日野木アリナと弥生ウルシェードのちょっぴりマニアック談義
ヒノキ「やっぱり戦隊の赤といえば、今はパトレン1号、圭一郎さまが一推しじゃ」
弥生「つまり、ルパンレッドはお気に召さないと?」
ヒノキ「軽薄な若造はどうもな。前作だと、よっしゃラッキーより、伝説大統領を推奨するのがわらわのスタイルだし。赤であれば何でもよいというわけではないのじゃ。そこには熱きヒーロー魂と、チームを率いる責任感が伴わないと。もちろん未熟な若者が成長するスタイルの赤を否定するわけではないが、マジレッドのような末っ子赤よりも、ゴーゴーファイブのマトイ兄さんの方がしっくり来る」
弥生「なるほど。では、ヒノキ様的には、うちのキョウリュウジャーのキング、ダイゴさんはいかがでしょうか?」
ヒノキ「ああ、お主の憧れの御仁じゃな。もちろん、推しじゃ。近年のスーパー戦隊では、海賊のキャプテンと並んで、威厳や強さを兼ね備えた主役赤と言えるな。2010年代の主役赤トップ3に入る逸材と言えよう。わらわ的にはマーベラス、キングのダイゴ、圭ちゃんでほぼ固まった感じじゃな。来年のスーパー戦隊で、貫禄あるスザクレッドでも登場しない限りはの。ところで、お主は、今回の新ライダーのジオウはどう思う? わらわとしてはゲイツの方が好みじゃが」
弥生「王になりたいなんて、身の程を知れって感じですね。だったら、ダイゴさんみたいに強き竜の者を目指さないと。とりあえず、龍騎編でどういう振る舞いを見せるか、で評価が変わるかもしれませんが、今のところはダメ人間としか思えません。彼が王になれば、やはり力に翻弄されて世界が滅びるのではないでしょうか。仮に、僥倖で力を得たとしても、それを制御する精神性あってこそでしょう。歴代平成ライダーで王になる資格があるとすれば、私的にはメンタルの強い五代雄介さんか、イマジンを従えた野上良太郎さんか、天の道を行く天道総司さんが適任かと思われます」
ヒノキ「なるほどな。わらわ的には、あのソウゴという若造の言っているのは、子供の王様ごっこと変わらない妄言と認識しておる。同じごっこ遊びなら、TRPGのルールブックでも購入して、まずはゲームマスターとして少数のプレイヤーを管理したり、あるいはゲームの中で領主キャラを演じたりして、王の苦労とかそういう物を学べよ、と言いたいが、今のままだと『王様になれば、やりたいことが何でも叶うよ』と思い込んでいるだけで、見ていて何だか痛々しいと思うわけじゃ」
弥生「なかなか辛辣な意見ですね」
ヒノキ「一度でも、責任ある立場として、他者を真面目に管理したことがあれば、誰でも思うことじゃろう。憧れる立場や対象があるのはいい。じゃが、そうなるためには自分の能力や置かれた環境を客観的に見ながら、足りない部分を補う努力が必然であろう。ソウゴが今後、王であることを真摯に考え、相応の哲学を身につけたりするならば大成するかもしれぬが、他者から力を奪うだけの所業を続けるのならば、逢魔時王と化すのも必然かも知れんのう。要は、力を手に入れるのが先か、心が育つのが早いかで運命が変わると思うのじゃ」
弥生「ソウゴ君の性格的には、それほど悪い子には見えないのですけどね」
ヒノキ「大きな事件を起こした犯罪者の知り合いが、よく言うセリフじゃのう。事件を起こすのは、性格的に良い悪いの問題だけでなく、持てる力と他者との人間関係にどう折り合いを付けて行くかを学び、社会性に見合った能力バランスの問題もあろう。独り善がりの善意だけで行動する人間が、周囲の意向や立場を配慮することなく、身勝手な論理で突き進んだ上、分不相応な、しかも破壊的な力を手に入れてしまえば、暴走するのも必然。せめて、周りにブレーキとなってくれる友人知人でもいれば、話は別じゃがの」
