★前回までのあらすじ
植物の精霊ドライアドの亜種であり、花粉症ガールと呼ばれる我が娘(2次元)、粉杉翔花はふだん、当ブログのアシスタント娘として、NOVAのマニアックな知識に置いて行かれないように勉強している。
うん、勉強熱心でけなげな娘は好感度アップだぞ。
そして、最近、NOVAの昔の心の闇が生み出した殺人鬼の悪霊ケイソンと初めて戦うことになり、NOVAの精神と融合合体した魔法少女姿の花粉SHOWガール、人呼んでショーカ・ブルー・スタンドとして覚醒。
NOVAのアドバイスの元、しかし持ち前の「愛と平和を大切に考える優しさ」のパワーで、ケイソンにとどめを刺そうとするNOVAの過ちを諭し、ケイソンの闇の浄化に成功するのだった。
うん、翔花の優しさには本当に救われたよ。もう少しで俺はまたも罪を重ねるところだった。
その戦いの後、NOVAはケイソンの浄化された姿、過去の少年NOVA、通称・三田村邦彦好きの秀との和解対談に時を費やす。
一方の翔花は、謎の軟体生物プルプルと遭遇し、難なく撃退して、持ち前の優しさでプルプルを下僕ペットに従えてNOVAの元に戻る。
NOVAは持ち前の聡明さで、プルプルの正体が宇宙大怪獣ドゴラの幼生体であることをたちまち看破し、危険だから離れるように訴える。が、翔花は可愛い(?)ペットを守るために拒否し、家出少女となってしまう。
これというのも、ドゴラが悪い。俺から翔花を取り上げようとした罪は……と、これ以上、思いつめれば悪霊の餌食だ。うん、翔花が可愛いと言えば、ドゴラちゃんだって可愛く見えてくる。父親ってのはそういうものだ、多分。
とにかく、NOVAは翔花と仲直りしようと、ドゴラちゃんとも心を開き、対話と教育に力を注ぐようにした。その想い、刹那・F・セイエイの如し。ぼくだってイノベイターになれる。いや、別にOO映画劇中のメタル刹那みたいなのにはなりたくないけど。
だけど、せっかく可愛がってあげたのに、ドゴラちゃんは俺と翔花をうらぎって、ちょっと俺が目を離した隙に、翔花をパックンチョとやりやがった。パクリはフィクション界で最も忌み嫌われ、軽蔑される行動の一つと教えてやったにも関わらず、だ。
いかに知識や良識を与えても、本質が人間と大きく異なる宇宙生物への教育は不可能だと見切りをつけ、そして何よりも大切な翔花を取り戻すため、NOVAは静かに、クールに、淡々と怒った。
そう、怒るときは決して激しない。さもないと悪霊を招き寄せてしまうからな。
普段は滅多に見せないNOVAの本気の怒りは、ドゴラには伝わらなかった。まあ、人間じゃないから当然だな。ついでに、ネットでも伝わらないと思う。そういうコントロールできない怒りの時は、ネット活動をしないから。
怒りつつも冷静に、計算された機械のように冷徹に、NOVAは時空魔術と言葉の力で、まだまだ未熟なドゴラをあっさり翻弄し、翔花を取り戻すことに成功。
ドゴラごときが、このNOVAに太刀打ちするには、20年早い。本当はゼロさんみたいに、2万年早いと言いたいところだが、それは長命を誇るウルトラ族だから言えること。まだまだ、NOVAはゼロさんみたいなイモータルには程遠い未熟者だ。
もっとも、作品批評とかをする場合は、ゼロも新参者なので呼び捨てにしているけどな。何せ、こっちはジャックさんこと新マンと同い年生まれだ。3次元視点では、呼び捨てにする資格は十分にある。
そして、ドゴラを懐かしの怪獣カプセルに閉じ込めて封印の術を施そうとしたNOVAだったが、結局、翔花の優しさにまたもほだされてな。ドゴラを抹消せずに、使い魔的な存在として、俺と翔花に縛りつけることにした。
俺たちと一緒にいることで、ドゴラにも人間のルールや感情、そして独り善がりでない真のヒーロー魂って奴を教えようと思ったんだ。電王のイマジンたちを野上良太郎がしつけたようにな。
ドゴラちゃんは、名付けの儀式によって、新たに「K・ピエール・プルナレフ」という、いかにも騎士らしい名を与えられたが、普段は帽子に擬態した「ケイP」、または「KPちゃん」として、俺たちと共に暮らしている。
それから一週間以上が経過し*1、衰弱していた翔花も光合成でそれなりに元気を回復し、プレゼントしてもらった自分のイラストに喜び*2、俺はケイPの奴を時々からかいながら、人間のジョークって奴を教えてやろうと日々過ごしている。
ああいうストレートな単細胞思考しかできない、壊れたコンピューターみたいな思いつめやすい、想像力の欠如した奴は、少しぐらい遊び心ってものを教えた方がいいんだ。さもないと、昔のイクサ名護さんみたいに、杓子定規な妖怪ボタンむしり男になっちまう。
とにかく、しばしの平和な日常が、俺たちの世界に戻った。
今から語るのは、そんな、ある日の話だ。
さらばドゴラ帽子?
