

ガイア(おお、よくぞ分かってくれました。そなたの相方である我が遠き孫娘は、ウルトラマンとか六神合体とかボケたことを口にしましたが、そなたは博識なようです)

シロ「情報収集はシノビの鉄則。それに古今東西の神話学は、アリナ様からきちんと教えていただきましたから」

ガイア(さすがは南郷阿里と言うべきですか。白き新星よりも、きちんと娘を教育しているようです)

シロ「ここは神の御許……ということは、ボクは死んだようですね。使命もろくに果たせずに。ボクは自分の未熟さが許せない」

ガイア(いいえ、死んではおりません。セイリュウは確かに、そなたの電撃を弾き返して重傷を負わせたものの、殺しはしていません。ここは単なる精神世界。今のあなたは思念体。思念体だから……死ねんたい。だから安心を)

シロ「今のギャグを聞くかぎり、安心していいかどうかは分かりませんが、とにかくセイリュウはボクを殺さなかった。ボクはまだ戦えるってことですね」

ガイア(ええ。あなたはまだ戦える。そのための力を私が授けましょう)

シロ「え?  セイリュウを倒すのに協力してくれるのですか?」

ガイア(違います。私が授ける力は、セイリュウを倒すための力ではありません。この大地を守るための力なのです。そなたは、力を使う目的をもう一度、見つめ直さなければなりません)

シロ「力の目的……」

ガイア(そう。時代は移り変わり、平成から令和になった。この新時代の力を受けて、私も平成ガイアから令和ガイアとして神力、霊力を新たに補充できた。だから、そなたにもその力で真実を見せることができるようになった。今こそ伝えましょう。そなたにファイナルウォーズの真実を)

 

 父の真実

 

 

シロ「バカな。父さんやアリナ様はエイリアンXに操られ、地球を破壊する尖兵になっていたと言うのか。そして、地球を守るためにセイリュウが戦って、カイザーギドラを倒した。正義はセイリュウにあった、と」

ガイア(そう。あの戦いで地球のために戦った怪獣は、ゴジラモスラのみ。そして、セイリュウゴジラの眷属として、この屋久島の地でモスラの眠りを守る役割を務めていたのです)

シロ「アリナ様はどうして、ボクにその真実を伝えてくれなかったのでしょう?」

ガイア(セイリュウに口止めされていたのです。セイリュウとて正義一辺倒の男ではなく、多くの命を殺めて、その魂は光と闇、善と悪との間で揺れ動き、迷い惑う葛藤を経験して来ました。並のモンスター以上に、セイリュウの中では複雑な思念が渦巻き、そして複数の分体を生み出して行ったのです。セイリュウは一体ではない。時流の中で、人類に味方する者もいれば、破壊の限りを尽くす者もおり、またセイリュウの中から生まれたスペースGのような紛い物もいる。そのような複雑な背景を持つ男を単純に理解するのは困難。それゆえに南郷阿里、スザクはそなたに事実の断片だけを伝えたのでしょう)

シロ「つまり、父がセイリュウに殺されたという事実のみを。殺された理由は伏せたままで」

ガイア(それを語ると、琉球の守護神であるシーサーが悪堕ちしたという不名誉を語ることになりますからね。幼子に話すには重すぎる話です。それに、セイリュウ自身がスザクに『憎まれ役を演じるのは自分だけでいい。このわしが罪に塗れているのは事実だからな』と告げたそうです)

シロ「自ら、悪役を買って出たですって?  どうして?」

ガイア(そなたの父、先代ビャッコは、死ぬ間際に遺した子のことを気に掛けておりました。生き残ったセイリュウとスザクに、そなたの行く末を託すべく頼んだそうです。しかし、セイリュウ『父親を殺したわしが、その子を育てることはできん。遺児のことはスザク、お前に任せた。わしとしては、その子が強く生きてくれればいいと願う。わしを倒そうとするぐらいの覇気ある子にな』と告げたようですね)

シロ「それこそがセイリュウという男……」

ガイア(そして、セイリュウは私、ガイアの守護騎士となり、この地に眠るモスラの力を守る役に就きました。私は、その礼として、セイリュウに息子のベビーを授け、ベビーはリトルに成長。老齢のセイリュウと幼き息子は、この地の封印を守りながら、安らかに暮らしていました。しかし……)

シロ「スペースGが襲来した、と言うのですか」

ガイア(襲来というよりは復活した、と言うべきですね。スペースGの起源は、今より25年前の1994年、宇宙に生息していた結晶生命体が、宇宙に飛ばされたG細胞と融合して超越進化した戦闘生命体です。また、その年はGの年とも呼ばれ、異なる世界ではDG細胞という悪魔の細胞が地球を侵食しようとした結果、愛の力で焼滅させられたとも聞きます。神の遺伝子とも称されるG細胞と、悪魔の名を冠するDG細胞は、その後も多元宇宙の各世界で再生を繰り返しながら、その都度、ヒーローやスーパーロボットの力で倒されたりしておりますが、この屋久島の地にも多元宇宙の壁を超えて、スペースG細胞の欠片が眠っていたわけですね)

