花粉症ガール外伝・コンパーニュ記

会話リプレイ形式の「精霊少女や仲間たちの趣味雑談ブログ」。お題はTRPGを中心に特撮・怪獣ネタ成分が濃厚。現在は、ソード・ワールドのミストグレイヴ妄想リプレイ「魔神ハンター」を終了に向けつつ寄り道迷走気味。

燐光一閃(新・屋久島編その3)

落雷の試練

 

   結界に覆われた屋久島の地。

   そこで謎の時空仙人に遭遇したリトルシーサーのビャッコことシロは、強くなるために修行を付けてもらうことになった。

   シーサー奥義・順逆自在の心眼は教えられないが、代わりに雷電吸引の極意を伝授しようと老仙人は告げる。

 

シロ「雷電吸引の極意、それは?」

仙人「うむ。昔、わしは多くの敵と戦ってきた。その中の一人にコングという名の猛者がおった。奴は怪力無双の巨漢で、実に器用な男であったが、飛び道具を持たぬでな。わしの放つ炎には太刀打ちできず、一度はわしに倒されて、すごすごと引き下がりおった。しかし、その後、コングは雷の力を全身に受けて、自らのパワーとしたのだ。そう、雷神のごとく目覚めし奴は、わしと互角に戦って、その勝負は痛み分けとなった。いずれまた決着を付けねばならぬと思いながら、この年まで再戦が能わず仕舞い」


伊福部昭 - キングコング対ゴジラ (1962)


Godzilla vs King Kong oficial 2020

 

シロ「つまり、雷電吸引とは師匠のライバルが生み出した技なのですね」

仙人「そう。だが、わしもその後12年の歳月を費やし、その奥義を我が物とした。琉球の地にて、雷に打たれて修行したわしは、さらに地球に眠る超能力マグネットパワーさえも習得したのだよ」

シロ「マグネットパワー!  それは伝説の完璧超人の奥義ではないですか」

仙人「そう。天の電力と地の磁力、それを合わせて超電磁力に変えて、身に帯びしとき、いかなる攻撃も防ぎ止める電磁バリアを形成する。わしが長年かけて生み出した奥義を理屈で語ればそうなろう。だが、いかなる超絶技とて、それを使う体にガタが来ては反動に耐えられん。今のわしには宝の持ち腐れよ。だから、乙女よ。我が超電磁の秘技はそなたに託そうと思うが、修行に付いて来る覚悟はあるか?」

シロ「強くなれるなら、何でもします!」

仙人「ならば、コングやわしのように落雷に撃たれよ」

シロ「ヘッ?」

仙人「もう一度言う。落雷に撃たれよ」

シロ「そ、それって、普通は死にますよね」

仙人「わしは死ななかったぞ。それに雷の力でパワーアップするのは、ヒーローではよくあることと聞く。手っ取り早く力を得たければ、雷に我が身をさらすことだ」

シロ「し、しかし……」

仙人「もちろん、いきなりとは言わん。自然の雷のパワーは1億から10億ボルトに達するという。わしが最初に浴びた電撃は5万ボルトでしかなかった。それは難なく切り抜けたが、コングと戦った時に受けたのは100万ボルト。さらに、その後、3000万ボルトの帯電ネットを受けて苦しみもしたが、そうやって徐々に体を慣らしたおかげで、落雷をも力に変えられるようになった。乙女もまずは弱い電圧から始めればいい」

 

まずは静電気から

 

仙人「コングが100万ボルトの電圧に耐え、わしが当初は耐えられなかった理由が、乙女よ、分かるか?」

シロ「いいえ。体質の違いか何かですか?」

仙人「うむ。それはコングが毛深い男だったからよ。奴の毛皮は空気との摩擦によって静電気を帯びやすい。静電気を身に帯びることによって、己自身を電気と一体化させる秘技を生み出した。そう、心頭滅却して炎と一体化すれば火に耐え、氷のごとき冷たさを身に宿すことで冷気を物とし、風に逆らわなければ強風をもすり抜け、大地を身にまとわば地震にも耐えられる。己が身を周囲と同じ空にやつさば、周囲のいかなる環境も豈(あに)、障りと為さんや。己を電気と一体化することで、雷撃にも耐性ができる。これぞ忍びの極意と聞く」