翔花「ねえねえ、NOVAちゃん。実は、お願いがあるんだけど?」
NOVA「何だ、翔花。今さら改まって、お願いだなんて。お前の願いなら、このNOVA、できることなら何でも聞くぞ。可愛い娘の頼みだからな。いきなり『私のために死んで』とか『このブログの存在を抹消して』とか『仮面ライダービルド他のヒーロー作品および趣味関連の話題を2度と口にしないで。いい大人がいつまで子供っぽいことを語っているんだよ。身内として恥ずかしい』とか、そういう俺のアイデンティティーを根幹から否定するような願いなら、お断りだが。断固として抗議、反論に務めて、自分自身の防衛に徹するが」
翔花「もう。そんなNOVAちゃんの大切なものを否定するようなことを、私が言うわけないでしょ。こう見えても、前に『嫌い』とか『さよなら』って言ってしまったことを、しっかり反省しているんだから。NOVAちゃんがいなくなったら、どんなに悲しいか分かったんだから。NOVAちゃんが好きなものなら、私も好きになる努力をするから」
NOVA「おお。だったら、げんとくんとか、万丈は?」
翔花「さて、私のお願いと言うのはね……」
NOVA「チッ、スルーかよ」
翔花「何? 時間がないのにまた寄り道しそうなのを止めてあげたのよ。今回の話の根幹は私のお願いであって、他のキャラの話は枝葉に過ぎないの。たまには、私のことに集中してくれてもいいじゃない」
NOVA「分かった。今回は寄り道しない。多分。で、何をお願いしたいんだ?」
翔花「このドゴラ帽子、見た目がダサいから変えたいの」
ケイP『けぴっ!? そんな、ママ、ひどいよ。プルプル』
NOVA「そうか、翔花。やっと、そのことに気づいたか。俺はてっきり、お前が頭にドゴラをかぶるのを好きでやっているから、娘のおかしなセンスにはあまり口を挟まないでおこうと決めていたんだが、正直『頭にドゴラの帽子をかぶっているドライアドの女の子なんて登場させて、たささんがイラストで描いたりするのは苦労するだろうな』と心配していたんだ。どうも、お前のことを彼が気に入って、創作魂に火がついてしまった感じなのだが、センスの違いとかあれば、しっかり打ち合わせていきたいと思っている。『ラーリオス企画』の過ちは二度と繰り返したくないからな。その辺の問題点を列挙していけば、結構、膨大な文量になることが分かって、今さら不毛なのでブレーキを踏んだが、要は独り善がりにならずに、いろいろ話し合っていきましょうってことだ。俺は娘ともしっかり話し合って行くつもりだが……」
翔花「話し合って行くつもりだが?」
NOVA「ここは、帽子の気持ちだって、しっかり話し合って行くべきだとおもうぞ。この帽子の何がダサいのかは、まあ、俺にもしっかり分かっていて、うん、そもそも『ドゴラちゃん、可愛い』と考えることも俺のセンスには???状態なのだが、世の中にはオインゴ・ボインゴブラザーズの携帯カバーを俺に見せて、『先生、これ可愛いでしょ?』と同意を求めてくる女子もいて、一瞬、返答に困ったんだが……」
翔花「どう答えてあげたの? 返答次第によっては、NOVAちゃん、その子の大切なものを否定することになるわよ」
NOVA「俺はこう答えた。『うん、可愛いというか……コミカルでユニークなキャラだよな、オインゴ・ボインゴブラザーズ。先生は面白いと思ったよ、ジョジョのあの回。可愛いという言葉にするなら、キモ可愛いって感じかな。だったら納得』と。そう答えると、相手もニッコリ笑顔を向けてくれた……ような気がする」