弥生「つまり、仲間との絆が大切だと?」
ヒノキ「厳密には、良識ある仲間との絆じゃがな。類は友を呼ぶで、仲間まで力を崇拝する暴走野郎が集まった場合、それはただの犯罪者集団になるだけじゃ。一人の時より、なおさら性質が悪い。じゃからこそ、未熟なソウゴの暴走スイッチを、ツクヨミやゲイツがどれだけ抑えられるか、確固としたブレーキ役になれるかがポイントじゃと、わらわは考える。もちろん、他人事として捉えた場合は、ブレーキを踏んでばかりでもドラマとして面白くないので、ウォズのように火に油を注ぐ加速装置も楽しそうじゃがな。この場合、リアル視点で見る場合と、フィクションとして、娯楽創作物としてカオスな状況を楽しむ場合とでは、評価基準も変わってくるのは当たり前じゃろう」
弥生「いわゆるドジっ娘メイドの格言ですね。『遠くで見る分には可愛くて萌えるけど、自分の身近でドジられたんじゃ、たまらないよ』ってことですか。その発言が市原悦子声だったりしたら、命の危険すら感じますが」
ヒノキ「……そのネタ、今の若者にどこまで通じるものかのう?」
弥生「あれ? 司令の周りでは、ごくごくありふれたネタだとお聞きしましたけど」
ヒノキ「そんな物、限られた必殺マニアの間だけじゃ」
シロへの贈り物🎁
ヒノキ「それにしても、弥生は思ったとおり、いや、それ以上にマニアックな知識を持っておったようじゃの。わらわと対等以上に特撮談義をできるとは、さすがメガネンジャーのヒロインといったところか」
弥生「メガネンジャーもそうですが、うちの場合、祖父の影響が強いと思います。それにスピリットレンジャーの皆さん方も。亡くなって霊体になった方々と付き合う際に、昔話もいっぱい聞かされましたから、お年寄りとの接し方に慣れているというか。ヒノキ様も結構長生きされていると聞きましたが、実際に会ってみると、予想以上に若々しく、また今の旬の話題にも敏感な方のようで、驚きましたよ」
ヒノキ「わらわは過ぎ去った昔よりも、今この瞬間を大切に考えるようにしているからの。そうでなくては、過去の思い出ばかりに囚われて、前に進むことができん。昔の契約主にばかり縛られると、今の契約主のサブロー殿にも失礼じゃからな。思い出は思い出として大切にはするが、今この時の想いをもっと大事にする、それこそが日野木アリナの日々是前進なライフスタイルというものじゃ。過去の研究は歴史マニアに任せればいい」
弥生「そのサブローさんという方は、ヒノキ様の理想とするリーダータイプなヒーロー魂をお持ちの方なんですか?」
ヒノキ「いや、それは少し違うと思うがの。ヒーローとしての理想は理想であって、パートナーに求めるものとは異なるのじゃ。わらわはコンパーニュの長として、リーダーシップを取るキャラに感情移入しがちじゃが、パートナーまでリーダーシップを取るような相手じゃと、互いの自己主張が激しくなりすぎて、うまく行かん。
「例えば、弥生はキング、ダイゴ殿のような御仁に憧れておるようじゃが、別に自分がリーダーシップを取りたいと思っているわけではなかろう。どちらかと言えば、リーダーをサポートする役どころに自分自身の理想像を置いているはずじゃ。つまり、なりたい自分と、パートナーや仲間に求める資質は異なることが当然。リーダータイプばかりでは、船頭多くして船山を登るじゃよ」