シロ「つまり、ボクが電気をまとえば、より強い電圧にも耐えられる。そのためにはどうすれば?」

仙人「走れ。乙女の特性は俊敏な動きにあると見た。ならば、超高速で走ることによって、大気との摩擦が生じよう。そして汗を流せ。汗に含まれるミネラル塩分がイオンとなって、帯電しやすくなろう。そして身に帯びし電気を爪に集中させることができれば、基本技のサンダークローを放つことができよう」

シロ「それは、噂に聞く疾風迅雷の術ですか。試してみます」

仙人「うむ。人の身で両手をこすることでエレクトリックサンダーを発動させた出っ歯な少年もいたし、ウルトラマンスペシウム光線も右手のマイナス、左手のプラスのエネルギーを合わせた荷電粒子の応用と聞く。なればこそ、電気を支配する者は世界を制すと言ってもよかろう」

シロ「分かりました。走ります。疾きこと風の如く、静かなるごと静電気の如く、疾風迅雷の術を身に付けます」

仙人「おお、白い閃光のようにな」

 

稲妻・旋風・返し技

 

   そして三日後。

 

シロ「よし、十分走り込んだ。高速走行により大気中の静電気充電完了。これなら行ける。ハァァァァ……必殺・サンダークロー・スピンドリル!」

仙人「ほう。両手の爪に電流を流し、さらに高速回転で貫通力を増す突撃技か」


Kinnikuman Generations Warsman Finisher


スパロボL コン・バトラーV 超電磁スピン

 

   シロの技により、大木が粉砕された。

 

シロ「師匠、どうですか、今の技は?」

仙人「うむ。わずか3日で静電気力を活かして技に転化するとは、なかなかのバトルセンス。これまでの地道な精進が無駄にはなっていなかったようだな」

シロ「そうですか。これも師匠がヒントをくれたおかげです。ボクは、アリナ様やゲンブが炎の技を得意にしていることに気を取られ、自分も何とか炎を使いこなそうとした。だけど、師匠が教えてくれたのは電気技だった。最初はどうして電気?  と思わなくもなかったですが、実際に技を習得して分かったんです。ボクは炎よりも電気に向いているって」

仙人「うむ。正直に言って、乙女が今から炎の技を鍛えても、スザクやゲンブほどの達人にはとても手が届かん。それに、仲間との連携を考えた際に、炎使いは何人もいらないのだ。仲間にできない技を身に付けてこそ、チームの意義があるというもの。もちろん、乙女がわしと同じように孤高の道を突き進むつもりなら、あらゆる武芸を学ぶことにも意義はあろうが」

シロ「師匠はあらゆる武芸を?」

仙人「試みはした。空も飛んだし、メガロと戦ったときは、木刀を使ってもみた」


トリビアの泉「ゴジラは空を飛べる」

 

シロ「師匠が飛行術に剣術とは、いろいろ試したのですね」

仙人「そう。試すことは大事。だが、その結果、自分には合わないことが分かったのだ。若き日はいろいろ試してみたくもなるが、その中で自分らしい流儀を身に付けるのが修行の目的。そして自分はこの道で生きる、という何かを見つければ、一意専心で極めるべし」

シロ「なるほど。そして、師匠はボクに炎ではなく、電気の道を教えた。それは何故?」

仙人「シーサーには電気が似合うと思うたまでだ」


「台風対策 神々の願い」~シーサー篇~*沖縄電力


「台風対策 神々の願い」~龍神篇~*沖縄電力

 

シロ「風と雷、つまり、これが忍びの奥義に通じる、と」


【忍風戦隊 ハリケンジャー】流派超越 風雷合体! DX 轟雷旋風神 ヲタファの歴代戦隊ロボレビュー / Hurricanger DX Gourai Senpuujin


Hurricanger henshin & Roll call 10 years after

 