翔花「その笑顔が、NOVAちゃんの脳内だけに映った幻想でないことを願うわ。でも、答え方としては及第点ね。まあまあと言ったところかしら。少なくとも私がその娘だったら、否定された、とは受け取らないわね」
NOVA「お前にそう言ってもらえるとホッとする。で、結局、寄り道してしまったようだが、『キモ可愛い』という言葉で、テーマは繋がっている。ドゴラ帽子も『キモ可愛い』の部類だと俺は考えるが、それでもダサいというか、そんなの被って街を歩いたら、お笑い芸人かと間違われるほど、悪趣味というか、笑えるネタというか、何かの罰ゲームかよ、これ最低だな、というか、とにかくそういう代物だ。ドゴラ帽子。もちろん、商品画像にはないから、これで代用するが」
翔花「そもそも、この子らって、ぬいぐるみに被せるためのものであって、人間がおしゃれでかぶって、街を歩くようなものじゃないでしょうに」
NOVA「そうか? 俺はドラクエ関連のCMで、能年玲奈や橋本環奈がスライムの着ぐるみというか帽子をかぶって、北王子欣也扮する竜王としゃべっているのを見て、世間ではこう言うのが受けるのか、と考えたりもしたのだが、さすがに街は歩かないか。せいぜい、野外の旅でドラゴンの襲撃にビクビクしながら、たぶん、モンスターに成り切っていたら、襲われないかも知れないという身を守るための保険用ぐらいかな」
翔花「そんな野外って、D&Dの世界だけだと思う。あ、ドラクエの世界もそうか」
NOVA「まあ、今よりもっとゲームが進化して、オンラインでファンタジー世界に入り浸るのが常態になれば、モンスターへのエンカウント避けのアイテムとして、モンスターコスプレ装備が流行するのかも知れんが、その場合、逆に冒険者にモンスターと勘違いされて襲撃されて、金品を強奪されやしないか、と、そっちが心配になるかもな」
翔花「とにかく、ドゴラ帽子じゃ街は歩けないってことで、NOVAちゃんの同意は得られたわけね」
NOVA「ああ、それには全くもって同意するさ。俺の好きな四文字熟語は以心伝心じゃなくて、対話上等だからな。どれだけ身近で心が通じ合っていると思い込んでいても、やはり言葉にして、しっかり気持ちをやり取りしないと想いが伝わらないことも多いからな。そのための言葉の使い方をしっかり研究するのも、文筆やコミュニケーションを生業とする職業の当然あるべき姿だと考えるぜ。言葉や文章は、他者と分かり合うためにあるのであって、決して一方通行の押し付けであってはならないというのは、長年、掲示板管理や他所での書き込みを通じて、俺が実感したことだ」
翔花「確かに、その辺の研究は、言霊魔術にも絡めて、しっかり取り組んでそうだもんね、NOVAちゃん。生まれたばかりの私には及ばないレベルで、後は話題のコントロールさえしっかりできていれば、文句なく尊敬できるんだけど、寄り道が多すぎるのが難点ね」
NOVA「寄り道さえも、我が人生、と言いたいんだけどな。ただ、相手との交流という目的、本道を踏み外して、独り善がりな自己主張のみに走ると、そんな文章は誰も読みたくなくなる。小説でも、登場するキャラが主人公と対話することなく、ただのストーリーを進めるためのコマとして、あるいは主人公の自己主張の無批判な賛同者としてしか描かれていないのは、読めばすぐに分かる」
ケイP『だったら、ぼくの意見も聞いてよ。さっきから、ママもマスターも、ぼくのことをひどく言い過ぎじゃない? ぼくの人権や、アイデンティティは否定されてもいいの?』