弥生「ああ、そのことわざは、うちの祖父は違う解釈をしていました。普通は、リーダーが多いと意見が噛み合わずに当初の目的とは異なる場所にたどり着くマイナス面を言及したものですが、祖父に言わせると『山に登るような船、とは何ともスゴ〜い物とは思わんかね。これはつまり、三人寄れば文殊の知恵みたいなもので、多士済々合わせれば、奇跡だ〜って起こるって意味とわしは受け取った。つまり、船頭多かれば船は宇宙にだ〜って飛び立てる、ということだ。もちろん、わし一人だけの力だと、そんな船は作れないので、出資者や協力してくれる仲間の助けが欠かせないがな。わしがキョウリュウジャーなのは、一人一人が強き竜の者で、異なる個性の持ち主が互いのブレイブを結びつけ、大いなる奇跡を起こせるからじゃよ。その中で、科学と海の二つがわしの役割であることを自認して、そこを強く主張するわけだ。熱いヒーロー魂の赤と、クールな才覚の青、それを混ぜたカラーこそがバ〜イオレット』といった感じですね」
ヒノキ「なるほどな。お主の祖父が、そういう知性と情熱と独特のセンスを兼ね備えた御仁じゃから、お主のような孫娘が育ったのやもしれんな。知性と情熱は、わらわも目指すところじゃが、どうも情熱に偏りすぎるところがあっての。わらわのパートナーは、そういう弱点を補ってくれる繊細で、よく気の付く、サポーター気質の芸術家、内なる情熱の持ち主がふさわしいと思っていたら、サブロー殿がそういう精霊使い的な素養を持ち合わせておった次第じゃ。つまり、自分と共感できる趣味の持ち主で、自分に足りない素養を持ち合わせて上手く役割分担を果たせる存在こそ、相棒とかパートナーシップに相応しいとわらわは考える。もちろん、その土台にはヒーロー愛や情熱といった共有できる感性が必須なのじゃがな」
弥生「ヒーローへの憧れと、パートナーに求める資質は別物ということですか。私のダイゴさんへの気持ちは前者であって、パートナーについては、また別に考えた方がいいのかもしれませんね。ダイゴさんのパートナーは、アミィさんに譲ったので、私は違うパートナーを探している最中でしたから」
ヒノキ「別に恋バナを語ったつもりもないのじゃがな。精霊と人間の関係は想いがストレートすぎて、社会的な立場を考えなければならない複雑な人間同士の関係の参考にはならんじゃろう。仮に職場恋愛を考えるにしても、今のメガネンジャーの仲間には、恋愛対象になり得る存在はいなかろうし」
弥生「確かに、司令と、ダン隊長と、ゼロさんと、ロイミュードのブレンさんたちですからね。まともな人間に該当するのはレイトさんぐらいだし、彼も妻子持ちですから」
ヒノキ「一応、司令の新星殿も人間のはずじゃがな。まともかどうかはさておき」
ヒノキ「おお、シロや。演舞の後で疲れているのに、デザートを用意してくれて、ご苦労じゃったな」
シロ「いいえ。これもボクの仕事ですから。では、これにて……」
弥生「ああ、ちょっと待って、シロちゃん。贈り物があるんです。今、出しますから」
シロ「このボクに? どうして?」
弥生「それは、翔花ちゃんがお世話になっているからって、うちの司令が。本当は、先月の27日の娘さんの月々の誕生祝いの時に、こちらへ配達する予定だったのが、司令の身の回りもいろいろバタバタしていたようで、メガネンジャー預かりになっていたのが今ごろになってしまって」
ヒノキ「まあ、2号殿の行方不明とか、未来からの帰還の際のゴタゴタとか、新世界とか、次元嵐後の音信不通状態とか、いろいろあったらしいからの。新世界で無事におるという知らせがあったようじゃが、本人からの連絡もまだのようじゃし」
シロ「つまり、行方不明の新星様が、いなくなる前にボクに用意してくれた贈り物ってことですか?(翔花の父親がボクのことを気に掛けていたなんて。やはり新星様が、ボクを導いてくれた声の主、時空仙人さまなんだろうか。ドキドキ)」
弥生「そうです。司令のセンスなので、気に入っていただけるかどうかは分からないけど」
シロ「こ、これは……」
ヒノキ「先月発売されたばかりの、旬な忍者ロボのようじゃの」
シロ「白い忍者ロボ。だけど幼児体型……」