シロ「それが目覚めた、と」

ガイア(ええ。目覚めた理由は、多くの可能性がありますが、一言でまとめるなら「宇宙エネルギーの活性化」と言えましょう。活動を再開したスペースGはこの地を侵食し、モスラの力を奪い取ろうとしましたが、それを防ごうと戦ってくれたのがセイリュウ。しかし、セイリュウの力も往年の盛時には及ばず、今は大地の侵食を抑えるだけが精一杯。スペースGはセイリュウの子であるリトルを己の領域に誘い込み、G細胞の同族の交信能力を駆使して、世界中に眠る己の同族を目覚めさせて力を集めようとしています。私は屋久島を外界から封印し、スペースGの侵食被害が外に出ないようにしましたが、それにも限界があります。私たちが勝つには、モスラの力が必要です。そのための依代が、大地の精髄を受け継ぎし花の巫女と獣の巫女、つまり……)

シロ「翔花とボクか。どうして、ボクたちなんですか?  そのような大切な話は、ボクみたいな未熟者ではなく、アリナ様や新星さまたちに直接伝えるべきだったのでは?」

ガイア(スザクや時空魔術師は確かに優れた魔力霊力を備えていますが、それでも私の声は断片的にしか届かせることができませんでした。私、ガイアの声をこれほどまで明確に受け止めることができるのは、あなたたちの資質なのです。何故か、と尋ねられたら、幾多の偶然の形をとった運命としか答えられませんが、あなたが今、この時に私と交信できているのは事実。そして、決断と選択は、あなたに委ねられているのです)

シロ「ボクは……父の仇のセイリュウを倒すために、ここまで修行してきたのです。それなのに、『今さらセイリュウは悪くない。悪いのは宇宙人に操られた父で、セイリュウは大地を守るために戦っている』なんて聞かされても、そんな話、納得できるわけがありません。ボクはセイリュウを……」

ガイア(私の力は、守り育むための力。破壊や復讐のために使われるべきではありません。あなたがセイリュウへの憎しみを捨てられないなら、力を授けるわけにはいきません)

シロ「グッ。翔花、ボクはどうすればいい?」

 

花粉症ガールの心 

 

懐かしい声(シロちゃん、呼んだ?)

シロ「え、誰だ?」

声(誰だって、ひどいな〜。私だよ、花粉症ガール1号の粉杉翔花)

シロ「翔花だって?  どこから話しているんだ?」

翔花(う〜ん、未来のどっかとしか言えないなあ。ヒヒヒお祖母さまのガイアちゃんの力で、過去に飛ばされた、と思ったら、いつの間にか2121年にいたりして仮面ライダーキカイなんてのに出会ったり、紀元2万年って時代の地球に飛ばされたりして、大変だったんだから。『花粉症ガール翔花の時空大冒険』というタイトルで、文庫本10冊以上の大冒険ネタが書けるんじゃないかなあ)

シロ「紀元2万年って、どういう時代なんだよ」

ガイア(おそらく、怪獣惑星ですね)

GODZILLA 怪獣惑星

GODZILLA 怪獣惑星

 

シロ「怪獣惑星?」

ガイア(人類がゴジラにほぼ殲滅されてしまい、地球の生命体のほとんどが G細胞に侵食されて、ゴジラ・アースが地球の守護者として君臨しているIF未来です)

シロ「何ですか、それ。G細胞に支配された世界って?  人類はどうなったんです?」

ガイア(宇宙へ脱出した者もいれば、モスラの加護で生き延びながら細々と原始部族の生活を営む民もいます。そして、地球人と異星人ビルサルドの科学技術の結晶であるナノマシンの残骸がメカゴジラ・シティと化したり、滅びの神とも呼称される高次元怪獣ギドラが襲来したりしながら、地球の覇権と文明の末路を描く未来の物語。その中で命の営みはどうあるべきか、復讐と破滅のドラマが展開されるわけで)

シロ「そんな未来をボクは望みません」

ガイア(スペースGが目指すのは、あるいはDG細胞がもたらすものは、そういう世界だと予想されます。多様性を失い、一つの完璧な細胞遺伝子だけが、世界を席巻した未来。進化の頂点に立った生命、あるいは同種の人工システムが、他を排除して永遠の秩序をもたらす未来と言えましょうか)

シロ「だったらセイリュウは?  G細胞が絶対的強者なら、奴もスペースGと同じことを考えているんじゃないですか?」

ガイア(否、とは言えませんね。生命の歴史は、適者生存、弱肉強食、収奪と共生が複雑に連鎖して続いてきたもの。環境に適応できない者、弱き者、生態系の絆から逸脱した者は、滅びるのも必然。優しさだけでは生き残れません)

シロ「だから強くなれって言うのか。戦って戦って、その先の頂点を目指す。それこそGファイトの道」

ガイア(キトラルザスの道と呼べるかもしれません)