NOVA「残念ながら、ドゴラには人権はない。お前のアイデンティティー? 帽子だな? 帽子は普通、喋らない。言いたいことがあるなら、後で聞いてやるから、今は帽子らしく、黙ってろ」
ケイP『……(急に喋れなくなった? マスターに言葉を封じられた? ピプペポパニック!)』
NOVA「まあ、邪魔者は黙らせたが、それでも、長すぎる俺の独り善がりな説明を中断させる程度には、帽子も役に立つ。この辺のキャラ間対話の妙味は、もちろん日常のコミュニケーション経験にも左右されるのだが、それだけじゃなく他人の創作作品をそういうコミュニケーション視点で読み解く経験で補うことも可能だ。自分で創作するのなら、もっと深い視点で作品を読み解くことを意識しないと、書くものもその程度ということになる。もちろん、軽くてテンポのいいコメディーを書くなら、深さよりも勢いを重視する必要があるから、目的に合わせて手段は様々ってことだけどな」
翔花「つまり、今は深さよりも、勢い、テンポを重視した方がいい、ということよね。私が欲しいのは、深い考察に満ちたお説教じみた長文ではなくて、もっと単純に翔花の頼みごとを聞いてほしいだけなんだから」
NOVA「ドゴラ帽子を変えて欲しいってことか? そいつはダメだ」
翔花「え、どうしてよ。この帽子がダサいってのは、認めてくれたじゃない」
NOVA「ああ、誰がどう見ても、そのデザインはダサい。贔屓目に見ても、キモ可愛いの部類だ。娘がそんな帽子をかぶって、街を歩いてキモがられることは、それも個性と認めるわけにはいかない偏見が俺の心にもあってな。あらゆる個性は同等とは俺は主張しない。世の中には良いものも悪いものもあって、良いものは良いと持ち上げ、悪いものに対しては、何がどう悪くて、どう改善すれば良くなるのか、きちんと説明した上で、より良い社会を目指すのが人類のあるべき姿だと考える。その意味でも、ドゴラ帽子はダサい。どうダサいかは、言葉を尽くして、いくつも例を挙げて、主観客観数々のデータを揃えて論証することも可能だが、結論は出ているので、そこまで徹底する価値はない」
ケイP(さっきから、ママよりも、マスターの言葉の方が深く心に突き刺さる。ぼくの心は、深く傷つけられて、もうすぐライフはゼロよ。プルプル;0;)
NOVA「だけどな、翔花。そんなドゴラちゃんだって、生きているんだ。心があるんだ。友達なんだ。簡単に捨ててはいけない」
ケイP(マスター?)
精霊魔術の思い出
翔花「ドゴラちゃん、いえ、KPちゃんを捨てるって、どういうこと?」
NOVA「お前、言ったろう。その帽子のデザインがダサいから変えて欲しいって。まるで、子供がせっかく買ってもらったオモチャを、もう飽きたから、新しいものを買って、と訴えるように。モノは大切にしないといけないぞ。たとえ、それが命あるモノであっても、器物であっても、飽きたから捨てるということは、俺には抵抗があるわけだ。物にだって、想いは宿るのだからな。捨てられたものに邪念が募って、悪霊になるケースを俺はよく知っている。いくら帽子が帽子でも、一度は敵対して戦った相手でも、単純にポイ捨てして、悪霊化する危険を冒すわけにはいかん」
翔花「やだ、NOVAちゃん、思いきり勘違いしている。私は、KPちゃんを捨てたいなんて、一回も言ってないよ。単に、変えたいって言っただけで」
ケイP(翔花ママ?)