弥生「ええ、SDですけど、リアル頭身にも変形できるんです。こういう風に」
シロ「幼児体型から成人体型へ! これこそ、ボクの願望にして、欲望にして、希望のあるべき姿。新星様に是非とも感謝の想いを伝えて下さい!」
弥生「そこまで喜んでもらえると、司令も贈り甲斐がある、と思ってくれるんじゃないかな。じゃあ、お手数ですけど、翔花ちゃんとケイPさんに声を掛けてくれませんか。彼女たちにも渡すものがありますので」
シロ「了解(ニコニコ)」
翔花とケイPへの贈り物🎁🎁
翔花「シロちゃんに呼ばれて来たよ。シロちゃん、何だか嬉しそうだったけど、何があったの?」
ヒノキ「新星殿からプレゼントをもらったんじゃよ。それがツボにハマったみたいでのう」
翔花「え? NOVAちゃんからプレゼントって、連絡が取れたの?」
ヒノキ「いや、それはまだじゃが、生存は確認された。ウサギとクリスタルの新世界におるそうじゃが、よく分からん」
ケイP『それは、もしかしてセーラームーンの世界ではないでしょうか?』
翔花「ああ、きっとそうだよ。さすが、KPちゃん、頭いい。だったら、今から私がひとっ飛び月までPONと行って、NOVAちゃんを連れ戻してくる。ヒノキちゃん、月まで魔法で飛ばして」
ヒノキ「こらこら、慌てるでない。月に新星殿がいるという保証もないし、そもそも、一口に月と言っても、どこの世界の月なのじゃ。多元宇宙をなめるでない。セーラームーンの月と、ドラゴンボールの月と、ウルトラマンAの月と、グレンラガンの月とでは、それぞれ物語上の役割も大きく違うし、ファンタジー世界には複数の月を持つものもある。行き当たりばったりでは、そなたが迷子になってしまうのがオチじゃ。これ以上、行方不明者を増やすわけにはいかんでの」
弥生「ジーッ」
翔花「え? あ、初めまして。私は粉杉翔花、花粉症ガールよ。あなたは誰?」
ヒノキ「メガネンジャーの一員、メガネピンクの弥生ウルシェードじゃよ。そなたの妹御の仲間、と言えば分かりやすいかの?」
翔花「あ、2号ちゃんの。だったら、改めて自己紹介しないと。私は2号ちゃんの双子の姉の粉杉翔花1号、通称、技の1号で、緑色が濃いのと、服のラインが2本なのが見分けるポイントよ。現在、このコンパーニュの塔で絶賛修行中です。よろしく」
弥生「え、ええ。じっと見つめたりしてゴメンなさい。本当に妹さんにそっくりなんだなって思って。性格は随分と違って、無邪気に明るい感じですけど」
翔花「ええ、陽の1号、陰の2号とも言われるけれど、その分、2号ちゃんの方が頭がいいので、頭脳労働は2号ちゃんと、アシモンのKPちゃんに任せた。私はもっぱら脳筋行き当たりばったり街道まっしぐらで突き進むことをポリシーとしております」
ヒノキ「そんなのをポリシーとは言わん。コンパーニュでは武芸だけでなく、頭も鍛えることを推奨しておるはずじゃ。さっさと九九を習得しないと、いつまで経っても屋久島へ向かわせるわけにはいかん」
ケイP『屋久島と九九に何の関係があるか分かりませんが、とりあえずTRPG修練で、字が書けるようになったことと、足したり引いたり簡単な計算ができるようになったことは大きいですね。あとは掛け算と割り算ができれば、小学校の低学年から高学年に移行することができるんじゃないか、と』
弥生「あのう、失礼ですけど、今はおいくつなんですか?」
翔花「今月の27日で半年だよ。生まれて半年にしては、頭がいいと思わない?」
ヒノキ「精霊は、外見年齢と精神年齢が人間とは異なるからのう。体は中学生、学力は小学校低学年、ただしマニアックな知識は父親譲りで侮り難し、と言ったところじゃの。シロが『翔花は基本バカで未熟極まりないのに、時々、とてつもない閃きを示したり、洞察力の高さを見せたりするから、驚かされる。ボクの常識ではとても測れん、スゴい奴だ』と褒めておったわ」
