アソフレイムの地にて
晶華「幻の灰色の勇者ボーグナインの娘にして、灰色の魔女カーラ様の弟子入り希望な花粉症ガール、粉杉晶華ことアッキーです」
ヒノキ「前回、命名されたこのアソフレイム地方の領主、日野木アリナじゃ。カシュー王最強!と訴える。時の魔王なんか目じゃないぞ」
ゲンブ「アソフレイムの守護騎士ゲンブでござる。単にコンパーニュの塔の主人というだけでなく、領土の名が付くと、いかにも箔がつくでござるな」
ヒノキ「そうとも。元々コンパーニュの塔は、D&Dのコンパニオンルールを元ネタに命名された塔。ならば、コンパニオンルールの目指す君主の道に準じて、領土を獲得しても問題ない。そして、この擬似九州、とりわけ阿蘇のある熊本の地は古来、火の国とも呼ばれており、フレイムを名乗っても違和感がない。すなわち、わらわはカシュー王にあやかって、守護する大地をアソフレイムと名付けた次第」
晶華「領地経営かあ。私も未来じゃバットクイーンなんて名乗ったりもしたけど、単なる肩書きで、領地経営なんてしたことないんだよね。NOVAちゃんのクリスタルタワー周辺でも開拓して、建国してみようかな」
ヒノキ「まあ、領地経営といっても民がいるわけでなし、あくまで空想・幻想のエア領地じゃがの。しょせんは擬似九州ゆえ、リアル九州の鏡像世界ミラーワールドのようなもの。しかし、精霊の加護を信じる者には知覚することもできるゆえ、わらわの加護も及ぶところになろう。信じる想いが強ければ、ロードスのような異世界でも現実に影響を及ぼす大流となる。そして、大流から派生した支流も潤うことを願う。それこそが今のアソフレイム、そして花粉症ガールの物語というものじゃ」
晶華「うん。TRPGって、世界を構築できる遊びだしね。私も花粉症バースの構築に向けて頑張らないと」
ゲンブ「世界構築の話はともかく、今回のテーマである騎士の話を始めたいのでござるが」
ヒノキ「ならば、さっさと話をリードせい。期待しておるぞ、ゲンブ先生」
騎士の魔法
ゲンブ「さて、新版ルールでは、騎士は戦士ほど強くなくなったと申したが、一つ大切なことを失念していたでござる。それは、ロードスRPGの騎士クラスは魔法が使えるということだ」
晶華「ああ、上級クラスの魔法戦士に転職したら、の話ね」
ゲンブ「違う。1レベルから魔法を習得して使えるのでござる」
晶華「え? だって、パーンさんもスパークさんも魔法なんて使ってないよ。小説でも、リプレイでも、そんな描写はないし」
ゲンブ「そう。それは彼らが魔法を習得する機会を持たなかったから。よって、原作小説や古いリプレイを読み込んだ者ほど、騎士の使える共通語魔法(コモンルーン)を失念する傾向が強い。だが、共通語魔法を習得していない騎士は、その持てる可能性をフルに発揮していない、と我は考えるでござる」
ヒノキ「ああ。コモンルーンか。旧版ソード・ワールドでも、そんなルールがあったな。確かMPが豊富なのに、魔法が習得できないグラスランナーがコモンルーンの指輪を購入して活用していたような記憶がある」
ゲンブ「ロードスのコモンルーンは、それともまた違ったルールでござる。ロードスの魔術師ソーサラーは最初から古代語魔法と共通語魔法を全て習得した状態から始まる。旧版ロードスだと、古代語魔法2つと共通語魔法2つだけからスタートであったが、新版になって全ての魔法が自動習得できるようになった。これはまだD&Dの影響の大きい旧ルールから、時代を経て遊びやすいように改変されたようでござる。ソーサラーが魔法習得に特技ポイントを費やさなくてもよくなったのは、魔術師プレイヤーにとって恩恵でござろうな」
晶華「レベルアップで魔法を自動習得ってことは、ソード・ワールドと同じだね。D&Dは違うの?」