NOVA「どういうことだ? 帽子を変えたいというのは、別の帽子や頭飾りに取り替えたいとか、そういうことじゃないのか?」
翔花「KPちゃんは、KPちゃんでいいの。ただ、せっかくの不定形なんだし、見た目のデザインをあれこれ変更できるようにならないかなって。だって、私だって心は年頃の女の子なんだから、いろいろオシャレしたっていいじゃない」
NOVA「お前、自分の姿を鏡で見れないんだろう? どうやって、オシャレするんだよ」
翔花「それは、イラストを描いてくれた、たささんがいろいろ教えてくれたのよ。世の中には、私と同じ花粉症ガールが他にもいて、精霊同士で通信し合える精霊ネットというのがあって、そこに登録すれば、自分と同じ精霊仲間といろいろ交信できて、お仲間もいろいろ見つけることができるかもって」
NOVA「そうなのか? いや、俺は精霊魔術のことはあまり詳しくはないのだが、たささんがそれを知っているということは、もしかして凄腕の精霊魔術使いだったとか? ああ、そう言えば、別のブログで、アレクラスト大陸の、一角獣の森の精霊使いの長ロウラスさんの話題にしっかりコメントを入れてくれたよな。精霊関係の事情に詳しい人なのかな? 今度、確認してみよう」
翔花「とにかく、たささんから先日、風の便りが届いて、花粉症ガール3人と、その他3人で何やらビジョンというかイメージが浮かんだそうで、私にも参加しないか、と打診があったの」
NOVA「風の便りだと? そんな術を使えるとは、やはり、たささんは精霊魔術の心得が? よし、精霊関係の話はいろいろ聞いてみよう。俺は魔術理論はいろいろ心得ていて、一通りの概要は知識として知ってはいるが、精霊魔術はどちらかと言えば、知識より感性を重視するからな。俺には文が書けても絵が描けないのと同様で、理屈で精霊魔術の何たるかは知っていても、実践運用したことも、その背景世界のことも、精霊との交信感覚も持たない身だからな。絵が描けるセンスがあるのなら、そのセンスは精霊魔術に通じるものがあるのかも知れん。いや、本人に聞いてみないと、その辺りの推測は単に俺の勘違いなのかもしれないが」
翔花「NOVAちゃんは、精霊魔術は使えないの? ブルーアイズで、風の力とか言ってるじゃない」
NOVA「ああ、あれは言霊魔術の応用で、限定的に精霊魔術と似たような効果を生み出しているに過ぎん。直接、精霊を召喚したり、その力を借りたりしているわけじゃないんだ。言わば、精霊魔術は精霊と友達になって、お願いして、その力を借りるもの。一方、言霊による精霊の力の使用は、友達ではなく、金を払って適当な精霊を雇って働かせているような感覚だからな。より強制力が強いものの、精霊との関係はその場限りで、こちらも愛着を持つことはない。俺が愛着を持っている精霊は、今は、翔花、お前だけだ。これは精霊魔術ではなくて、言霊魔術で名付けをして得られた魂の絆だから、また意味合いが違うんだよ」
翔花「ふうん、でも精霊魔術も使いたいと思ったことは?」
NOVA「あるさ。昔、『透明ドリちゃん』という作品があってな。俺が妖精というか、精霊を意識したのはその時だ。1978年だな」
NOVA「『木の精、火の精、水の精、風の精やら、石の精♪』ってEDもしっかり心に刻み込まれているし、何ならOPも合わせて、カラオケで歌うことだってできる。さすがに女の子番組だから、気心の知れた友人の前でないと、歌うのは気恥ずかしいがな。歴史的には『日本初の実写魔法少女もの』という位置付けだが、戦隊ものの『ジャッカー電撃隊』の後番組で、『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』の前ということになる。なお、その後が桜間長太郎が主人公の『あばれはっちゃく』シリーズだ。俺の中では、その一連の時間帯の番組はしっかり流れとして繋がっているが、今はどうでもいいな」
翔花「うん、ブレーキをしっかり踏んだね」