翔花「わーい、シロちゃんに褒められた♪」
弥生「褒めているのか、手放しで喜べない言い方に聞こえますが、本人が喜んで幸せなら、それでいいのかな。ともあれ、翔花さんにはWhite NOVA司令からこういうプレゼントが用意されております」
翔花「え? これはライドウォッチ? 私もこれで仮面ライダーになれたりするの?」
ヒノキ「バカ者、どこがライドウォッチじゃ。ライドウォッチはこういうものに決まっておろう」
弥生「一応、スマートウォッチに似た時空通信機ということらしいですが、司令の持つ同種の通信機にしか対応しないとのことです」
翔花「だったら、これを使えば、NOVAちゃんと連絡とれたりしない?」
弥生「そう思って、私たちも試してみたのですが、どうやら司令は通信電波の届かないところにいるようで、反応がありません」
翔花「ふうん、だったら仕方ないか。他に、コンパーニュの塔と連絡がとれたら、屋久島行った時に便利かもしれないんだけど、そういう機能はないの?」
弥生「デフォルトではないけど、『ヒノキちゃんだったら改造してくれないかな』と司令はおっしゃっていました。何しろ、ヒノキ様は精霊ネットを立ち上げた方ですし」
ヒノキ「ふむ。機械の性能的に余裕があれば、できなくもないじゃろうが、今すぐという訳には行かんのう。わらわにしばらく預けておいてくれれば、コナっちゃんが屋久島に旅立つまでには何とかしてみようと思う」
翔花「だったら、お願いするね、ヒノキちゃん」
ヒノキ「うむ。じゃが、余計な機能を付けると、バッテリーの保ちが悪くなるので、どうやって充電するかが問題になるのう」
弥生「それも含めて、ケイPさんのバージョンアップ用プログラムを用意しました」
ケイP『けぴっ? 私のバージョンアップですか?』
弥生「ええ、以前にドゴラが電気クラゲのように、発電機能を持っていれば便利なのにな、と司令が仰っていたのを、うちの祖父のドクターが獣電池の応用で実現させました。ドゴラの持つエネルギー吸収能力を一度、勇気の力ブレイブに変換することで、さらに電気に変換する仕組みになっています。変換効率が少し悪いので、戦闘に使えるほどの電力にはなりませんが、日常の道具の充電ぐらいなら普通にこなせるでしょう。将来的には、ケイPさんのブレイブの高まりによって発生する電力も飛躍的に向上できるはず、とドクターは言っていましたが、あくまで理論上に過ぎないので、実証はこれから、ということですね」
ケイP『つまり、私が修行によってブレイブを高めれば、電撃技を習得するのも不可能ではない、と。ブレイブって、どうすれば高まるんですか?』
弥生「一つ、荒れて下さい。二つ、一途な想いで突き進んで下さい。三つ、止められても諦めず、止まらないで下さい。私に言えるのは、これぐらいです。自分に自信が持てなく、弱気になって、ネガティブな気持ちでは、ブレイブと言えません」
ケイP『だったら、私よりもマーク1向きじゃないですか。マーク2の私は、クールで慎重なブレーキ役なんだから、ブレイブとは相性が悪そうなんですけどね』
弥生「私も自分でそう思っていたんですけど、本当に大切な想いのために、自身の殻を破ってブレイブを覚醒させたことがあります。きっと、その時が来れば、自分の中のブレイブに気付くかもしれませんよ。それと、プログラムはもう一つあります」
ケイP『これはガーランド。バイク形態から、人型アーマー形態に変形するメカの一つですね。まさか……』