ヒノキ「D&Dの魔術師は、自分が覚える魔法を選択したり、冒険中に見つけた呪文書から書き写したりが必要で、単純なレベルアップで魔法を全て使えるわけではない。僧侶の場合は、労なく神様が該当レベルの呪文を全て授けてくれるがの」
晶華「つまり、魔法使いがプレイしやすくなったわけね。魔法のことなら、私の担当だから、しっかり勉強しないと」
ゲンブ「ただし、騎士が魔法を習得するルールは、以前のままで特技ポイントを費やすことになる。その分、魔法を習得した騎士は他の特技を習得しにくくなるわけで、パーン殿やスパーク殿は魔法よりも他の技を優先させたのであろうな。だから、従来の描写とも矛盾はなく両立する。魔法も習得できるけど、他の道を選んでもいいのだから」
晶華「ふうん。でも私が騎士だったら、迷わず魔法の習得を選ぶなあ。ゲンブ先生みたいにプラズマ火球を発射したり、回転ジェットで空を飛んだりできるんだよね」
ゲンブ「それは騎士ではなく、ガメラの眷属としての特技でござる。ロードスの騎士が火球を放ったり、空を飛んだりできるわけではござらん」
晶華「何だ。つまらない」
ゲンブ「古代語魔法を使える魔法戦士になれば、火球も飛行もできるだろうが、その場合、防具が魔術師並みに制限されて打たれ弱くなる。しかし、共通語魔法なら、そういう制限がないので、問題なく前衛として立ち回れるでござる」
晶華「共通語魔法で、どういうことができるの?」
ゲンブ「例えば、こうでござる」
晶華「え? ロードスの騎士って、宇宙刑事になれるの?」
ゲンブ「鎧を着て、剣を持って、しかも剣にエンチャント・ウエポンの魔法を自分で掛けて強化できるとなれば、似たような演出もできるでござろう」
晶華「へえ。エンチャント・ウエポンって共通語魔法なんだ。じゃあ、クライムバスターやビデオビームガンみたいな飛び道具魔法は?」
ゲンブ「それは無理でござる」
晶華「電子星獣という名前のドラゴンを召喚したりは?」
ゲンブ「モスの竜騎士を目指せ、でござる」
晶華「つまり、剣を光らせるだけ? もっと他に芸はないの?」
ゲンブ「いや、騎士は芸人ではござらんが、武器に一時的な魔力を付与するだけでなく、魔法の光を灯したり、魔法の抵抗力を高めたりすることもできる」
ヒノキ「ライトとカウンター・マジックじゃな」
ゲンブ「レベルが3に上がれば、ボディ・プロテクションで装甲値を高めたり、ロックやアンロックの呪文も使えるようになる。もちろん、呪文習得のための特技ポイントを支払い、教えてくれる魔術師がいれば、でござるが」
晶華「ロックはともかく、アンロックって鍵開け呪文よね。騎士なのに盗賊みたいなことをしていいのかしら」
ヒノキ「パトレンジャーがルパンレンジャーと協力して、ギャングラー怪人の金庫からルパンコレクションを取り出すようなものじゃな」
晶華「ロードスで、そんな状況があるの?」
ヒノキ「モンスターの体に金庫が備え付けられていて、強化されていれば、あるいは……」
晶華「だから、金庫付きのモンスターなんて、ロードスにはいないでしょう?」
ヒノキ「ラクシアだったら、剣のかけらで強化されたモンスターは普通にいるがの」
晶華「だけど、その剣のかけらは体に埋め込まれているから、アンロックの呪文じゃ取り出せないよね」
ヒノキ「確かに。だとすると、ロードスでは……おお、あれじゃ。カーラのサークレットを盗賊のウッドチャックが奪うことで、相手を弱体化させた例があって……」
晶華「それは確かにロードス島戦記1巻のクライマックスだけど、使った技はスリであって、アンロックは関係ないわよ。カーラ様は金庫の中にサークレットを入れていたわけじゃないんだし」