仙人「しかし、これしきの技では、セイリュウにもスペースGにも勝つことはできん」

シロ「なぜですか?」

仙人「決定的に威力が不足しておる。今の乙女に蓄えられるのは、よくて数百ボルトと言ったところだろう。それを爪の二刀流で倍、ジャンプ力で倍、回転力で3倍と見なしたところで、その威力は12倍。それでは数千ボルトの破壊力にしかならん。電気技で有名な仮面ライダーストロンガーの必殺技、ストロンガー電キックの威力がどれほどか分かるか?」

シロ「ええと、1万ボルトですか?」

仙人「桁が違う。ストロンガーの通常攻撃である電パンチで1万ボルト。回転エネルギーを加えたストロンガー電キックは10万ボルトに達する。さらに、ストロンガーはチャージアップにより、100倍のパワーアップを果たすのだ。乙女のにわか仕込みの電気攻撃などストロンガーに比べれば、児戯に等しい


Stronger


ガンバライド02 ストロンガー 電キック


ガンバライド06 チャージアップストロンガー 超電稲妻キック

 

仙人「さらに電気攻撃で有名な怪獣にエレキングがいる。エレキングは体表から50万ボルトの電流を流すことができるらしい。電気技を誇るなら、少なくともストロンガーとエレキングのレベルを目指さなければな。所詮は一本の木を破壊する程度の効果では、普通の人間を倒すことはできても、怪獣の眷属を倒すには到底及ばん」


エレキング バトルモード(FER)

 

シロ「しかし、1万ボルトさえ達成できない現状で、そのような高電圧に届くにはどうすればいいのでしょうか?」

仙人「ピカチュウから学べばよい」

シロ「ピカチュウですって?」

仙人「そう。ピカチュウは体長0.4m、体重6.0kgという小さな体でも、10万ボルトの必殺技を持っている」


ポケモン 歴代ピカチュウの 「10まんボルト」 あつめてみた!Pikachu Thunderbolt

 

シロ「ピカチュウでさえ、10万ボルトが使える。ならばボクにだって」

仙人「それほど簡単ではないぞ。ストロンガーは改造電気人間であるから、体内に高圧発電装置を埋め込まれてある。エレキングピカチュウなどの電気を操る怪獣は、体内に電気ぶくろと称する特別な内臓器官が備わっておる。しかし、シーサーにはそのような器官は存在していない。つまり、自分の体内に電気を蓄えることは理論上、不可能なのだ」

シロ「それなら、どうすればボクが高電圧を使いこなせるようになるのです?」

仙人「方法は三つ考えられる。まず、一つは人工的な肉体改造によって、発電装置あるいは生体発電器官を埋め込むこと。あるいは、外付けのバッテリーパーツを装備するという手もあるな。単に電気技を使いたいだけなら、道具の力を借りてもいいわけだし」


必殺仕事人Ⅲ BGM 「暗闘者」 ~殺しのテーマ~

 

シロ「二つめの方法は?」

仙人「体内に流れる微弱な生体電流を、思念の力で増幅する。いわゆる超能力の一種で、バビル2世の電撃は火炎放射と同様、パイロキネシス(思念発火能力)の原理で、体に帯電した静電気が電磁波となって発動したものと推測される。思念の力でどれほどの物理的な効果が得られるかは、科学的には未知数であるがな。天性の素質さえあれば、そして能力を鍛える適切な環境さえあれば、ものになるかも知れぬし、徒労に終わるかも知れぬ」

シロ「第三の方法は?」

仙人「いわゆる魔術・妖術の類だ」

シロ「二つめの超能力と何が違うんですか?」

仙人「超能力は自分の思念、心の力、内面を重視するのに対し、魔術は外界の諸力との霊的な接触、契約を重視するといったところか。もちろん、両者を一体視することもできようが、例えば自らの体内で発生する電気を外に放射するか、外界の電気を自在に操るかで、同じ電気使いでも方法論が異なってくる。乙女よ、そなたが外界の静電気を高速走行で身に蓄えて技に変えたのは、超能力よりも魔術の技に近い。あくまで外界の電気を活用したという意味でな。雷を司る霊的存在と契約して、自分の代わりに電撃を発動するという方法もあるわけで」