シロ「それって、確かシンカリオンだっけ?」

翔花(う〜ん、それも一つの真理なんだろうけど、大切なことはそれだけじゃないと思うんだよね)

シロ「どういうことだ、翔花?」

翔花(私には難しいことがよく分からないんだけど、適者生存も弱肉強食も機械的な心を持たないシステムでしかないと思うんだ。私たちには心がある、言葉がある、想いを伝えて理解し合える知恵がある。自分と異なる他人を思いやれる愛情がある。だから、ロイミュードだって仮面ライダーになれるんだし、怪獣だってヒーローみたいに人類と共闘できるんだし、自分の命よりも大切なもののために命がけで戦うこともできる。愛のない強さじゃ、倒れても立ち上がることもできないし、前よりも強くなれないんじゃないかな)

シロ「愛か。ボクにとっての愛って何だろう?」

ガイア(シーサーにとっての愛ですか。この歌はどうでしょうかね)


King Caesar Tribute

 

シロ「ミヤラビの祈りですか。父さんの眠りを呼び覚ませた歌。そうですね。この大地を脅かす敵がいて、ボクの力は大地を守るためにある。セイリュウが大地を守るために戦っているなら、今は古い確執をどうこう言っている場合じゃない。ボクは忍びの修行に励んだ者。忍びに必要なのは、心に刃を乗せて、自分の感情の上に大義を置くもの。そして、この地球を抱き止める、そんなデッカい心が欲しい。誰もみんな幸せに輝いてる未来が欲しい。だから戦うんだ、自分の弱さと。ガイア様、お願いです。ぼくに大地を守る力を授けてください」

ガイア(覚悟はできたようですね。それでは、あなたが会得した磁雷矢の力を覚醒させましょう)


Jiraiya - Op Full (Dj Santiago Bootleg)

 

忍びの影、令和の光

 

シロ「昭和時代の伝説の忍者ジライヤ!」

ガイア(そう、ジライヤは戸隠流第35代宗家。2015年に若手のニンニンジャーに力を貸した後、後継者がスペーススクワッドの一員として、宇宙刑事ギャバンと協力しております。一方で、先代ジライヤこと山地闘破の義理の弟である山地学は、機動刑事ジバンに協力した後、平成初期に1億7000万年の時を超えて、タイガーレンジャー・ボーイに転生したりもしました。一方で、虎といえばダイレンジャーのキバレンジャー・コウが白虎の力を備えた戦士として覚醒。すなわち、昭和から平成にかけて、戸隠流の忍びの系譜は虎の系譜として戦隊ヒーローに受け継がれた後、別の忍びの流派である隠流と合流。忍者と虎と恐竜は今でも相性のいいモチーフとして戦隊に受け継がれているわけですね。そして、令和の時代にはシノビというライダーの活躍する未来もあるとか)

シロ「……ずいぶん詳しいんですね、ガイア様」

ガイア(翔花の時空の旅を見守っていましたからね。忍びの修行を続けてきたそなたには、これより『令和の光』を授けます)

シロ「令和の光?  それは何ですか?」

ガイア(アースの力で戦う星獣戦隊ギンガマンを強化させたのが、ギンガの光。それと同様に、地球が特定の時期に発動する神秘の力の一種。平成から令和に切り替わった今だからこそ発動する『令和の光』。これを浴びれば、大地の育む力でそなたの肉体を急成長させることが可能になります。あたかも、キバレンジャー・コウが子供から大人になったかのように。リトルシーサーのそなたの肉体が急成長して大人になれば、修行で会得した力をフルに発揮できるようにもなるでしょう)

シロ「ボクが大人に?」

ガイア(そう。リトルシーサーから、キングシーサーになる前の前段階プリンスシーサーに覚醒するのです)

シロ「ちょっと待ってくださいよ。ボクは女です。獣の巫女だって言ったじゃないですか。プリンスになれば、巫女とは名乗れません」

ガイア(では、獣の皇子と名乗りなさい。それともプリンセスシーサーを経て、クイーンシーサーへのクラスチェンジを目指しますか?)

シロ「そっちを選ぶと、どうなるんですか?」

ガイア(魔力の能力値が伸びて、いわゆる後衛キャラになりますね。前衛キャラのキングと、後衛キャラのクイーンという設定です)

シロ「設定って、何のゲームですか!  とにかく、クイーンとか魔女ってキャラを目指すつもりはない。ボクは、ボクは……乙女を捨ててプリンスになる!」

ガイア(心配しなくても、男性化するのは戦闘シーンだけですから。普段は幼い少女が、戦う際に急成長して男装の麗人に身をやつすってのは萌え要素ですね。それでは行きますよ!  第二次成長・令和光線!)

シロ「ニャアアアアアアア!」

 

   こうして、シロは新たな自分に覚醒して、プリンスシーサーの姿と能力を会得したのだった。

(当記事 完。「新・屋久島編その4 スペースG」に続く)