弥生「ええ、そのまさかです。あなたが変形するドゴランアーマーは確かに物理攻撃やエネルギー兵器に対する超絶防御力を実現しましたが、機動性が低く、このコンパーニュまでも徒歩での旅路を余儀なくされた、とか。そこで、移動の不便さを克服するために、ケイPさんにはドゴランマシン形態への変形機構を組み込もうというアイデアです。陸上での車輪走行バイク形態と、ホバーでの空中浮遊エアバイク形態が用意されていますが、これで翔花さんの今後の旅も迅速に進むのではないでしょうか」
翔花「だけど、私、マシンの操縦なんてできないよ。自転車に乗ったことすらないんだし」
弥生「その辺は、ケイPさんがアシストしてくれるでしょう。どちらかと言えば、乗馬感覚で、操縦者と機体の相性が重視されるかと思われます。あなた方なら大丈夫ではないか、と」
翔花「KPちゃんとの相性か。だったら安心だね」
ケイP『翔花1号ママにそう言ってもらえると、こちらも安心でございます。これが2号ママに乗られた場合、絶対に乗馬感覚で、鞭でビシバシされる未来が見えますので。バイクが鞭打ちされたんじゃ、たまらないよ、と市原悦子声で抗議したくなります』
弥生「あ、ケイPさんも『○○されたんじゃ、たまらないよ』フレーズを使われるんですね。司令に影響されたのは私だけじゃなくて、安心しました」
翔花「だけど、乗り物に乗ってスピードアップはいいんだけど、バイクじゃ冷暖房機能完備ってわけにはいかないのよね。灼熱の九州の地で冷房なしだと大丈夫なのかな」
ヒノキ「それは大丈夫じゃ。灼熱の夏はもう終わったからな。冬場になって寒くなるまでは、九州も秋なので、随分と過ごしやすくなるはず。心配なのは台風ぐらいじゃろうが、それよりも心配なのは、シンカリオン世界で桜島が敵アジトと判明した影響で、屋久島にも何か異変が見られないか、ということじゃな。まあ、危険だからこそ、かえって修行になる、という考え方もできるが、それにしてもコナっちゃんが未熟だと、危険の大きさが適切とは言いがたいハードモードになり兼ねん」
翔花「う〜ん、私も九九を覚えないまま、屋久島に向かっても、返り討ちに合うと思うな。九九の奥義を身につけないと、屋久島の試練を乗り越えられないなら、まずはしっかり九九をマスターしないとね」
ケイP『九九と屋久島に何の関係があるのか、相変わらず謎ですが、私がエアバイク形態に変形できるということは、もしかしてDKフォームも飛行能力をゲットして、高機動空中戦闘が行えるようになったとか?』
弥生「あ、それは無理でした。マシン形態だと飛行可能だけど、アーマー形態では防御力とか空気抵抗とか物理学上の問題で、飛行は不可です。この辺は『人型ロボ形態で普通に飛べるなら、戦闘機形態に変形する意味があまりないじゃないか。やはり人型ロボは重装甲、高攻撃力が長所で、戦闘機形態は高機動力、空中戦対応と役割分担ができる方が望ましい。さすがに、物理法則を無視して、人型形態で飛び回るのはオーバーテクノロジーの産物すぎて、リアルじゃない』という司令とドクターの考えも一致しまして」
ケイP『つまり、本当はDKフォームも飛べるようにできるけど、マスターやドクターの趣味で飛べない仕様だと?』
弥生「まあ、実際のところは、バトルアーマーとしての機能と、飛行機能を両立させると、エネルギー消費が膨大になり、継戦時間が30秒未満になることが試算されまして。この辺をブレイブで補えれば、将来的には実用性も向上できるのでしょうが、当面は運用側で上手く無理をせずに機能を使い分けていただければな、と」
ケイP『つまり、現段階で、無理やりアーマー形態で飛ぶと、たちまちバッテリー切れを起こして、動けなくなるということですね。理解しました。DKフォームで無理に飛ぶのは、自滅行為と覚えておきます』
翔花「だけど、マシン形態で空中から相手に突撃を敢行して、ぶつかる直前にアーマー装着して、スピード付いたままで必殺の体当たりをするってのはありなんだよね」