シロ「つまり、一つめが物理的な手段。二つめが心理的な手段。三つめが外界の諸力に頼る手段ということですか」

仙人「そう定義することもできような。もちろん、それらは個々に独立しているとは限らず、魔法の物品を活用して外界の諸力を操作するなど、個人ごとの流儀は人それぞれだ。この辺の理論は、わしは専門家でないゆえ、詳しい話はできんが、実践で身に付いた技があるゆえ、そなたに伝授することはできるやも知れぬ」

シロ「是非ともお願いします」

仙人「ならば、わしにそなたの電撃技を仕掛けるがいい」

シロ「ヘッ?」

仙人「もう一度言う。わしにそなたの電撃技を仕掛けよ」

シロ「い、いや、いくら何でも師匠に拳を向けられません」

仙人「たわけが。そなた程度の技で、このわしがどうこうできると思うな。わしは元来、理屈で教えるのは苦手でな。強くなりたければ、荒業あるのみ。わしに技を仕掛けよ。それを受けて、わしはそなたに真理を伝えることができよう。拳と拳で語り合うことこそ武道の本義。それぐらいのことは、未熟なお主でも分かっていような」

シロ「た、確かに。では、本気でぶつからせてもらいます」

仙人「手を抜くなよ。さもないと、お主は死ぬ。さあ、来い!」

 

シロ「うおおおおおおーーー。まずは師匠の周りを走って、スピードと電気を貯める!」

仙人「技の発動が遅い。準備に時間が掛かりすぎるのが欠点だ」

シロ「それは今後の課題です。しかし、一度、技が発動すれば……」

仙人「敵は待ってくれん。気合いを貯めるには早急にな。ムンッ!」

シロ「何と!  師匠の気が一瞬で膨らんで、青い龍の霊気となった。これは……まさか、セイリュウ!?」

仙人「今ごろ気づきおったか。そうとも、わしがそなたの仇と狙うセイリュウよ。先代ビャッコことキングシーサーの子よ。父の仇を討てるものなら討ってみよ!」

シロ「バカな。だったら、今までの師匠面はボクを騙して……そんな、今まで信じていたのに。許せない!」

仙人改めセイリュウ「ほう。怒りの感情で、力を高めたか。面白い。その高まった生命の力、我が目的のために吸いとってやろう。さあ、来い。これぞ雷電吸引の極意なり」

シロ「そんな物はどうでもいい!  くらえ、必殺・サンダークロー・スピンドリル!」

セイリュウ「愚か者め。そのような、ただ直線的な技で相手に当てられると思うな。せめて、事前に相手の動きを封じるなり、かく乱するなり、技を当てる段取りを仕込んでおかねばの。だが、わしにとっては、かわすまでもない。いかほどの威力か受けてやろう」

シロ「その驕りが!  命とりだ!  覚悟、セイリュウ!」

セイリュウ「フッ、燐光一閃!」

シロ「バカな。セイリュウを包む青い霊気が広がって、ボクを包む……」

 

PYSHAAAAN!

 

セイリュウ「フフフ。かろうじて1万ボルトといったところか。乙女よ、そなたなりに頑張ったようだが、それが限界だったようだな。そなたはわしの張った霊気の結界にまともに飛び込んで、己が技の威力をそのまま返された。覚えておけ、武道の達人の張れる奥義、アナザーワールド制極界のことを。そして、そなたの雷撃は、我が体内に眠りし力を呼び起こした。この力さえあれば、スペースGにも太刀打ちできる。そなたは、そこでゆっくり寝てるがいい。まだ、生きているのならな。そして、わしのことは忘れることだ。そなたの力は、仇討ちよりもずっと建設的なことに使うとよい。それが父、キングシーサーの想いに報いる道と知れい。では、さらばだ」

 

   こうして、シロは、師匠と信じたセイリュウの返し技、燐光一閃をその身に受けて、敗退した。

   果たして、シロは立ち上がることができるのか?

   父の仇セイリュウとの決着はつけられるのか?

 

(当記事完。「新・屋久島編その4 スペースG」につづく。

  5月追記:でも、その前に「その3.5 令和の光」をどうぞ)