NOVA「その後、妖精はともかく、精霊という要素をしっかり感じたのは、やはり『ロードス島戦記』のハイエルフの精霊使いディードリットということになる。彼女がD&Dのクラスとしてのエルフではなく、精霊使いというアイデンティティーをきちんと示したのは小説版だから、1988年ということだな」
NOVA「まあ、この辺の話になると、相当、奥が深くなるので、今は入り口で留めるが、とにかく俺が精霊魔術という言葉を意識したのは、ディードリットの影響が大きい。あるいは、同じ頃合いにTRPGの『ストームブリンガー』や『ルーンクエスト』などのボックスRPGの名作がホビージャパンから次々と出て、それらでも精霊魔術という用語が扱われ、それぞれイメージは異なるものの、何かを召喚して、自分の代わりに力を行使してもらうというサモナー系の魔法使いのイメージが日本に定着するようになったのは、その頃からだと考える。ファイナルファンタジーシリーズが召喚獣を設定したのも、3作目の出た1990年からだな。その時期は、俺がまだ年若かったせいでもあるが、ファンタジーゲームの分野で、毎年が心に刻み込まれる大きな革命的な情報に満ち溢れていた。もう全てが新鮮で、しかも奥が深いと来ている。平成の初期の俺の思い出は、このように光に満ち溢れ、刺激に満ちていたのさ。学生時代の夢真っ盛りって感じだな」
翔花「そして、もう少しすれば、風の魔装機神サイバスターと出会うことになるのね」
NOVA「そういうことだな。それはともかく、ドゴラちゃん、いやケイP帽子の外見だけを変えたいといったな。それは一体、どういう風の吹き回しだ? いや、見かけがダサいとか、そういう当たり前のことじゃなくて、お前がそう思うようになった何かのきっかけがあるはずだろう?」
花粉症ガールズの集い
翔花「うん、たささんの紹介してくれた精霊ネットの話はもうしたよね。そこであれこれ回ってみて、とうとう花粉症LINEってものに行き当たったのよ」
NOVA「花粉症LINE! そんな物まであったのか、花粉症業界もなかなか侮れんな」
翔花「そう、その花粉症LINEでとうとう見つけたのよ。たささんが話題に出していたヒノキちゃんって娘。何だか、そこの主って感じで、『何じゃ、おぬしは? 新参者か? 近う寄れい』って声を掛けてくれたのよ」
NOVA「大御所か、元締めみたいな方なのか。そんな相手にヒノキちゃん呼ばわりでいいのか? ヒノキ様とか、ヒノキ姉さんとか、そういう敬称はつけなくても大丈夫なのか?」
翔花「うん、そのヒノキちゃんは、喋り方は威厳たっぷりなんだけど、見かけは小さな女の子っぽくて、『そんなに堅苦しくしなくていいぞ。同じ花粉症の精霊同士、ヒノキ様などと呼ばれては、こっちの背筋が寒くなるわ。わしのことはヒノキちゃんと呼んでくれていいぞ。その代わり、そちの名、ふむ、粉杉翔花と申すか。ならばコナっちゃんと呼ぶとするかの』と気さくに振舞ってくれたのよ」
NOVA「ほう。なかなか懐が広そうな人、いや、精霊か。それで、その場ではうまくやれているのか?」
翔花「それなのよ。ヒノキちゃんが言うには『コナっちゃんは磨けば光る素材だと思うが、その帽子だけは頂けんのう。独特のセンスといえば聞こえはいいが、独特すぎるのも考えものじゃのう。身近にダサいと忠告してくれる者はいなかったのか。大方、その者もろくなファッションセンスを持ち合わせておらぬのであろうが、年頃の娘がそれじゃいかんぞ。いろいろと工夫を重ねて、出直してくるが良い。では、またな。精進したお主の顔を見れることを楽しみにしておるぞ、ヒヒヒ』と言って、LINEを切られたの」
NOVA「最後のヒヒヒ笑いも独特のセンスだが、言っていることはまあ、まともだな。ファッションセンスの持ち合わせがなくて悪かったな、と言い返したいのはやまやまだが、事実なので仕方ない。で、お前はどうするつもりなんだ、翔花」
翔花「うん、このKPちゃんの見かけがこう、可愛い感じに変わってくれたらいいかなって。NOVAちゃんなら、それぐらい簡単にできるんじゃないかなって」
NOVA「お前が自分でやればいいじゃないか」
翔花「え、そんなことできるの?」
