2日めの旅立ち準備
GM(ヒノキ)「前回は、物乞い市場にあるビシャナの宿屋で一時の休息をとったのじゃが、その際、NPCとの交流をしつつ、今後の活動方針を考えることとなった」
デル(リトル)「オラは、そういう交流とは無縁で、グースカピーと寝ているだけだったなぁ」
G太郎(ゲンブ)「酒を飲んだり、情を交わし合ったり、子どもには早すぎるシーンでござったからな」
ホリー(シロ)「言っておくけど、ボクはそこまで踏み込んだわけじゃないからな(赤面)。ただ、いろいろ話をして打ち解け合っただけだ」
GM「さすがに一夜明けて、宿の主人が『昨夜はお楽しみでしたね』と野暮な言葉をかけるでもなく、お前たちは遅い朝食を口にしながら、出発の準備をしているわけじゃ」
G太郎「このままミッションに従い、メル嬢を南へ送るとして、その後の予定でござるが、仕事の当てができた。宿の主人のビシャナさんが頼みたいことがあるらしい」
ホリー「いつの間にそういうことに?」
デル「オラは知らないけど、プレイヤーは知っているぅ。姉さんが部屋でいろいろしている間に、G太郎さんが情報収集を頑張ってたんだぁ」
ホリー「ボ、ボクだって、情報収集に励んでいたぞ。そう、これから向かう場所について、会うべき人物のこととか、蛮族に対抗する意志の確認とか……」
G太郎「気をつけるでござる。今は人目につく場所ゆえ、うかつな発言は自らの首を絞めることになる。我らは上位バルバロスのドレイクの坊ちゃんと、連れのバルカンの嬢ちゃん、そして従僕にして世馴れたルーンフォークの主従一行であることを忘れなく」
ホリー「あ、ああ、バルバロスとして人族の集落に対する視察をだな。反抗の気配がないかと探り当てようとしたわけだ」
メル『私たちはただ生きるのに精一杯なだけで、バルバロス様に逆らうなど滅相もありません』
ホリー「そうとも。メルはただ調和の神の教えに従い……」
GM「それを言おうとすると、メルがホリーの足を踏んで、警告の視線を送るのじゃ。蛮族社会において、調和神の名をうかつに出すのは自殺行為だと訴える」
ホリー「す、すまない。慌てて口をつぐむ」
G太郎「ほう。彼女はライフォス信者なのか、と、こちらも口に出さずに納得しよう。ルーンフォークは神を信じないが、第一の剣の神がこの蛮族社会においては、抹殺対象であることぐらいは知識がある。地上の街では、サカロス神殿やティダン神殿、キルヒア神殿が破壊されて、廃墟となっていた。バルバロスが信仰するのは、戦神ダルクレムや腐敗神ブラグザバスなど第二の剣の神々でござる」
デル「アリナ様、オラの信じるグレンダール様はどうなんだぁ?」
GM「力を求め、己を鍛えることを推奨するグレンダールは、第一の剣の神であるにも関わらず、トロールやケンタウロスなどの武を重んじる蛮族に信仰されているようじゃのう。戦神という性質ゆえ、ダルクレムに通じるものもある、と考えられる」
デル「だけど、ダルクレムとグレンダール様の教義は違うはずだろぉ?」
GM「うむ。グレンダールは強くなることを推奨するが、弱者に対して横暴に振る舞うことは戒めておる。何が何でも勝て、という教義でもなく、あくまで正々堂々とした戦いで己の力量を証明し、負けてもそこから立ち上がることを奨めておる。敢えて自分を逆境に置いて、そこから這い上がるような鍛え方を求めたりのう」
デル「ダルクレムはどんな感じだぁ?」
GM「戦え。絶対に勝て。負けは認めるな。勝つためなら卑怯なことをしてもいいが、むしろ力で叩きつぶすことこそが誉れ。負けるぐらいなら潔く自決せよ。さもなくば、復讐のために屈辱を呑んで生きよ。そして勝て。勝てば正義、負けるは恥。弱者は力で従え、屈服させよ。弱い者は支配されて当然、勝者の思うがまま。弱肉強食こそ世の理である。欲しいものは奪いとれ。力なき者は全てを捧げよ。それを拒むなら強くなれ。力があれば、下剋上も認める。部下に寝首を掻かれるような者は、甘えた軟弱者ゆえに」
デル「……何だかおっかない教義だなぁ。例えば、オラがダルクレムの信者だったら、G太郎師匠を尊敬しているフリを見せても、ある程度、力をつけて勝てると踏んだら、突然、裏切って『ハハハ、師匠も甘いなあ。だが、もう、あんたの時代は終わったんだ。これからはオレサマがあんたの代わりに君臨してやる』と立ち回ったりすることもありなのかぁ?」
G太郎「『バカな。貴様のような若輩者に不覚をとるとは、このわしも老いたものよ。だが、覚えておくがいい。お前もいつかこうなる。それがイヤなら鍛錬を怠るな。甘さを見せるな。心を鬼とせよ。誰も信じるな。……なまじ弟子を信じたがゆえに、このような末路よ。敗者は潔く散るとしよう。ぐふっ』というのが、ダルクレム文化の師弟像でござろうか」
デル「まるで修羅の道だなぁ。まあ、弟子も師匠によほど虐められていたんだろうけどぉ。とにかく、オラにはマネできねえ世界だぜぇ」
GM「蛮族は基本的に力に基づく社会で、慈愛とか協調という感情を弱者の論理と軽蔑する風潮がある。もちろん、個人的に友情や信頼関係を築くケースもあるが、その前提には自分にとって有用かどうか、あるいは愛すべき資質を持ち合わせているかなどが考えられる。『弱いけど、作る飯が美味しいから可愛がられるコボルド』とかは一般的じゃのう」
G太郎「そして、個人としては人族よりも一般的に強力になりがちな蛮族が、戦争では必ずしも勝てないのは、人族の軍隊が規律を重んじ、部隊としての戦術を大事に考える一方で、蛮族の軍隊は個人の武勇を重んじ、勝てば勢いよく調子づく反面、強大な指揮官が倒れれば容易に潰走する脆さを備えているゆえ。
「また、統治や生産に関する技術は人族の方が文明化されているため、どうしても蛮族社会は略奪に頼りがちな未開状態になりやすい。その中で、人族の文明を学んだ一部のエリート階級が蛮族の英雄として、強大な軍事国家を建設するケースも時には見られるのでござるよ」
GM「もちろん、蛮族社会は人族以上に個人主義であるがゆえに、以上の一般像から外れた多様な変わり者は存在するじゃろうな。そして、蛮族社会は決して一枚岩ではないことが、このミストグレイヴのシナリオをプレイしていけば分かるはず。元々、人族社会のアウトサイダーに近い冒険者が己の力だけで成り上がって行ける蛮族の風習に魅せられ、使命を放棄して、蛮族としての人生を満喫するよう転向するケースもあってのう」
ホリー「まるで、忍びの世界における『草』みたいな話だな。とにかく、ボクたちの仕事は情報収集だから、バルバロスの社会にうまく溶け込まないといけないんだけど、自分の本分を忘れてはいけない。だから、人の心の拠り所となる拠点を持たないといけないと考える」
G太郎「そのために向かうのが『肉の穴』でござるな。拠点を確保し、収入の得られる仕事を請け負えるようにする。それが現状の目的ということで」
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