ヒノキ「すると、騎士が共通語魔法のアンロックを使うような局面は……盗賊騎士キロスとでも名乗るかの」
晶華「そんな32年前の光戦隊の敵キャラなんて、知っているのはNOVAちゃんみたいな特撮マニアだけよ」
ゲンブ「ならば、騎士盗賊すなわちナイトローグではいかがでござろうか」
晶華「ええと、ゲンさんがゲンさんネタを口にする?」
ゲンブ「何しろ、新星どのから威風堂々Tシャツと、親しみやすさTシャツをいただいたでござるからな」
晶華「ロードスとあまり関係ない特撮ネタはそれぐらいにして、他に共通語魔法でできることは?」
ゲンブ「レベルが5になれば、ディスペル・マジックで呪文解除ができるでござる」
晶華「ああ。それだったら、魔法で強化された敵を弱体化させられるかもしれない。だけど、それって騎士の仕事かしら? そういう支援は仲間の魔術師に任せて、騎士だったら前衛で武器戦闘に専念する方がいいと思うんだけど」
ヒノキ「まあ、そうじゃな。騎士の本分はやはり武器戦闘じゃから、共通語魔法の習得は使用局面を考えての最低限に留めておくのがいいじゃろう」
晶華「私が騎士なら、覚えるのはライトとエンチャント・ウエポンぐらいかしら。ライトは便利だし、エンチャントは『レーザーブレード!』と剣を光らせてから戦いに挑むのが格好いいし。自分で武器強化できれば、仲間の魔術師のMP節約にもなるし、同時に別の支援魔法をかけてもらったりすることもできる。よし、目指すは魔法騎士レイアースよ」
ゲンブ「あ、それでござるが、花粉症ガールは騎士になれないのでござる」
晶華「どうしてよ」
ゲンブ「ロードスRPGのルールでは、騎士になれるのは人間だけ。花粉症ガールは人間じゃないからして……」
★騎士が使える共通語魔法
●ランク1(レベル1から習得可能)
エンチャント・ウエポン、カウンター・マジック、
ライト
●ランク2(レベル3から習得可能)
アンロック、ボディ・プロテクション、ロック
●ランク3(レベル5から習得可能)
ディスペル・マジック
騎士の上級職
晶華「花粉症ガールは騎士になれないのか。花粉症ナイトは存在しない。だったら、私にはロードスの平和は守れないのね(涙目)」
ヒノキ「諦めるでない。騎士にはなれなくとも、騎士をサポートする他の職業に就くことはできる。そもそも、アッキーは騎士を目指していたわけではあるまい」
晶華「そ、そうね。私が目指していたのは、カーラ様みたいな魔法使いだった。だけど、魔法使いでも前衛で戦うセシルさんみたいな人もいる。ええと、セシルさんって魔法戦士になるのかな」
ヒノキ「いいや。セシルは騎士ではなくて魔術師だから、騎士の上級職である魔法戦士にはなれん。旧版ルールによると、彼の就いた上級職は『探索者(サーチャー)』。戦士や盗賊のような特技を習得しやすい、フィールドワークに長けた魔術師ということになる。魔法担当はお主じゃから、詳しいことは自分で調べるがいい」
晶華「うん、そうする。それで、上級職だけどレベル6になると転職できるのよね。新版ルールだと、基本職6つにそれぞれ3つの上級職が用意されているから、全部で18種類のバリエーションがあることに」
ヒノキ「初心者が扱うには十分な数と言えるのう。上級職は、元祖ロードスRPGのコンパニオン版にはなく、文庫版エキスパートルールから実装された。文庫版だと、各職業に就くための条件が細かく決められていて、例えば魔法戦士になるためには『アラニア出身で、王族、貴族、騎士、魔術師、司祭の家系』『剣スキル4レベル以上、読み書きスキルと会話スキルが3レベル以上』となっている。しかし、新版ルールだと、そういう転職条件はなくなって、6レベル騎士は『騎士長(ナイト・コマンダー)』『守り手(ガーディアン)』『魔法戦士(ルーン・ソルジャー)』の3つから自由に選べるようになっている」