NOVA「できるに決まっているだろう。俺は、この帽子にケイPと名付けをした際、俺だけでなく、お前のこともしっかり契約文に組み込んだぞ。この帽子ドゴラは、俺の従属物であるのと同様に、お前の従属ペットでもあるのだから、ある程度はお前の意思だけでも何とか操作できる。そうでないと、俺がケイPをお前のアクセサリー兼、いざという時のボディーガードになれるよう契約を施した意味がないだろう。俺はてっきり、お前が気まぐれに契約解除を言い出したのかとドキドキしていたんだ。何だかんだ言って、俺はドゴラちゃんを教えてきた責任があるからな。感情的に鬱陶しがって喋らせない時もあるが、見捨てるつもりは毛頭ない。さあ、ケイP、お前もそろそろ口を開いていいぞ」
ケイP『プハーッ、マスターひどいですよ。ぼくの言葉を封じるなんて。何様のつもりだと言うんですか。ぼくにこんな無体な仕打ちをする権利があるとでも?』
NOVA「それは質問か? それとも、ただの愚痴か? 一応、説明するが、娘との対話に、お前みたいな人の感情の機微を解さない未熟な宇宙生物が割り込むと、話がこじれにこじれて収拾がつかなくなると判断した。お前にも主張はあっただろうが、対話の行き着く先が見えておらず、やたらと自分の感情だけまくし立てるような奴は、対話や議論の邪魔になる。だから話の流れがある程度固まるまでは、お前には黙ってもらうことにした。以上だ」
ドゴラ転身
ケイP『そんなことを言っても、マスター。ぼくに発言させず、二人だけで話していると、何だか自分だけ仲間外れにされているようで不安になったのでありますよ』
NOVA「仲間外れにするぐらいなら、最初から翔花の頭からお前を引きはがして、そこのゴミ箱に放り込んでいる。悪霊にならないよう、しっかり封印を施してな。俺はそうしなかった。翔花と俺のやりとりをしっかり聞いて、お前にも学んで欲しかったからだ。つまらない意見や感想など差し挟まず、しっかり人の話を聞くのも勉強だぞ。場の話の流れを見極め、自分の発言がどのような影響をもたらすか、そして不味い発言をした際にしっかり理想的な方向に誘導しようとするか、それとも無責任な言動で場を荒らすだけで終わるか、お前にそういう判断ができるなら、俺はお前の言葉は封じなかった。発言が有益ならな。で、今は有益な発言ができるのか?」
ケイP『もちろんです。翔花ママが花粉症LINEとやらで、しっかり認めてもらうためには、このK・ピエール・プルナレフ、己の身をいかようなりとも始末の儀、万に一つもしくじりアルマジロです』
翔花「KPちゃん、まだまだね。『暗闇仕留人』のOPナレーションをもじったつもりだろうけど、そこは『万に一つもしくじりあるまじく候』が正解よ」
NOVA「ああ、その通りだが、さらに、『己の身を』の後に『始末の儀』と言ってしまえば、自害します、と言っているようなものだぞ。大方、『己の身をいかようなりとも変形させ、翔花の気に入った姿になれるようにしよう』と言いたかったのだろうけど、そこまで相手に忖度させないといけないような凝った言い回しを無理に使わなくても、普通に喋ればいいんだがな」
ケイP『うん、そうするよ、プルプル』
NOVA「ついでに言うと、たまに、自分に知性があるように見せようと、やたらと仰々しい文章を書く奴がいるが、どこかから引っ張ってきた文章や表現をそのままTPOもわきまえずに使うものだから、意味合いがズレていたり、慇懃無礼さが鼻につくばかりで、知性のなさをアピールする文章も見ることがある。知性というのは、自分の言葉を飾るのではなくて、相手の言っていることをきちんと受け止め、きちんと応答する中で認められるものだと思うがな。独り善がりな知性の垂れ流しみたいな文章は、俺も気を付けようと思う。キャッチボールをしている時に、スーパープレイを見せようとか、相手の受けられない豪速球やら変化球やらは要らないだろう。相手をクスリと笑わせるようなウィットこそが、気の利いた知性の見せ方だと思うがな。まあ、俺も最近、人様の掲示板で大暴投をしでかした記憶があるから、自分への戒めでもあるのだが」