ケイP『そういう危険な戦法は、なるべく勘弁願いたいんですけどね。元来、翔花ママは接近戦で相手に真っ向勝負を仕掛けるキャラじゃないので、もっと、ご自分に合った戦闘スタイルを見極めるところから始めていただかないと。ここではゲンブさんや、シロさんのスタイルから学んできましたが、翔花ママ独自のスタイルの確立も今後の課題になると思われます』
翔花「私、独自のスタイルか。脳筋突撃行き当たりばったり街道まっしぐらアタック?」
ヒノキ「だから、そういう短絡的な戦法をやめい、とケイPは諭しているのじゃろうが。コナっちゃん一人じゃと、先が思いやられるわい」
ゲンブへの贈り物🎁🎁🎁
ズンズンズンズン
翔花「あ、亀おじさん」
弥生(うわ。遠くで見るよりも、ずっと大きくて、威圧感たっぷり。こういう相手と、翔花ちゃんは怯むことなく戦っていたのね。それだけでもブレイブに値すると思う)
ゲンブ「うむ。我の名を呼ぶ声が聞こえたので耳を傾ければ、バトルスタイルについての話をしている模様。それで、一言助言をと思い、まかり越した次第。だが、その前に、そちらのメガネのお嬢さんに自己紹介しておこう。我はジェネラル・バックラー。通称ゲンブ。アリナ様を守る楯なり。先程のバトルでは失態を見せたが、我の実力はあんな物ではござらん。大方、世界を変え、物理法則を覆すほどの呪いでも働いておったのだろう。世界の守護者の異名を持つ我とはいえ、世界そのものの理すら変えられては、太刀打ちできぬことを痛感した」
弥生「それはもしかすると、白いパンドラパネルに私が祈ったから、かもしれませんね。メガネンジャーとして、コナス義ーズの勝ちを願い、ゲンブさんの不調を祈ってましたから」
ゲンブ「そういうことであったか。巫女の祈りが我を応援するときは力もいや増そうが、イリスの時のように、巫女が敵に回れば、我もやりにくい。聞けば、メガネンジャーは百万の思念を力に変えるとか。この度は、遊びとは言え敵対する立場に身を置いたが、今後は共闘できる関係である方が望ましい。百万の祈りを受ければ、我が力も大いに高まるであろう。そうすれば、この世界を破滅させる輩から世界を守ることだって、きっとできるであろう。よろしくお頼み申す」
弥生「ええ、こちらこそ、思わず呪いをかけてしまっていたようでゴメンなさい。お詫びと言っては何ですけど、司令のNOVA氏から贈り物が用意されています」
ゲンブ「我にも、だと? 新星殿の気の回しようには痛み入る。一体、何であろうか」
弥生「ええと、『ゲンブさん、いやゲンさんに贈るんだったら、当然、これだろう』と司令は仰っていましたが、気に入っていただけるかどうか」
ゲンブ「おお、この雄大な曲調の行進曲に乗って、出てくるのは?」
ヒノキ「あ、どうやら、オチが見えたようじゃ」
弥生「ええと、『威風堂々』と『親しみやすさ』の特注Tシャツですね。ゲンブさんの体格に合わせたLLサイズ」
ゲンブ「これを我に着ろ、と?」
弥生「ええ、さらに今なら3点目。綾香市のクワトロMというお店から特注した『うちゅ〜ん』ロゴ入りのTシャツです。宇宙大怪獣の称号を持つガメラに相応しいだろうという司令の真心です。いや、私個人的には、無理に着なくてもいいんじゃないかな、と思ったりもするわけですが。別に、司令色に染め上げなくてもいいでしょうし」
ゲンブ「感服した!」
弥生「え?」
ゲンブ「新星殿は、我の望みをきちんと掴んでいらっしゃる。『威風堂々』『親しみやすさ』そして『うちゅ〜ん』、いずれも我が理想にして、なりたい自分を体現した言葉の数々。さすがは伝説の言霊魔術師と呼ばれるお方よ。これ以上に、今の我の心境にフィットした贈り物はあろうか。いやいや、誠にもって素晴らしい」