ゲンブ「全部、アリナお嬢さまに説明されてしまった。我の役割は一体……」
ヒノキ「おっと、すまん、ゲンブ先生。お主がトロいから、ついつい先走ってしもうたわい」
晶華「だったら、ゲンブ先生に質問。パーンさんの上級職は何?」
ゲンブ「新版ルールだと、守り手でござる。旧版だと自由騎士であったのだが、そもそも自由騎士が消えてしまった」
ヒノキ「新版ルールは、旧版ルールを網羅した完全版のように謳っていたのじゃが、蓋を開けてみると『英雄戦争の時代にしか対応していない』『旧版にあった上級職がいろいろと削られた』などの批判があっての。まあ、昔を知るマニアほど、あれもない、これもない、と気になるところじゃが、ロードスの熱狂的なファンともなれば『よっしゃラッキー。今回のロードスはこれ一冊じゃ終わらない。追加のサプリメントが期待できる』とプラス思考に切り替えたものじゃぞ。
「単なる30周年メモリアルではなくて、今後も雑誌などで継続サポートをするようじゃし、ロードス復活からの新展開も期待できよう。ならば、最初から完全版を出して終わるのではなく、初心者への入り口をしっかり開けておいて、今後の展開で撃てる弾はしっかり確保しておくことも大切じゃ。いきなり全部ネタをぶっつけて、初心者を萎縮させてはいかん。マニアであれば、昔と比べて批評するのも結構じゃが、文句を並べ立てて終わるのではなく、しっかり研究してみせて、『作品を知らない人間に面白そうと思わせる話ができるか』が肝心要じゃと考える」
晶華「うん。私は去年、小説の最初のシリーズを読んだだけのロードス初心者だけど、NOVAちゃんが筋金入りのマニアなので、いろいろ話を聞いているうちに引き込まれてしまったもの。まあ、NOVAちゃん自身、黒歴史とはいえ一時的に下っ端関係者だったみたいなので、この記事は明らかにステルスマーケティングなんだけど、86年に最初のロードスリプレイが始まった時からのファンで、いろいろ影響を受けたのも事実。そして、ロードスがただの昔話のネタだけでなく、旬な話題として新たに動き出している現状を大いに歓迎している。
「だから、昔、憧れて追いかけて、手が届いたところでつまづいて挫折して、それでも未練が尽きなくて、もやもやしていた想いを今、昇華しながら改めてファンの立場で応援していることを、NOVAちゃんが喜んでいるのは間違いない。この想いこそ言うなれば、愛そのものね。そして、ツイッターなんかを見れば、ロードス愛を共有しているクリエイターも数多く見られるので、平成を越えて新時代へ向けてファンタジーファンの一種のお祭り状態みたいな雰囲気も感じられる。言わば、ロードス好きなみんなの想いが新旧入り交じって、新たな風になる状況で、ロードスの未来を応援する自由騎士みたいな立場が、今の私たちじゃないかしら」
ヒノキ「つまり、花粉症ガールはロードスRPGのゲーム内では騎士になれないが、ゲームの外の世界では自由騎士になれるということじゃな」
晶華「そうよ。だから、ロードスの未来は、私たちも創る。TRPGって、公式の提供したルールや世界を使って、みんなで想像して創造する遊びだし、ガンプラと同じで遊び方は自由なんだから」
ヒノキ「まあ、管理役のGMの裁定はあるがの。それでも、架空世界を愛する人たちの想いや関わりが、世界の未来を方向づけるのは間違いない」
ゲンブ「熱く想いの丈を語っているのは結構でござるが、上級職の話をもっと続けたいでござる」
晶華&ヒノキ『だったら、続きは次回ね(次回じゃ)』
(ファンの熱い想いを表明しやすくなったのも、ネットのいいところだと実感しつつ、当記事完)