翔花「NOVAちゃん、しょっちゅう自分を戒めているもんね。だから、時々、溜め込んだものが物凄い勢いで吹き出して来るんだと思うの」
NOVA「ああ、そうだな。その最たるものが、ここで悪霊と称する邪念、心の闇の具現化、まあ一種の妖怪になるんだろうが、ストレスは適度に発散させないと、自分でも抑えが効かなくなることは、この年でもまた新しく学んだ。とりあえず、ケイP、お前は変形できるんだよな。だったら、翔花に似合うアクセサリーに姿を変えてくれ。これが日常生活での、お前の最大の仕事だ。女の子のアクセサリーとして、可愛く綺麗に身を装うように身を修める。ナイト役として、これ以上の名誉はあろうか。いや、ない。大命を任ずるぞ」
ケイP『ハッ、マスター。このK・ピエール・プルナレフ、身命を変えましても、自らの使命を果たす所存、是非ともご覧あれ』
翔花「今のは、騎士らしくて、シャレも効いていて面白いわね。じゃあ、まずはサークレットになってくれる?」
NOVA「サークレット? 何故に?」
翔花「だって、最近、カーラのサークレットがどうこうって文章を読んだ気がしたから、どんなものかって」
NOVA「そいつは危険だ。意識を灰色の魔女に乗っ取られる」
翔花「別に、KPちゃんが変形するんだから、カーラの思念が宿っているわけじゃないでしょう」
NOVA「ああ、それはそうだが、どうも、その世代のTRPGファンは、サークレットと聞くと、それだけで警戒してしまうわけで。とりあえず、ケイP、サークレットになってみな」
ケイP『変形するにも、見本が欲しいのですが』
翔花「うわあ、花のデザインがいい感じ」
NOVA「うむ、俺もリクエストしていいか?」
翔花「何をリクエストするの?」
翔花「何で、ドライアドがネコ耳を付けないと行けないのよ」
NOVA「いや、そこは今のスパロボXの影響とか、獣耳と植物の系譜の歴史とか、学生時代に図書館で借りて読んだ古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』のこととか、いろいろ語る話もあるのだが、今のNOVAのリビドーの原因は一つ、これだ」
翔花「何これ?」
NOVA「うん、これも某所でたささん主導で語っているんだが、新番組『ガンダム ビルドダイバー』のネコ耳ヒロイン、モモカ関連のアイテムだ。いや、モモカ自身の商品画像がまだなくてな。とにかく、イラストとかOP映像を見る限りは何も特に思わなかったのだが、アニメでピョコピョコ跳ねて元気に動き回っているのを見るとな、途端にツボにハマった次第だ。たぶん、お姉さんキャラなのに天然無邪気でアクティブ、おまけに一度ピンクハロになったのも、不定形推しのツボにハマってな。それに時代が鬼太郎の猫娘押しというのもある」
NOVA「さらには、お前も『みんなのアイドル、みーたん』に憧れたりはしないか。みーたんという名前は、やはり猫キャラに通じるんじゃないだろうか」
ケイP『みんなのアイドル、ドゴランだよ』
NOVA「帽子は黙ってろ」
ケイP(プルプル。ネコ耳でも何でもなるから喋らせて)
NOVA「心の声が届いた。喋ってよし」
ケイP『プハーッ。ケイPのCの字は、CatのC。翔花ママが望むなら、ネコ耳でも何でもなるであります』
翔花「いや、あなたKPちゃんだから、CじゃなくてKなのよ。まあ、子猫だったら、Kittenだから行けなくもないけど。うーん、ネコ耳ねえ、今度たささんに相談してみる」
NOVA「何で、たささんを巻き込むんだ。……ということで、NOVAはネコ耳翔花というものを見たいわけですが、ここは、もう一つ、最後に言っておかないといけないことがある」
翔花「何?」
NOVA「今年は、小説版『ロードス島戦記』刊行30周年になるんだ。かつてのファンとして、今は『グランクレスト戦記』最終巻を読んでいる者として、謹んで、おめでとう、と言わせてもらいます」
(完。グランクレストの深夜アニメは、仕事の都合もあって、途中脱落しちゃったなあ。ゲームは、アクションなのであまり食指が動かないけど、パーンとディードリットが使えるのは気になるところ)