弥生「本当に? 私がもしも司令だったら、『こいつ、チョロいな』と九条貴利矢さんみたいにほくそ笑んでいるところですが」
翔花「NOVAちゃんはそこまで腹黒じゃ……うーん、腹黒かもしれないな。2号ちゃんが生まれるわけだし、悪意はなくても、イタズラ心ぐらいは普通に持ち合わせているし、エンターテイナーだったら面白ければそれでいい、と言いきっちゃう人だし」
ゲンブ「いや、我には分かる。新星殿がこのTシャツに託した想いが。威風堂々と親しみやすさのどこに腹黒い悪意などあろうか。どちらも、素晴らしい言葉ではないか。この期待に応えて、我は今後も、威風堂々と親しみやすさの道を突き進む。これが我の生きる道。割れ物注意と称されてもいい」
ヒノキ「贈り物を受け取った当人が満足しているなら、それでよかろう。わらわもメガネレッドアイズを受け取って満足だし。それで、ゲンブ、コナっちゃんにバトルスタイルについて助言があるとのことじゃが、申してみい。直接戦ったお主に見えていることもあるじゃろうしの」
ゲンブ「ああ、そうであった。粉杉殿の武芸は確かに未熟。なれど、想いの強さと優しさが最大の武器ではござらぬか、と思うておる次第。具体的には、敵対相手すらいたわる慈悲にも通じた愛。ブレイブとも称すべき勇気。そして幸運と奇跡をもたらす希望。この三つの心の力こそが、粉杉殿の根幹に置くべきバトルの原動力。それを忘れて、小手先の戦術や技術だけを論じるなら、持ち味を消すことにすらなり兼ねない。自分を信じて、大きく翔び立つ艶やかな花になること。そういう期待を寄せられる資質が、粉杉殿にはある、とお見受けした」
翔花「え? 私、そんなに凄くないよ。一人じゃ何もできないし、ただの花粉症ガールでしかないし」
ヒノキ「そういう謙遜の仕方はやめい。ただの花粉症ガール、とそなたは卑下しておるが、わらわにとって、花粉症ガールとはすなわち未来への可能性を意味する言葉じゃ。『私は、ただの未来への可能性だし』などと卑下しては、それこそ未来や可能性の根を自分で摘むことになる。自分で花粉症ガールを卑下するような言い方は、それに憧れるわらわにとっては侮辱も甚だしい。今後のお主は、もっと花粉症ガールであることに誇りを持つべきじゃ。必要以上に高慢に振る舞う必要もないが、卑屈のあまり自らの可能性を閉ざすような言動は控えるべきであろう。少なくとも、お主はわらわと、ゲンブと、シロの心をつかんだのじゃからな」
NOVA〜N、NOVA〜N、人は誰〜でも♪
NOVA〜N、NOVA〜N、一つの太〜陽♪
ヒノキ「な、何じゃ。わらわが折角、いいことを言っておるのに、この空気の読めない着信メロディーは」
弥生「あ、どうやら、翔花さんの時空通信機のようです。もしかして?」
翔花「え、これ、どうやって操作するの? こんな感じかな?」
通信機の声「こちらWhite NOVA。現在、新世界のクリスタルタワー、正式名称〈夜明けの尖塔〉から通信している。ようやくエネルギーも復旧したんでな。そっちはコンパーニュの塔か? 粉杉翔花はそこにいるか?」
翔花「うん、翔花だよ。コンパーニュで元気にやってるよ。NOVAちゃんの声が聞けて嬉しい。時空通信機の贈り物、ありがとう」
(こうして、久しぶりにNOVAと翔花1号の会話ができるようになった。新世界からの通信で、NOVAは何を伝えようとしているのか? こうして、9月期のコンパーニュと、メガネンジャーと、次元ドルイドと、新世界の四つの要素をシャッフルした、それなりに壮大な「White NOVAのブログ時空クロスオーバー祭り」は、いよいよ大詰めを迎えることに。夏明け新学期や台風以降の状況整理に勤しみつつ、今話完)